コラム
プラスチック資源循環法で企業が求められることは?違反すると罰則はある?佐藤泉先生の「廃棄物処理法・環境法はこう読む!」
2022年1月、「プラスチック資源循環促進法」 を施行するための政省令及び告示が公表されました(※)。その概要を、企業に求められる取り組みに注目し、ご紹介します。
※「プラスチック資源循環」に関する特設ウェブサイトより「関連法令・審議会」:
https://plastic-circulation.env.go.jp/about/hourei
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目次 |
プラスチック新法の概要や、法「対応」を「機会」に転じるためのサーキュラー戦略について講演したセミナー動画を公開しております!
プラスチック資源循環法(プラスチック新法)の概要
この法律は、プラスチックを使用する製品の設計、使用、処理のライフサイクル全般において、あらゆる主体によるリデュース、リユース、リサイクルその他の再生を促進するための法律です。
今までのリサイクル法との違いは、次の3点です。
①適用される商品の範囲が非常に広いこと。
②製造業、小売業、サービス業などの全ての産業に変化を促していること。
③リサイクルについて多様な特例制度を設けて資源循環を促進していること。
図:環境省Webサイト「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の概要」
製造業者は何を求められる?キーワードは「製品設計」「排出抑制」「自主回収」
(1)基本方針と設計指針の関係
この法律に基づいて、主務大臣は、基本方針とプラスチック使用製品設計指針の二つを定めます。
基本方針(法第3条)は全ての当事者の取り組むべき責務、つまり努力義務です。これに対し、プラスチック使用製品設計指針(第7条)は認定製品設計、つまり適切な環境配慮がされていると認定される設計の具体例を示すものです。認定の対象は製品設計ですが、この認定を受けた設計に関する製品は認定製品となります。認定製品は、グリーン購入法の対象となり、広く流通の促進が図られることとなります。
基本方針とプラスチック使用製品設計指針は関連しており、製造者はプラスチック使用製品設計指針を意識しながら製品の製造をする努力義務があります。
(2)基本方針とは
基本方針は、プラスチック使用製品廃棄物及びプラスチック副産物の排出抑制、回収、再資源化等を総合的かつ計画的に推進するための基本方針です。法第3条2項は、この基本方針に8つの項目を定める必要があるとしています。
▼8つの項目
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基本的方針に関する製造事業者の努力義務として、下記の4点があげられます。
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上記は努力義務であり、強制力はありませんが、今後事業者のESG評価及び取引先の調達評価基準として重要な指標となるでしょう。 さらに、2022年1月19に定められた、法第3条第1項の規定に基づく告示(経済産業省・環境省告示第2号)では、プラスチック使用製品製造事業者の取り組みとして、以下の6点があげられています。
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自主回収については「製造事業者等は、使用済プラスチック使用製品について、関係主体と連携しつつ、積極的に自主回収・再資源化の実施に取り組む。認定自主回収・再資源化事業者は、継続的、安定的及び高度な再資源化の実施に取り組む。」とされています。今後、製造事業者による自主回収の取り組みが加速するでしょう。
(3)プラスチック使用製品設計指針とは
図:環境省Webサイト「プラスチックに係る資源循環の促進等に 関する法律」の政省令・告示について
プラスチック使用製品設計指針は、上記(2)に記載した基本方針に沿ったものです。2022年1月19日に法第7条1項に基づく使用製品設計指針が、告示として定められました(内閣府、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省 告示第1号)。認定の対象となる設計は、重量比又は体積比で50%以上プラスチックを使用しているものを対象とするとされています。
設計指針は、基本方針と同様に義務ではありません。しかし、製造事業者等は、プラスチック使用製品設計指針適合認定という、一種の優良認定というお墨付きを得ることができます。プラスチック製品は多様であり、現実にどのような製品の設計に対し、どのような調査を行い、どの程度の基準達成をもって認定していくのかは今後の課題です。認定のハードルが低ければ、設計変更を促進する効果がなく、逆に認定のハードルが高ければ、多くの事業者は認定取得をあきらめざるを得なくなります。認定にかかる時間及び費用についても、現在の段階では未知数です。認定に必要な調査は、今後指定される指定調査機関が担当することになります。現実的には、業界が自主的目標を示し、全体としてレベルをアップしていくという方向になるかもしれません。
製品設計は、利便性、安全性、価格競争性などを考慮する必要があり、単純にプラスチックの使用量を減らすというだけで解決できません。製造事業者等は、経営判断として、認定を受けることによるメリット、すなわち商品の競争力及び企業としてのESG評価を考慮しながら対応を考えていくことになるでしょう。
販売業者・サービス業者は何を求められる?ポイントは「特定プラスチック使用製品」12品目の削減!
