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コラム

サーキュラーデザインで社会を「もっと」よくする ハーチ×アミタ トップ対談ハーチ×アミタ 循環の力でビジネスと社会を変える「サーキュラーデザイン」

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「サーキュラー」に関する事業を展開するアミタとハーチが、計6回にわたり「サーキュラーデザイン」を深掘りするコラム。記念すべき第1回目は、アミタHDの代表取締役社長 末次とハーチの代表取締役 加藤 佑氏の対談『しまうまトーク第4回目:循環はみんなを幸せにする〜「好きなこと」で「社会をよくする」仕組みづくり〜』のスピンアウトとして、事業のきっかけやサーキュラーデザインについて対話を行いました。

※コラムについて
本コラム記事は両社のメディアに掲載されますが、本編は執筆側のメディアのみに掲載されます。
第1回目はアミタが運営する「未来をおしえて!アミタさん」に本編を掲載します。

目次

7月4日(木)にハーチ株式会社 加藤氏をお招きし、「サーキュラーデザイン」に関するセミナーを実施します。サーキュラーデザインの基礎知識から先進事例、消費者を巻き込んだ取り組み方法まで解説します。ご興味のある方はぜひセミナーホームページをご確認ください。ボタン_セミナー詳細はこちら.png

ハーチの創業のきっかけ

末次:しまうまトークでは、加藤さんの事業への想いから循環に対する考え、昨今の取り組みについて伺うことができ、非常に学びの多い対談となりました。改めまして、ありがとうございます。

加藤氏:こちらこそ、ありがとうございました。

末次:このコラムでは「サーキュラーデザイン」をテーマに、ハーチとアミタで記事を書きあっていくわけですが、本題に入る前に読者のみなさまにご紹介もかねて、改めてハーチさんがメディア事業をやろうと思ったきっかけについてお伺いしたく。ハーチさんといえば「IDEAS FOR GOOD」や「Circular Economy Hub」など、サステナビリティやサーキュラーに特化したメディアでの情報発信をされていますよね。しまうまトークと重複するかもしれませんが、メディア事業をやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

加藤氏:きっかけは大学生時代にカッコいいと思って買った服でした。そのブランドはTシャツに社会的なメッセージをプリントしており、ファッションを社会的なメッセージを発信するメディアとして活用している点にすごく感銘を受けたんです。自分自身もクリエイティブの力を活かして社会をより良い方向性へシフトさせていくような事業を将来やりたいと思いました。

末次:ファッションをメディアとして捉える視点が素晴らしいですね!
実は私たちも物の見方を変えて、価値を再定義しなおす、という点にリサイクル事業のポイントがあると思っています。廃棄物の組成を元素レベルで読み解くと、例えば廃油にはカロリーがあるので石炭の代替燃料として使うことができ、また汚泥に含まれる石灰成分をセメントの原料に使うことができます。アミタには「What is value?」というコーポレートメッセージがあるのですが、物事の見方を変えること、価値を再定義することを大事にしており、アミタのサーキュラー事業の根幹ともいえます。

加藤氏:私たちも物事の見方を変えるということをすごく大事にしており「社会を『もっと』よくする」という表現をしています。「社会をよくする」と言ってしまうと今の社会が「悪い」という前提が必要となりますが、今の社会にも良いところはたくさんあると思っており、それらに目を向けながら、その上で「もっと」よくできるよね、というスタンスでいたいからです。今まで見過ごされていた価値に光を当てるという点で、サーキュラーエコノミーの考え方とも根底で共通しています。

また、ハーチは「Publishing a Better Future(よりよい未来をみんなに届ける) 」というミッションを掲げているのですが、人々の見方を変えるために、できるだけ建設的な情報を発信することを心掛けています。英語を学ぶのと一緒で、私たちはインプットした言葉や情報しかアウトプットすることができません。それであれば、私たちがポジティブなインプットをすればするほど、読者からもポジティブなアウトプットが増え、結果として世の中にポジティブな情報の流通量が増えるのではないかと思っています。

