コラム
地域密着型の企業として、普段使うものは地域から買いたい日本版シュタットベルケへの挑戦
日本版シュタットベルケを目指して日本にも多くの新電力会社が設立されました。その中の1つに生駒市が51%を出資するいこま市民パワー株式会社(以下、いこま市民パワー または ICP)があります。公共施設の電力切り替えは政策的に行われていますが、民間会社や個人への電力販売が今後の成否をわけます。
今回は、事業所の電力を切り替えた生駒台郵便局長の中村大輔様(写真右)と生駒萩の台郵便局長の梁瀬健司様(写真左)に経緯や意図について、いこま市民パワーが取材しました。
※アミタ株式会社はいこま市民パワー株式会社と連携協定を結んでいます。
民営化で地域にどのように貢献するか改めて考える必要が生まれた
ICP:郵政民営化法に基づき、民営化された全国の郵便局。それによる変化などはあったのでしょうか?
中村氏:全国のインフラであり、民間企業になったとはいえ、離島なども一律のサービス提供が必要で、公益性を犠牲にするわけにはいかないと感じています。
梁瀬氏:会社の方針として、地方自治体との包括連携協定を推進する流れがありました。元々公的機関だったからか、これまで包括連携協定を結ぶことはなかったんです。民営化し、改めて我々の発展は地域と共にあるということがあり、それをきちんと形にしていこうという背景がありました。経営理念にも「地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。」とあります。
普段使うものは地域から買いたい
ICP:具体的にはどのような行動につながっているのでしょうか?
中村氏:文具品などは、原則、会社で契約している業者で購入していますが、取り扱いの無い商品などについては、地域との連携から地元の業者さんで購入するようにしています。また、民営化するまで貯金、保険、郵便以外の業務を行うことはあまりなかったのですが、最近では地域の大型ごみ処理券などを窓口で販売するところも増えてきています。
梁瀬氏:そんな中、私たちも生駒市様との包括連携協定締結を進めたいということで、市に相談にいきました。しかし、連携といっても具体的に何をするかという点が定まらずなかなか前に進みませんでした。その後、何度か具体的な案を持っていく中で、いこま市民パワー様の取組みを知りました。
前例なしを突破できたのは、経験してないことほど興味深くやってみたいという気持ち
ICP:全国で他にも地域電力を郵便局が購入しているところはあったのでしょうか?
梁瀬氏:
会社の方針として、自治体との包括連携協定締結を推進する動きがあるため、その一環として取り組むことができるのではないか?と思い、社内の担当部署と相談しました。元々、会社で一括の契約だったので最初からすんなりとはいかなかったのですが...包括的な連携協定を進めるには、単一の連携ではなく、様々な連携施策が必要になります。
中村氏:生駒市様から委託を受け、9/1から空き家プラットフォーム利用の申込取次を開始しました。この空き家プラットフォームへの取組は、山口県で似た取組を行っているところ見つけ、内容をアレンジしつつ、生駒市ではどんな取組とするか協議を重ねました。
ICP:多くの場合、前例がないとあきらめてしまうケースが多いように思うのですが、乗り越えられたのはなぜでしょうか?
中村氏:誰もしないからやろうか、というか、興味深いし、結局経験してみないとわからない。絶対、勉強になるなと思ったんです。本社とのやりとりは何度もしました。先述の空き家プラットフォームの取組を含め、市と様々な取組を協議していくなかで、先んじて3/25に生駒市様と生駒市内郵便局の包括連携の締結に至りました。
梁瀬氏:その後、ICP様から委託を受け、1/5から「いこま市民パワー新電力サービス説明等依頼書の取次」を開始しました。新電力サービスに関心のあるお客さまから希望を受けて、お客さまの情報を郵便局からICP様に取り次ぐというものです。無料かつ任意での取次ではなく、成果報酬のビジネスマッチングとして委託を受ける形になっています。
中村氏:顧客紹介であればどのように対応できるかを考え、明文化して、組織対組織で協働していくことを選びました。社員にもICP様の取り組みについて、知ることができる機会だと考えました。とはいえ、手続きが複雑だと郵便局本来の窓口業務で対応できないので、ICP様にお客さまからの問合せをご紹介するというところに整理しました。専門的な説明等はICP様にお任せし、郵便局は仲介役に徹するということです。ICP様の取り組みをご紹介する機会を増やせますので、今後はICP様と連携しながら取り組みを進めていきたいと思います。
意外とつながるきっかけを探している事業者は多いのかもしれません
ICP:お二方からいこま市民パワーに期待することなどございますか?
梁瀬氏:我々もそうですが、意外とつながる「きっかけ」を探している事業者さんは多いのかもしれません。ですので、いこま市民パワー様が人と企業をつなげるような役割を果たしていただけたら嬉しいですし、郵便局も一緒につなぐ役割を担えたらと思っています。
中村氏:こんなに地域密着型の事業なのに、市役所様や地域と何か具体的に取り組むような機会が意外と少なかったんです。思い返せば、生駒市様との連携も2015年の「振り込め詐欺等撲滅」施策葉書贈呈式が最初で、その時に副市長様や市の職員さんとつながりを持てたことが大きかったです。振り込め詐欺防止を啓発するハガキを作って、電話の隣においてもらう。はがきを見ると、万一振り込め詐欺がかかってきても目に入るので、防止策になるという取り組みです。そのはがきの中に地元の協賛企業名がたくさん載っている。そのきっかけから少しずつ発展して、今回のように当社と生駒市様とICP様との連携が始まりました。
梁瀬氏:生駒市で実施される100の複合型コミュニティにはとても期待しています。例えば、高齢者から子どもたちに昔ながらの生活の知恵を伝える。あるいは(経済・物質など含めた)循環を考えていくようなことを教えていく。そんな場になってくれたらと思います。そして、手紙や切手という文化は残したいと思っています。例えば、年に1回の年賀状という文化も、つながりが希薄になる世の中で何か1つでも接点を持つという価値があると思うんです。そういったこともこの場作りの中で一緒にできないか、考えたいと思います。
ICP:そういったご期待に我々も応えられるよう事業を進めてまいります!本日はお時間いただき、ありがとうございます。
話し手プロフィール
日本郵便株式会社 生駒台郵便局長 中村大輔様
生駒市出身。近畿大学理工学部卒。生駒市プレミアム付商品券をはじめとする市内限定企画の郵便局販売などを数多く担当する。"出会いを大切に"が仕事のモットー。
日本郵便株式会社 生駒萩の台郵便局長 梁瀬健司様
生駒市出身。関西大学文学部卒。地域に溶け込んで仕事がしたいという想いを持って市内郵便局に入局。生駒市内郵便局と生駒市との包括連携協定締結を担当。「地域に根差す」が仕事のモットー。
聞き手プロフィール
アミタ株式会社 地域デザイン事業グループ 蝦名 裕一郎
入社後、人事部門、省庁の地域活性化支援事業支援、企業の環境教育活動支援、CSRコンサルティング、アミタグループの広報・マーケティングを経て、2018年より地域デザイン事業開発に携わる。2019年度、アミタ(株)が生駒市萩の台住宅地自治会と光陽台自治会で行った「こみすて」実証実験の主担当。2020年7月からいこま市民パワー(株)に兼務出向。
関連情報
アミタグループは、地域の持続性を高める統合支援サービス「BIOシステム」を提供しています。地域の未利用資源を活用したコンパクトな自立型の地域づくりを、ビジョン策定からインフラの設計・運営、産業・雇用創出支援まで、トータルで支援します。
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