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コラム

MEGURU STATION®と社会的インパクト評価地域の課題をトータルで解決する「MEGURU STATION®」

おしえて!アミタさんのサムネイル用(240x160P).pngアミタは、互助共助コミュニティと資源循環を促進する資源回収ステーションとして「MEGURU STATION®」を展開し、2030年には1000の基礎自治体で導入を目指しています。今回は、ステーションの設置による社会への好影響を可視化したロジックモデルと、社会への好影響を定量化するための実証実験についてお伝えします。

目次

地域課題を解決するMEGURU STATION®

日本は「課題先進国」と称されるほど、私たちが住む地域で発生する課題はますます複雑化・多様化しています。2025年には団塊世代が後期高齢者となり、医療費や介護費の増加、生産年齢人口の減少が懸念されています。さらに、気候変動や資源枯渇、資源自給率の低下など、多様な社会課題が絡み合っています。これらの課題が山積する中で、地域の過疎化や新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどの影響により、地域住民や知人とのつながりが希薄になり、地域・家庭・職場・学校といった生活の基盤における人々の支え合いが弱まってきています。

昨今、これらの課題に個別にアプローチするのではなく、制度や分野ごとの縦割りや「支え手」「受け手」という関係性を超えて、市民・自治体・企業が一体となり、一人ひとりのウェルビーイング向上を目指す「地域共生社会」や「地域循環共生圏」というコンセプトのもと、様々なまちづくり施策が行われています。

そのような中、アミタは自治体の4大課題である人口減少や少子高齢化、社会保障費の増大、雇用縮小等の課題を「関係性の増幅」と「循環の促進」で解決し、住民のウェルビーイングを高める互助共助型の資源回収ステーション「MEGURU STATION®」を展開しています。

MEGURU STATION®の概要

MEGURU STATION®は誰もが日常で行うごみ出しをきっかけに、地域住民の関係性構築と資源循環向上の同時実現を促すステーションです。市民が資源を持ち込み回収する資源回収ステーションの機能だけでなく、生ごみを資源化する小型バイオ装置を設置し、生成された肥料やガスを交流スペースで活用したり、リユース市や地域事業者によるマーケットを開催したりなど、互助共助を生む場としての機能も備わっています。
現在、MEGURU STATION®は兵庫県神戸市、愛知県長久手市、福岡県大刀洗町の3自治体で稼働し、福岡県豊前市にて全市展開を協議しています。2030年には1000の基礎自治体にて導入されることを目標にしています。

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アミタ作成

MEGURU STATION®の効果

MEGURU STATION®がもたらす効果として、住民の資源持ち込みによる可燃ごみの削減や、分別によるリサイクル率向上だけでなく、世代間交流や高齢者の外出機会の増加と健康増進、安心できる居場所の確保など、市民のウェルビーイング向上や福祉領域における課題解決も期待されています。

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アミタ作成

市民や自治体へもたらす互助共助コミュニティの醸成・促進効果に加えて、将来的には企業と連携し資源循環を促進できるよう、デジタル技術を活用し、MEGURU STATION®に持ち込まれた資源情報から製品の需要予測やより高次の資源化、リフィル・リユース・リペア・アップサイクルなど新たな産業創出が可能になることを目指しています。

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アミタ作成

そのためには、製品のトレーサビリティ情報やCO2情報などの関連データ・数値の予測や算定等に加えて、互助共助コミュニティの醸成・促進や市民のウェルビーイング向上など、従来はデータ化・数値化されてこなかった社会的な好影響まで、市民・自治体・企業の視点で定量的に可視化していくことが重要です。可視化に向けた取り組みとして、2022年11月にアミタは三井住友信託銀行(株)と社会的インパクト評価に関する締結を結び、2023年9月にMEGURU STATION®の社会的インパクト評価を実施しました。

MEGURU STATION®の効果を可視化する社会的インパクト評価

社会的インパクト評価とは、ある事業や活動が社会に与える影響を定量的、定性的に把握しその価値を判断することを指します。アミタと三井住友信託銀行(株)は、MEGURU STATION®が好影響をもたらすまでの一連の過程を、市民・自治体・企業の3つの視点から、ロジックモデルを用いて可視化しました。

関連記事:社会的インパクト評価 ~その目的、実践方法、事例を解説~

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アミタ作成

ロジックモデルでは、MEGURU STATION®を利用したことにより発生しうる結果(アウトカム)を「資源の活用方法がわかる」「訪問による運動機会の増加」「訪問による会話機会の増加」等と設定し、アウトカムによって生じる好影響(インパクト)を「持ち込み資源の質・量の向上」「環境活動参加による満足度向上」「健康寿命の延長」等としました。そこで、プロセス評価の手法に沿って、神戸市の資源回収ステーション2カ所で行った利用者アンケートの結果を使用し、一部アウトカム(インパクトにつながる成果)の定量評価を実施しました。