そこで「IDEAS FOR GOOD」などでは、社会の課題だけにフォーカスを当てるのではなく、世界中のクリエイティブな解決方法もセットで伝えています。そうすることで、課題には興味がなくてもデザインやアート、テクノロジーといった解決策には興味がある人にも記事を届けられますし、課題だらけだと思っていた社会の中にも希望を見つけ、自らの力でさらによりよい方向へと変えていけるという自信を持ってもらえると思うからです。

末次:ポジティブなインプットを増やす...メディアの役割とは、という根幹に触れた気がします。両社の事業のきっかけには、物事を捉えなおす、ということが共通点としてあったのですね。

サーキュラーデザインとは?

末次:さて、話は変わり、本コラムの主軸である「サーキュラーデザイン」に触れたいのですが、この言葉自体はあまり日本で普及していないですよね。

加藤氏:おっしゃるとおり「サーキュラーエコノミー」の概念は徐々に浸透していますが、その実践という意味での「サーキュラーデザイン」の浸透は、日本ではこれからだと思います。

末次:サーキュラーデザインについて、第2回目のコラムや今後開催する『ハーチ✕アミタ サーキュラーデザイン戦略セミナー ~「サーキュラー」でビジネスと社会を変革する~』でも解説いただきますよね。もしよろしければ簡単にご説明いただきたいのですが...。

加藤氏:では簡単に。(笑)従来の3Rは廃棄物の再利用やリサイクルを行うのに対し、サーキュラーエコノミーは製品やサービスの設計段階から廃棄物をできる限り発生させないことを目指しています。サーキュラーデザインは、この考え方に沿って素材や製品、ビジネスモデル(モノ売りからコト売りへなど)、さらには社会システム全体をより循環型にしていくための一連のデザインを指します。

例えば、製品自体を長く使い続けるために、修理や交換がしやすい製品を作ったり、洋服を売るのではなくサブスクリプション型にシフトしたり。サーキューデザインの切り口は様々にありますが、製品やサービスの環境負荷の80%は「設計」の段階で決まると言われているように、製品を作り始める前にいかにシステム全体の設計を行うかが重要です。

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図:サーキュラーデザインの6つの要素
出典:ハーチ株式会社

サーキュラーデザインと聞くと、素材や製品といった目に見える対象の範囲にとどまった設計を想像しがちですが、ビジネスモデルや購入後の利用、製品の手放し方も含めて、システム全体を俯瞰する視点も持ちあわせていないと、部分最適になってしまいます。

例えば、いくら循環型、再生型の素材を活用して解体性やリサイクル性などが高いサーキュラーな自動車を生産したとしても、そもそも自動車の稼働率は5%未満と言われており、実際にはほとんど「動」いておらず、駐車のためのスペースに都市空間の多くが占有されているという現状があります。それであればシェアリングサービスにより稼働率を高めるというアイデアが浮かびますが、今度はシェアリングサービスが増えすぎても、使われない車両が増えてしまいます。本来解くべき課題である「いかに少ない資源で最大多数の人々の快適な移動を実現するか」という視点で考えれば、デザインの対象は素材や製品、シェアリングなどのビジネスモデルだけではなく、モビリティや都市といったシステム全体へと広げていく必要があることが分かります。

さらに、昨今では「人々」の快適な移動を実現するのみならず、そのシステムによって植物や動物、微生物といったマルチスピーシーズ(多種)が共生・共存できるシステムになっているかという、人間中心を超えた地球中心デザインの必要性も叫ばれています。

サーキュラーデザインにおいては、このように解像度高くユーザーニーズを捉える「ズームイン」の視点と、製品やサービスを取り巻くシステム全体を俯瞰する「ズームアウト」を行き来しながら、全てのレイヤーにおいて一貫性と整合性のあるデザインを行うことが重要となります。「サーキュラーデザインとは・意味」という弊社の記事でもサーキュラーデザインの概要を述べているので、参考にしていただければと思います。

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図:サーキュラーデザインのズームインとズームアウト
出典:ハーチ株式会社

末次:なるほど。ズームインとズームアウトの視点、とてもわかりやすいです。日本の企業がサーキュラーデザインを進める上で、大事だと思われることはありますか?

