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コラム

オムロンの障がい者が活躍できるダイバーシティ推進とは?ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)経営による企業価値創出

pexels-fauxels-3184418.jpg本コラムでは、企業戦略のひとつとして重要になると考えられている"ダイバーシティ"や"インクルージョン"を切り口に、多様な人材が企業で働くことで起こるイノベーション、企業の価値創出につながる考え方や企業事例をご紹介します。「ダイバーシティを推進したいけど、何から始めたらいいかわからない」とお悩みの方、ぜひご覧ください。

今回は「The Valuable 500」※1にも加盟されているオムロンのダイバーシティ推進部の方に障がい者雇用に取り組むきっかけやそこにかける想い、ダイバーシティ&インクルージョンに対する考え方についてお話を伺いました。聞き手は、今年度からアミタで障がい者雇用に取り組んでいる人事が担当させていただきました。

※1The Valuable 500...2019年1月に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発足した、障害者が社会、ビジネス、経済における潜在的な価値を発揮できるような改革を、世界500社のビジネスリーダーが起こすことを目的とした、世界的なネットワーク組織です。(引用:日本財団

オムロンの企業理念を実践するためには「ダイバーシティ」が必要不可欠です

アミタ:はじめに、オムロンが障がい者雇用に取り組むきっかけを教えていただけますか?

庄司氏:きっかけは「No Charity but a Chance!」の理念を掲げ、職業を持つことによる障がい者の自立を追求した社会福祉法人「太陽の家」の創設者である中村裕先生と「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」という社憲を制定し「社会の公器性」を大切にしたオムロン創業者立石一真との出会いにあります。双方の理念が共鳴して、1972年にオムロン太陽、別名「車いすのある工場」として、日本初の福祉工場が大分県別府市に設立されました。その当時から社会貢献活動、CSRの一環として障がい者雇用を行うのではなく、事業を通じて利益をあげることを目的としていました。
障がい者雇用の原点には「ダイバーシティ」を推進していきたいという想いがあります。私たちは、障がい、性別、人種という目に見える表層的な違いだけでなく、性格や価値観、その人自身の背景にある深層的な違いも含めてダイバーシティだと考えています。それらを含めて一人ひとりの違いを受け入れ、認め、それを活かすことで新たなイノベーションを創出し、オムロンの企業理念の実践につなげていきたいと考えています。

アミタ:時代に先んじて、障がいのありなしに関わらず活躍しビジネスとして成果を上げられる環境づくりに取り組まれていたのですね。ダイバーシティ推進に真摯に向き合っていらっしゃることがわかりました。実際に、障がい者雇用を進めている部署はどのような部署なのでしょうか?

庄司氏:オムロンにはダイバーシティを推進する専門部署があります。ダイバーシティ推進部は障がい者をはじめ、女性、LGBTQなど、オムロンで働く多様なメンバーが活躍できる職場づくりを推進しています。

アミタ:オムロンで働くすべての人が活躍できる体制づくりを担っているのですね。今回は特に、1972年から取り組まれている障がい者雇用について詳しくお伺いさせていただきたいと思います。

「対話」と「相互理解」ができる体制づくり

アミタ:さっそくですが、具体的な取り組みを教えていただけますか?

庄司氏:はい、障がいのあるメンバーが活躍する上での支援体制として、障がいのあるメンバーが1名以上在籍するグループ各社、各事業所に障がい者職業生活相談員を配置し、当事者の上司とも連携しながら支援できるようにしました。さらにダイバーシティ推進部に支援専門員を配置して、職場で困難な相談にも対応できるようにしています。障がい者職業生活相談員の役割は、障がいのあるメンバーが働く上で抱える困りごとの相談を受け、上司、医療職、事業所のパイプ役となり、事業所全体で環境改善や体制を整えていくこと等が挙げられます。

また、障がいのあるメンバーに対する合理的配慮※2面談を定期的に実施しています。国内オムロングループで働く約250名全員に対して、年に1回、上司との面談を行い当事者の意見を吸い上げるようにしています。必要に応じて医療職との面談も行い、医療的な観点から具体的な障がい特性を確認することで配慮事項の改善につなげています。各事業所で実施した改善は社内のポータルサイトで参照できるようにし、各職場での改善ノウハウの共有を進めて、グループ全体での改善を促進しています。こうした改善を進めるには、職場での「対話」と「相互理解」が重要です。障がいの特性は個々に異なるのでメンバー一人ひとりが能力を最大限に発揮し、事業を通じて活躍できるようにするためには、一人ひとりと話し合い、その人、その職場に合った解決策や配慮事項を決めていく必要があります。

※2合理的配慮...権利条約第2条において「合理的配慮」は「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。(引用:内閣府

アミタ:対話できる環境を整えることがとても重要なんですね。一緒に働くメンバーからの理解も重要だと伺いました。障がいのあるメンバーと働くことへの社内理解については何か工夫はされているのでしょうか?

