コラム
7世代先のことを考えた適切な選択肢づくりを期待します日本版シュタットベルケへの挑戦
日本版シュタットベルケを目指して日本にも多くの新電力会社が設立されました。その中の1つに生駒市が51%を出資するいこま市民パワー株式会社(以下、いこま市民パワー または ICP)があります。公共施設の電力切り替えは政策的に行われていますが、民間会社や個人への電力販売が今後の成否をわけます。
今回は、奈良県生駒市にお住いの濱田 信吾(はまだ しんご)氏に、ご自宅の電力を切り替えた経緯や意図について、いこま市民パワーが取材しました。(※写真は徳島県の放棄ゆずを収穫にいかれた際のご長男との写真)
※アミタ株式会社はいこま市民パワー株式会社と連携協定を結んでいます。
安さや便利さ以外に電気を選ぶ選択肢が日本になくて困っていた
ICP:当社の電気に切り替えていただいた理由をお教えください。
濱田氏:大きくは3つあります。1つ目は、自身のアメリカ留学時代の経験からです。環境政策が進んでいる市として有名なアメリカのオレゴン州ポートランドに留学していたのですが、電気を買う際に、発電方法ごとに選択できる仕組みがしっかりと用意されていると感じました。供給される電力の割合も選ぶことができます。私も、現地で働くようになってお金に少し余裕ができると、大型ダムによるサケなどの魚の遡上への影響が心配だったので、大型ダムから供給される電力から、ソーラー発電による電力に変更するということもしていました。
(※写真はポートランド留学時の写真)
再生可能エネルギーの方が価格は高くなりましたが、価格や利便性以外にも環境配慮などの視点から、当たり前のように使用する電気が選択できました。そのようなアメリカでの経験があったので、日本でも2016年からの電力自由化によって一市民ユーザーが使用する電気を選択できるようになった際は、それがとても新鮮で面白いと思っていました。
自分のライフスタイルや生き方にそぐわない電気を買う矛盾を感じていた
濱田氏:2つ目は東日本大震災です。2011年当時、博士号の取得のためアメリカのインディアナ州にいましたが、東北、福島の映像がどんどん入ってきました。地方で作られた電気を都会が消費する仕組み、その負の仕組みの被害を福島が負ったという状況を目の当たりにしました。震災10年が経ちましたが、あらためて思い返しても、高度経済成長の負の部分を地方に押し付けた、地方と都市部の関係を象徴する問題だと思います。
ですから、自分としては、生活の便利さの向上のためのリスクが都市と地方の間で不平等に分配される仕組みを維持するような公共サービスや商品は選択したくないという想いがありました。しかし、帰国して京都、生駒と引っ越しましたが、自身の想いに沿った電力会社の選択肢がなかったんです。価格や利便性を軸としたものはたくさんありましたが、脱原発や地産再エネ電源など、そういった軸の選択肢がないと感じていました。
有機栽培の野菜を作ろう、減農薬栽培の野菜を買おうという姿勢の自分が、電気に関しては、日本海側の原発も含まれる電気を当たり前のように買って生活しているということに矛盾を感じていたんです。
今、社会の流れを変えないと手遅れになるかもしれない中で、現役世代(特に40代前後)の活動できる人ができることからやらないといけないと思っていますし、次世代にもきちんと伝えていきたい。そんな時、2020年11月に自治会回覧板でICPが一般家庭に対して電力供給を開始したことを知りました。料金もそこまで高くなさそうでしたし、住んでいる地域の再エネ電源が利用できるということで妻に相談したところ、すぐに賛同してくれました。ちなみに先日、ICPに契約先を変更して初めての請求書が届きましたが、昨年の同時期と変わらない支払い額でした。
3つ目は借家に住んでおり、ソーラーパネルの設置が難しいことです。この問題もICPから電気を買うことで解決しましたね。
電気に限らず、7世代先のことを考えて適切な判断ができる選択肢づくりを期待します
ICP:いこま市民パワーに期待することはなんでしょうか?
濱田氏:未来への投資です。日本で少子高齢化が進む中で、子どもを安心して育てられる、安心して子どもが育つことが大切だと思っています。人口割合が多い高齢者のケアを充実させるのと同時に、より一層子育て世代へのサポートを含めて、未来への投資を充実させていってほしいです。
(※写真は大学の学生と共に収穫体験をするご長男)
あと、ICPには、価格は一消費者の支払いとしての安さも大事ですが、社会として、そして現代という時代を越えた視点でトータルで安いかどうかという判断を重要視してほしいです。私が大切にしている考え方の一つに「7世代先のことを考えよ。」という視点があります。アメリカ先住民(イロクォイ連邦)はものごとを決めるとき、現代人にとっての有益性だけではなく、現代人のその決断が、7世代先の人々にとっても有益なものであるかを判断材料とします。電気にとどまらず、ごみの削減や、私の家が生駒市の補助金をもらってはじめたキエーロ(※キエーロは、生ごみ処理機の名称)のような、生ごみの堆肥化といったより循環的な処理の推進など、現代に生きる私のような一市民が未来に対しての責任を少しでも果たせるようなサービスを、ICPには会社として提供し続けてほしいです。
話し手プロフィール
濱田信吾(はまだ しんご)氏
生駒市、奈良市で育ち、アメリカ在住12年を経て、2015年より生駒市に在住。2020年より生駒市小平尾の農園(自然農園ほのぼ〜の)の協力のもと、学生の農業実習とともに耕作放棄地の再活用の活動に参加している。好きな言葉は、"Only dead fish go with the flow"(流れに身を任せるのは死んだ魚のみ)。総合地球環境学研究所研究員を経て、現在大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科准教授。
聞き手プロフィール
アミタホールディングス株式会社 未来デザイングループ 蝦名 裕一郎
入社後、人事部門、省庁の地域活性化支援事業支援、企業の環境教育活動支援、CSRコンサルティング、アミタグループの広報・マーケティングを経て、2018年より地域デザイン事業開発に携わる。2019年度、アミタ(株)が生駒市萩の台住宅地自治会と光陽台自治会で行った「こみすて」実証実験の主担当。2020年7月からいこま市民パワー(株)に兼務出向。
関連情報
アミタグループは、地域の持続性を高める統合支援サービス「BIOシステム」を提供しています。地域の未利用資源を活用したコンパクトな自立型の地域づくりを、ビジョン策定からインフラの設計・運営、産業・雇用創出支援まで、トータルで支援します。
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