加藤氏:サーキュラーデザインの原則に沿って素材を調達し、製品やビジネスモデルをつくることも重要だと思いますが、最終的には、製品を手にした生活者の方々の丁寧な使用・利用や回収への協力などなくしては、循環のループを閉じることはできません。その意味で、ユーザーに「サーキュラー」な価値が伝わる体験をどのようにデザインできるかがポイントだと思います。

特に、今後多くの企業が循環型素材や製品、サービスの開発を進めていくと思いますが、それらに価値を感じて購入・選択・利用し、修理や回収などを通じて循環の輪を完成させてくれる生活者の存在はもちろん、そもそもの資源投入の総量自体を持続可能にしていくという意味でも、供給サイドだけではなく需要サイドからのサーキュラー・トランジションの重要性はますます高まっていくのではないでしょうか。サーキュラーUX・サービスデザインといった領域も今後注目が集まると思います。

例えば、私たちが神奈川県・横浜市で運営している循環型都市移行プラットフォームの「Circular Yokohama」では、どのようにすれば資源回収を楽しい体験に変えられるかという問いのもと、サーキュラー・サービスデザインのプロトタイプとして、神奈川大学のファブラボみなとみらいと協力してお金の代わりにペットボトルキャップを入れるとグッズが手に入るガチャガチャ「循環ガチャ」を製作しました。

カプセルの中には横浜市内の企業が製造したアップサイクルグッズや地産地消の食品などが入っており、訪れた人はペットボトルキャップと引き換えに景品を手に入れることができます。循環ガチャを通じて回収されたペットボトルキャップは、プラスチックのマテリアルリサイクルを経て、再び循環型グッズにアップサイクルされます。また、ガチャガチャの躯体自体も分解・修理可能な設計となっており、カプセルもリユースしているため、ゴミが出ません。

さらに、この体験を通して地域の方々が地域の企業のサーキュラーな取り組みを知ることもできるので、この循環ガチャ自体が一つのメディアとして機能しています。インターネットで記事を読むよりも、実際に触れるアイテムを手にとったほうが、そのメーカーに対する愛着も湧くはずです。その意味で、循環ガチャはサーキュラーな企業と生活者の出会い方のリデザインにもなっています。

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図:循環ガチャ
出典:Circular Yokohama

末次:循環ガチャという響きだけでワクワクしますが、さらに地域内の循環を体験できるものとはとても興味深いです!

サーキュラーを加速させるポイントは循環者?

末次:さきほどの循環ガチャがまさに好例ですが、社会のサーキュラーデザインを考えるとき、市民をいかに巻き込むかが非常に重要だと思います。よく弊社の熊野が以下のような言葉を言っているのですが、企業が売りたい物を売るのではなく、人々の「生活」を中心に社会のシステムを変えていく必要があると思うんです。

  • 生活が変われば、商品が変わる。
  • 商品が変われば、企業が変わる。
  • 企業が変われば、産業が変わる。
  • 産業が変われば、社会が変わる。
  • 社会が変われば、価値が変わる。
  • 価値が変われば、生活が変わる。

この生活の行動変容のきっかけをつくるためには企業の力が必要で、そのきっかけが共通の価値観でつながることですよね。さきほどの循環ガチャも、横浜で循環させるという共通価値のもと行動変容のきっかけとなる装置だと思います。アミタはここ数年MEGURU STATION ®の展開に注力していまして、ごみ出しならぬ『資源出し』という生活の一部をきっかけに、住民の方の生活習慣や行動も変容していきましょう、というコミュニティ機能をもった資源回収ステーションなんです。いつでもごみを出せるという利便性だけではなく、ここに持ち込めば循環される、ここに集まれば人と出会いコミュニケーションができるといった「社会的な動機」が重要だと思っています。

