コラム
地域共生社会実現のための行動変容とゲーミフィケーション 地域共生社会実現のヒント 〜コミュニティコーピング〜
本コラムでは、地域共生社会実現のヒントをテーマに、全6回にわたり超高齢社会における「社会的孤立」という問題と、その解消を目指すコミュニティコーピングというプロジェクトについてご紹介していきます。
第5回は、人をどう巻き込むのか、地域共生社会実現における行動変容のヒントとして、ゲーミフィケーションという考え方について紹介します。
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「ゲーミフィケーション」という考え方
私たちは、第3回目の記事でご紹介した「en(えん)プロジェクト」の中で、あることをきっかけに「人は自分が楽しいと思えると、主体的に動けるようになる」「人は自分が役に立っていることを実感できると、人と連携して動ける」という2つの気づきを得ることが出来ました。あるきっかけとは「ゲーミフィケーション」という考えをプロジェクトに取り入れたことでした。
「ゲーミフィケーション」の定義は『ゲーミフィケーション〈ゲーム〉がビジネスを変える』(井上明人著、2012年、NHK出版)によると「ゲームの要素をゲーム以外のものに使う」とされています。社会問題や地域課題など、自分事として人を巻き込もうとしたときに、思い通りに人が動いてくれないという経験をしている人は意外と多いかと思われます。「関心がある」という状態から「行動できる」という状態に行動変容を促すというのは結構大変です。そこで今、現実社会の問題に「ゲーム」という要素を取り入れる「ゲーミフィケーション」という考え方が、行動変容のヒントとして注目を集めています。
人を動かす「体験」を演出する
空き家活用事業 「en(えん)プロジェクト」を始めるにあたって、最初にぶつかったハードルは、空き家の残置物処分です。限られた活動資金の中で、この問題をどう解決するのか。そこで私たちは、週末に「ゴミ捨てイベント」を開催し、SNSや地域のイベントで広く住民に協力を呼びかけました。
このイベントでは、まず、家主の許可を得て、ゴミ捨てに協力すると残置物の中から好きなものを一つもらえるという「お宝さがし」という参加特典を付けました。すると、子供からお年寄りまで、近所に住む色々な人たちが自分のお宝を探すために、参加者同士で協力してゴミを捨てたり、まだ使えるものを整理整頓し、空き家をきれいにする光景が見られました。
「ゴミ捨てイベント」 の様子
また、イベントに何度も足を運んでくれる人が増えると、参加者同士がこの場所をどのように使っていきたいのかといった話し合いが自発的に生まれるようにもなりました。その中で、必要な物や欲しい物なども、基本的には購入するのではなく、自分たちのつながりの中で調達していこうという新たなルールが生まれ、参加者主体の「物々交換イベント」が開催されるなど、自分たちの友人、知人に運営に必要な物品の協力を呼びかけるつながりの輪が広がっていきました。
「物々交換イベント」の様子
幅広い世代に「ゲーム」でアプローチを
コレカラ・サポートは2020年10月、新たなプロジェクトとして、超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」と名付けた超高齢社会を疑似体験できるゲームを開発しました。
ゲーム開発のきっかけは、近年、相談支援の活動の中で高齢者だけでなく現役世代でも、ダブル介護や介護離職など、社会制度や支援が届かず、表面化しにくい悩みを抱え、地域の中で孤立する人が増えていると痛感するようになったことです。「住民同士が支え合える地域をつくらなければ、超高齢社会は立ちいかない」と考える中で、若年層から高齢層まで幅広い世代が参加し、一緒に楽しみながら気づきを得られるツールとしてゲームを思いつきました。
困難を抱えて孤立する人を支えるうえで欠かせないのは、行政や医療・福祉系の専門職だけでなく、地域に暮らす私たち住民自身です。 超高齢社会にどんな問題が起こるかを知り、自分たちに何ができるかを考え、実際に一歩を踏み出すきっかけにしてもらおうと、現在、その普及活動を行っています。
次回は、超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」の内容と、今後の展望についてご紹介します。
参考情報
『ゲーミフィケーション〈ゲーム〉がビジネスを変える』(井上明人著、2012年、NHK出版)
超高齢社会をゲームで体験 「コミュニティコーピング」体験会を開催しています!
コレカラ・サポートでは、人と地域資源をつなげることで「社会的孤立」を解消する協力型ゲーム「コミュニティコーピング」の体験会を毎月オンラインで開催しています。ゲームを通じて体感的に、超高齢社会や「コミュニティコーピング」の概念に触れ、理解することができます。第1回全日本ゲーミフィケーションコンペティション準グランプリ受賞。
研修やワークショップなどでの導入を検討してみたい方、まずは体験会へのご参加をおすすめしています(個別のご相談も承ります)。
執筆者プロフィール
千葉 晃一(ちば こういち)氏
一般社団法人コレカラ・サポート 代表理事
金融機関の個人資産相談部門を経て2009年独立。2011年から相続や財産管理等、高齢期の複雑多岐な悩みを専門家がワンストップで対応する「コレカラ・サポート」を設立・運営。
NHK首都圏ネットワークの特集「プロジェクト2030」で介護者支援、遺族支援の活動が紹介される等、注目を集めている。
(一社)コレカラ・サポート https://koresapo.net
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