(1)基本方針
全ての事業者は設計認定を受けた製品を使用する努力義務があります。また、輸入・販売事業者は指針に適合した製品を輸入・販売することが期待されるとされています。
(2)使用の合理化
この法律の重要ポイントは、特定プラスチック使用製品、いわゆる使い捨てプラスチックと言われるものの多くについて思い切った使用の削減を求めている点です。2022年1月19日、法第28条第1項及び第30条第2項の規定に基づき、特定プラスチック使用製品提供事業者に対する判断基準が定められました(厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省 令第1号)。
参考:経産省・環境省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の政省令・告示について
現在示されている特定プラスチック使用製品は、フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、櫛、剃刀、シャワー用キャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣類用のカバーの12品目です。
また対象業種は、各種商品小売業、各種食料品小売業、その他の飲食料品小売業、無店舗小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業、洗濯業が予定されています。コンビニエンスストア、ファーストフードなどのフランチャイズチェーンの場合には、本部事業者が加盟店に対して必要な指導を行う努力義務があります。
特定プラスチック 使用製品 |
フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、 ヘアブラシ、櫛、剃刀、シャワー用キャップ、 ハンガー、衣類用のカバー |
対象業種 |
各種商品小売業、各種食料品小売業、その他の飲食料品小売業、無店舗小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業、洗濯業 |
特定プラスチック使用製品提供事業者に求められる対応は、以下のとおりです。これらの対応の複数を組み合わせたり、実施が容易な対応から取り組むなど、対応の仕方は自由です。
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対象となる事業者は、単に上記の対応をするだけではなく、消費者に対して店頭又はウェブサイトでの情報提供が求められています。また、責任者の設置、研修の実施などの体制整備、安全等の配慮も求められています。さらに、特定プラスチック使用製品の提供した量、使用合理化のために実施した取り組み及びその効果の把握、情報公開の努力義務もあります。さらに、自治体、消費者、取引先などの関連当事者との連携、協力を求めることとされています。
また法第30条では、当該年度の前年度において提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上である多量提供事業者が、この判断基準に照らして著しく不十分である場合には、主務大臣は勧告、公表及び命令を措置することができます。また、命令違反については第62条により50万円以下の罰金の対象となり、第66条により両罰規定(法人に対する罰金)の対象にもなります。フランチャイズ本部については、加盟店が提供する量を含めて勘案されます。
最後に
以上の対応は、基本的には努力義務であり、自主的に多様な取り組みをすることが奨励されています。行政による勧告や罰則規定はありますが、実際に適用される可能性は低いと思います。また容器包装リサイクル法のレジ袋のように、多量利用事業者としての届出義務もありません。しかし、多量提供事業者の多くは上場しており、ESG投資の対象となっています。したがって、このように幅広い取り組みと情報公開を行うことは、持続可能な社会への貢献として、多くの投資家に評価されることになるでしょう。
この法律は、規制的な側面はあまりありませんが、企業の自主的取り組みを推進する大きな効果が期待できます。その意味で、新たな環境法の新しい形を示していると思います。
参考:「プラスチック資源循環」に関する特設ウェブサイトが公開。わかりやすいまとめ資料も!
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参考情報
執筆者プロフィール
佐藤 泉(さとう いずみ)氏
佐藤泉法律事務所 弁護士
環境関連法を主な専門とする。特に、企業の廃棄物処理法、土壌汚染対策法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等に関連したコンプライアンス体制の構築、紛争の予防及び解決、契約書作成の支援等を実施。著書は「廃棄物処理法重点整理」(TAC出版)など
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