庄司氏:相互コミュニケーションを促進するための職場理解や意識改革を進めています。オムロングループでは「人権週間」にあわせて1年に1回人権研修を実施しており、障がい者雇用に関するプログラムを取り入れています。また、障がいのあるメンバーを受け入れる上司の受け入れ準備研修や、障がい者職業生活相談員向けにも定期的な勉強会を行い、支援力のスキルアップを図っています。

障がいのあるメンバーと働くことで新たな"気づき"があります

アミタ:障がい者雇用をはじめとするダイバーシティ推進を行うことで、実際に変化した職場環境や気づきを教えていただけますでしょうか?

庄司氏:はい、障がいのあるメンバーと働くことで職場全体が働きやすくなったということが挙げられます。例えば、いまはコロナ禍で在宅勤務が浸透していますが、コロナ禍以前から障がいのあるメンバーが在宅勤務を活用していました。出社しないことでチームメンバー間のコミュニケーションが図りづらく、情報が行き渡らないことがありました。そこで、情報にアクセスできる体制を構築し、情報保管の共通ルールを整備するなど細かい改善を積み重ねることで、働く場所に関わらず円滑なコミュニケーションができるようになり、チームが一体となって仕事ができる土台を築くことができたのです。

また、精神・発達障がいのメンバーと一緒に働くことで気づいたことがあります。精神・発達障がいのメンバーに対しては「コミュニケーション方法」の配慮が求められます。気になることがあると作業が前に進めなくなるため、わからないことがあった時にすぐに相談できるよう就業サポーターを配置し、一人で抱え込まずに困りごとを解決する環境を整備しています。また、優先順位がつけられずマルチタスク対応が難しいため、業務は一つずつ明確に説明して指示する、納期を設定してこまめに進捗確認する、行った業務に対しては「しっかりできていたよ」とか「1か所記入漏れがあったよ」というフィードバックを行って不安を解消するといったコミュニケーションが必要になります。

障がいとされている「特性」も本当は私たちが当たり前に持っている 「個性」 のひとつです。配慮や特別な対応の中には、普段の業務に取り入れれば、障がいの有無に関係なく一緒に働くすべてのメンバーにとっての業務の効率化に役立てられることが多いのです。こういった取り組みを通じて、コミュニケーションを取る上での基本的な意識というのは、人財育成にとって重要なことだと改めて気づきました。今後の人財マネジメントに活かしていきたいと考えています。

新しい挑戦、精神障がい者の活躍の場を築きたい

アミタ:オムロングループとして障がいのあるメンバーの活躍に関して、今後の展望はございますか?

庄司氏:精神・発達障がいの方の活躍できる場が少ないことを社会的課題と感じ、オムロングループは雇用に取り組んでいます。精神・発達障がいは表面的にはわかりにくく、働く上での課題にもそれぞれ違いがあります。いま、まさに精神・発達障がいのあるメンバーが活躍できる職場づくりを一緒に築いていくことにチャレンジ中です。

障がい者雇用を考えることは、誰もが働きやすい職場を考えること

アミタ:最後に、これから障がい者雇用に取り組む企業の方へメッセージをお願いします。

庄司氏:ダイバーシティ推進には、魔法の杖や特効薬はなく、正解もありません。ひとつずつ地道にやっていくことで前に進めると考えています。「障がいのある方と働くのはむずかしい」「特別なことをしなくてはならない」と思っている方もいるかもしれません。でも、障がいの有無にかかわらず、誰にでも強みや弱みがあり、それをどう伸ばすのか、またはどうカバーするのか、会社では誰もが考えていることではないでしょうか。障がいのあるメンバーと一緒に働くために必要なのは、まさにその考え方だと思います。本当は構える必要のないあたりまえのことをやるだけなのかなと思っています。

アミタ:お話を通して、ダイバーシティ推進の本質に向き合いながら障がい者雇用に取り組まれていることがわかりました。
「誰もが活躍できるより良い職場づくりをする」という当たり前のことを構えずに取り組んでみよう、というメッセージはこれからダイバーシティ推進や障がい者雇用に取り組む企業様にとっても第一歩を踏み出す後押しになると思います。本日はありがとうございました。

話し手プロフィール

Ms.shoji.JPG庄司 輝実(しょうじ てるみ)氏
オムロン エキスパートリンク株式会社
人財ソリューションセンタ ダイバーシティ推進部
入社後、広報宣伝担当として12年間従事。2018年よりダイバーシティ推進部にて、障がい者採用、職場支援、環境整備を担当。一人ひとりの特性に合った活躍ができる仕組みを実現し、障がいの有無に関係なくすべてのメンバーがお互いを尊重して個性と能力を発揮できる組織づくりを目指す。

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奥 陽介(おく ようすけ)
アミタホールディングス株式会社
カンパニーデザイングループ ヒューマンリソースチーム

書き手プロフィール

古城 日向子(こじょう ひなこ)
アミタ株式会社
インテグレートグループ カスタマーリレーションチーム

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