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図:MEGURU STATION®の様子
出典:アミタ株式会社

加藤氏:すごく共感します。日本は欧州と比較して製品やサービスを購入する際の消費者のサステナビリティ意識はそこまで高くないと個人的に思っているのですが、逆にごみを手放すときのモラルは非常に優れていると感じます。

例えば、カフェでもマイカップを持ち込む人は少なくても、飲み終わったらしっかり紙とプラを分別したり。ゼロウェイスト・タウンと呼ばれる上勝町でも45もの分類がある箱などにちゃんと分別がされていたり。他にも、日本のまちにはゴミが落ちていないとよく言われますが、このように公共の場で倫理的に振る舞うことができる日本人の特性を逆手にとれば、日本らしいサーキュラーエコノミーのドライバーとして活用できるかもしれません。

これまで、人は洋服や住宅、車などの消費行動を通じて自己表現をしてきました。消費者としての自己表現です。これからは、慶應義塾大学の田中浩也先生が提唱されているように、リユースからリメイク、リサイクルなど多様な循環の選択肢を提供することで、モノの消費だけではなく手放し方を自己表現の一つとする「循環者」という新たな生活者像が成り立ちうるのではないかなと思っています。循環者とは、消費者、生産者、市民としての個人が統合された存在です。

末次:モノの手放し方が新たな自己表現となるという視点、とても面白いですね。「捨てる」という行為の、まさに見方を変える、捉え方を変えるということですね。
MEGURU STATION ®でも、利用者が持ち込んだプラスチックをリサイクルし、ベンチとしてステーションに設置したのですが、こういった目に見えるカタチで自分が手放したものがみんなに使ってもらえる、というのもある種「循環者」であることのワクワク感、幸福感を促しているのかもしれません。

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図:リサイクルベンチを利用する市民の様子
出典:アミタ株式会社

コラム1回目では、ハーチさんのメディア事業のきっかけからサーキュラーデザインまで盛りだくさんなお話させていただきました。サーキュラーデザインって、物事の見方や捉え方を変えて「社会を『もっと』よくする」ためのアプローチですよね。だから製品やサービスに留まらず、ビジネスモデルやユーザーとのコミュニケーションのデザインでもあるし、メディアである一人一人の行動変容を促すコミュニティのデザインという側面もある。この先もっともっと掘り下げられていくコラムが楽しみになりました。
この度は、お話をお聞かせいただきありがとうございました!次回は、加藤さんの記事ですね。引き続き、よろしくお願いいたします!

関連情報
話し手プロフィール

加藤様_100.png加藤 佑(かとう ゆう)
ハーチ株式会社
代表取締役

1985年神奈川県生まれ。株式会社リクルートエージェントなどを経て、2015年にハーチ株式会社を創業。社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」、循環経済専門メディア「Circular Economy Hub」などのデジタルメディアを運営するほか、横浜の循環都市移行プラットフォーム「Circular Yokohama」、東京都における「CIRCULAR STARTUP TOKYO」など、企業・自治体・教育機関との連携により循環経済推進に従事。英国ケンブリッジ大学サステナビリティ・リーダーシップ研究所Sustainable marketing, media and creative修了。東京大学教育学部卒。

聞き手プロフィール

mr.suetsugu.jpg末次 貴英(すえつぐ たかひで)
アミタホールディングス株式会社
代表取締役

アミタグループ合流後、再資源化拠点の立ち上げや運営管理、地域資源循環モデルの構築、廃棄物リサイクルを始めとした総合的なソリューション提供に従事。2019年よりアミタ株式会社の取締役執行役員、2020年より同社代表取締役、アミタホールディングス株式会社の取締役就任を経て、2024年より当社代表取締役社長に就任。

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