結果「持ち込み資源の質・量の向上」や「健康寿命の延長」など、MEGURU STATION®を利用することによる利用者への好影響を期待できることがわかりました。

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アミタ作成

2024年6月実証実験「会話機会の増加」

アンケートによってアウトカムを観測したものの、アンケート回答は主観的、定性的であり、情報としての信憑性や正確性、リアルタイム性などを担保することが難しいという課題があります。
そこで、IoTソリューションを用いて、客観的、定量的、連続式にアウトカムを観測することで課題を克服できるのではという仮説のもと、2024年6月から約1か月間、神戸市の資源回収ステーションにて、利用者の会話発生を観測する実証実験を実施しました。

期間 2024年6月6日~2024年7月2日
場所 神戸市 ふたば資源回収ステーション
対象者 ふたば資源回収ステーションへ来場した神戸市民延べ1043名
実証内容 来場者の会話の発生を測定し「会話機会の増加」というアウトカムを客観的、定量的、連続式に定量可視化する方法を実証する
方法 ビーコンにより観測した利用者の位置情報と、観測による会話発生の状況を比較検証する

「訪問による会話機会の増加」というアウトカムを観測するため、利用者にステーション内にいる間ビーコンを所持してもらい、ビーコンが発する電波の受信機を複数設置することで利用者がビーコンを所持している期間と場所を自動で計測します。また、観測員が会話の発生時間を把握することで、それらのデータを比較検証し、アウトカムを計測する方法の検証を行いました。

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(左)利用者に配布するビーコン(右)ビーコン受信機の配置図

この実証実験で計測したデータをもとに分析を行い、インパクト発生のみなし精度を高めることを計画しています。分析によるアウトプットのイメージとして「利用者が一緒にいる時間が2分以下の場合、実際に会話が発生しているのは15%だが、3分以上の場合、実際に会話が発生しているのは80%である」といったことを想定しています。現在実証実験は終了し、分析作業を進めています。

さいごに-「見えない価値の可視化」にこだわるワケ-

今後、会話機会の増加を定量的に観測することができれば、MEGURU STATION®の健康への好影響並びに投資対効果の定量的な可視化の実現に大きく近づきます。今後、他の指標についても他企業と連携し、他のステーションにおいてもICT技術を活用した手法の実現可能性を検証する予定です。

現在、MEGURU STATION®以外にも、国内では様々な形で資源回収ステーションの取り組みが導入されていますが、それらの中には、MEGURU STATION®と類似の社会的好影響を与える可能性を持つ取り組みが多数存在します。しかし、そうした取り組みがもたらす価値として、資源回収量/再生量や関連するCO2削減量といった指標以外の価値は、定性的な「良いこと」としての表現に留まることが大半です。

アミタが「見えない価値の可視化」にこだわるのは、資源循環を入口としたMEGURU STATION®がもたらす価値の総体をより分かりやすく、目に見える状態にしていくことが、資源循環取り組みの導入を後押しし、企業にとってのビジネスチャンスを生み出し、また参加する人々の行動変容を促す、言わば好循環のドライバーとして機能すると考えているからです。サーキュラーな社会システムの構築を加速させるために、今後もアミタは「見えない価値の可視化」に向けた方法論の獲得にチャレンジします。

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関連情報

アミタのMEGURU STATION®は、地域課題の統合的な解決を目指し「互助共助を生むコミュニティ拠点」と「資源回収ステーション」の2つの機能が融合した新しい仕組みです。
MEGURU STATION®の概要は「MEGURU STATION®」をご覧ください。

アミタが代表理事を務める一般社団法人エコシステム機構(Ecosystem Society Agency:略称ESA(イーサ))では「循環」と「共生」をテーマに、企業・自治体や研究機関などとも連携し、新たなビジネスモデルの創出ができるようなプラットフォームの場づくりを行っています。主にネイチャーポジティブ、コミュニティ・ウェルビーイング、さらにサーキュラ―エコノミーの3つの領域における課題をビジネスで解決するためのプロトタイプ事業モデルを実証しています。
MEGURU STATION®を活用し、企業の水平リサイクルの実証実験も行いました。
詳細については、公式ホームページをご覧ください。

執筆者情報(執筆時点)

田中 千智(たなか ちさと)
アミタ株式会社
社会デザイングループ

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