コラム
超高齢社会における「社会的孤立」の問題地域共生社会実現のヒント 〜コミュニティコーピング〜
本コラムでは、地域共生社会実現のヒントをテーマに、全6回にわたり超高齢社会における「社会的孤立」という問題と、その解消を目指すコミュニティコーピングというプロジェクトについてご紹介していきます。第1回では、著者が所属するコレカラ・サポートの活動経緯とあわせて「社会的孤立」について、その背景と問題点について取り上げていきます。
コレカラ・サポート設立の背景
コレカラ・サポート設立のきっかけは、当社代表でファイナンシャルプランナーの千葉晃一がもともと個人で事務所を構え、資産運用などの相談に当たっていたところ、高齢者の財産を巡るトラブルの多さに直面したことでした。
財産を巡る問題と言っても、金銭の管理から、相続、不動産、税金のことなど多岐にわたり、対応する専門家もそれぞれ異なります。そこで、一つの窓口に相談すれば、それぞれの分野の専門家が集まって一度に解決に当たる「ワンストップサービス」を目指し、2011年に活動を開始し、翌2012年に法人を設立しました。
超高齢社会の日本においては、今後も高齢化率が上昇すると予想されている中、判断能力の衰えなどから自分で財産を管理できない高齢者や、相続などを巡るトラブルなど、高齢者の財産を巡るさまざまな問題の解決を目的に、相談支援の活動を行っています。
現在では、毎年約350件の相談を受けています。相談の経緯は、活動エリア(東京都、千葉県、埼玉県など)での講演活動を通じて知り合った福祉系の専門職や地域活動団体からの紹介がメインなっています。また、設立当初は拠点に看板を掲げて相談者に来てもらうという形でしたが、現在はそれを180度変えて、こちらから困っている方を訪問する形をとっています。
図:コレカラ・サポート連携モデル
当事者支援から家族支援へ
相談支援を訪問という形に切り替えた理由として、相談者層の変化により、活動スタンスが当事者支援から家族支援に変化してきたことが挙げられます。
図:できることの変化
図:健康寿命と平均寿命の推移によると、健康寿命(日常生活に制限のない期間)が平成28年において、男性が72.14歳、女性が74.79歳。平均寿命(男性80.98歳、女性87.14歳)との差が、男性は8.84歳、女性は12.35歳となっています。平均寿命と健康寿命の差の約10年間に、身体の自由度が低下し自立がゆらぎ始め、最期を迎えるということになります。活動を続けるにつれて、私たちに寄せられる相談はこの期間に問題と直面し、悩みを抱える方からのものが非常に多く、また、問題を抱える当事者の支援が、当事者を支えている周りの家族などのサポートを前提としているケースが多いことに気づいてきました。
図:健康寿命と平均寿命の推移 参考:令和2年版高齢社会白書(全体版)
また、図:要介護者から見た主な介護者の続柄によると、介護者の年齢が男女共に約7割が60歳以上とあるように、介護が必要な当事者だけでなく、周りの家族も時間の経過とともに高齢化が進みます。相談支援を従来の形から訪問という形に切り替えたことで気づいたのは、周りの家族もすでに何らかの問題や悩みを抱えているケースが非常に多く、さらにこれらの問題は、外部との接点ができない限り社会的に孤立し、表面化しにくいものであるということです。平均寿命と健康寿命との差の期間に起こる様々な問題に対処するためには、都度対応する点の支援だけではなく、継続的な線の支援が必要だと感じています。
図:要介護者からみた主な介護者の続柄 参考:令和2年版高齢社会白書(全体版)
相談支援の現場で感じる「社会的孤立」の問題
「社会的孤立」という言葉は、高齢者白書によると「家族や地域社会との交流が、客観的に見て著しく乏しい状態」という意味で用いられていますが、私たちは「必要なときに必要な助けが届かない状態」というように捉えています。
これは、相談支援の現場において「社会的孤立」の問題点が大きく2つあると感じているからです。1つ目は、社会保障制度を始めとした支援制度やサービスが、自分で選択し申請・契約する制度となっているため、そこに物理的・能力的にアクセスすることが難しい人にとっては支援を受けることが難しいという点。2つ目は、支援の対象とならない制度の隙間にある悩みを抱える人が増えたことにより、問題が深刻になるまで表面化しないということが見えてきたからです。
今、まさに新型コロナウイルス感染症の流行により、人や地域の交流が分断される中で、今後「社会的孤立」にどう取り組むのかが、地域共生社会にとって一番の課題なのではないでしょうか。
第2回では「社会的孤立」の具体的な問題について取り上げていきたいと思います。
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参考情報
URL:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/zenbun/pdf/1s2s_02.pdf
内閣府 令和2年版高齢社会白書(全体版)
「第1章高齢化の状況 第2節高齢期の暮らしの動向 2健康・福祉」(P28、34)
執筆者プロフィール
千葉 晃一(ちば こういち)氏
一般社団法人コレカラ・サポート 代表理事
金融機関の個人資産相談部門を経て2009年独立。2011年から、相続や財産管理等、高齢期の複雑多岐な悩みを専門家がワンストップで対応する「コレカラ・サポート」を設立・運営。
NHK首都圏ネットワークの特集「プロジェクト2030」で介護者支援、遺族支援の活動が紹介される等、注目を集めている。
(一社)コレカラ・サポート https://koresapo.net
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