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コラム

生駒市実証実験レポート|多世代ごちゃまぜの交流が起こる場所2地域の課題をトータルで解決する「MEGURU STATION®」

1_IMG_1581_.JPGアミタ株式会社は、奈良県生駒市の「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上モデル事業」を受託し、NECソリューションイノベータ株式会社(以下NECソリューションイノベータ)と共に、同市で2019年12月から2020年2月に実証実験を行いました。

前回は、実証実験の舞台である「こみすて(コミュニティステーションの略で生駒市版MEGURU STATION® 以下、ステーション)」の現場の様子を写真とともにお伝えしました。

今回は、住民が集い、参画する場づくりの仕掛けをご紹介します。本実証実験では、場づくりのアドバイザーとして、人々の主体性を引き出すデザインによりコミュニティ形成・活性化を図る株式会社グランドレベルに参画いただいています。

開かれた場所だからこそ、一歩踏み出せる

前回ご紹介したとおり、今回の実証実験では、地域の自治会館の脇の緑道にステーションを設営しました。この緑道に実証実験の空間を設計するうえで大事にしていたのは「誰もがそこに来て、滞在し、参加して良い場である」ことを示すことです。
2_DSC03821.jpg地域の交流イベント等が、閉ざされた建物の中で行われていて、入りにくかった経験はありませんか?初めて参加する場合はなおさら、外から様子が見えないと一歩足を踏み入れるのにも勇気がいるのではないでしょうか。それどころか、当事者以外に活動の存在を知られていない可能性もあります。それではせっかく良い活動をしていても、新たな参画者は募りにくくなってしまいます。

そこで、ステーションは、ふらりと気軽に立ち寄れる開かれた場所に設営しました。入り口にはゲートを設け、空間を区切りつつ"何かやっている"ことが遠くからでもわかるようなアイコンとしました。

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実はこの場所は、地域のボランティアの方で行う防犯パトロールの活動の集合場所でもありました。週に2回、時間になると、シニアの男性の方が集まります。最初は入り口付近で遠目に見ていた方々が、日を追うごとに少しずつ中に入ってこられて「こんなごみも持ってきて良いんだ」「薪ストーブまであるの?」「このストーブ、昔持ってたよ、懐かしいな」など、スタッフやボランティアの方同士で会話が始まり、資源回収スペースをふらりとのぞいていきます。そのうち、数名の方がごみを持ち込んでくださるようになりました。

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右の写真に写っている方も防犯パトロールがきっかけで、日常的にごみ出しに参加してくださった一人です。火起こしが上手で、帰りがけにはいつも薪ストーブの火の様子を見ては、薪を割り、火をくべていってくれました。時には焼き芋を持ってこられて、ふるまってくださいました。ご自身で食べるためというよりも、皆で一緒に食べることや、あるいは食べてもらうことを楽しんでいらっしゃったように感じます。

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この薪ストーブは、スタッフだけでなく、住民の皆さんが気にかけ、世話をすることで炎が灯され続けました。あたたかい場所には、人が集まります。心地よい空間づくりのすべてをスタッフだけが担っていたのではありません。住民の方々の心遣いとふるまいがあってこそできた空間でした。

滞在しやすい空間、参画しやすい空間

滞在して良い、話しかけて良い空間である、ということを表すために、ベンチや飲み物は良いツールとなります。ただ通り過ぎる場所ではなく、滞留できる余地を残すことで、人が出会い、他愛ない会話が生まれる可能性がぐっと上がります。設置する場所や距離なども重要です。こうした日常の積み重ねが、顔の見える関係性を作っていくと考えます。

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コーヒーとベンチがあればすぐに会話が始まる

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たまたま通りかかった人同士をひとつのベンチがつなぐ

DIYで大活躍した方もいます。ドラム缶の上にぴったりはまるよう木を加工してテーブルを作ったり、足場が悪いからとステーション横の側溝の溝の蓋を作ったり、備品のリヤカーのタイヤを直したり、スタッフがお願いしたことも、してないことも、とにかく人知れず何かを作っては、ステーションをグレードアップしてくださり、まさに縁の下の力持ちでした。

その場を利用する地域の方々の力で、より良い空間へと自由に変えていけるように、最初からルールや場のしつらえを作りこみすぎないことも、場づくりの工夫のひとつです。そして、細かなルールよりも場の目的を共有することを優先させます。そのうえで、どんどん手を加えてくれていいんです、という空気を作っていきます。関与すればするほど、この場は「自分たちのもの」になっていき、当事者意識が生まれていきます。

ある日、木のテーブルに見覚えのない犬の絵(以下、写真参照)が出現し、スタッフは驚きます。誰がここに...?実は、このDIY名人が「もっとこの場を自由に使っていいことを伝え、参加する人を増やしたい。子どもが真似して絵を描くかも。」という思いで絵を描いていたことがわかりました。

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(クリックして拡大)

住民の方々の参加やふるまいが連鎖したことは、言うまでもありません。あちらこちらで思い思いの空間の活用が見られました。薪割りや薪ストーブの火おこしは、シニアの方々と子どもたちの会話のきっかけを生みやすく、初対面でありながら、教える、教わる、手伝う、見守るといった役割が自然と生まれました。また、そうした場のしつらえが「話しかけて良い」サインとなるのです。

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ドラム缶にお絵かき

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薪割りに挑戦

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「黒板」のふるまい 看板づくりのイベント準備
地域課題解決の基盤づくり

今回は、足を踏み入れやすいデザインにすること、スタッフが作りこみすぎず可変的な空間とする等、場づくりの工夫についてご紹介しました。私たちは、こうした地域の活動の小さな参画や、ふとした会話の積み重ねが、ゆくゆくは、共助と自治のまちづくりの基盤へと繋がることを確信しています。ご紹介できなかったエピソードがまだまだありますので、引き続き多世代交流が生まれる場づくりについて連載します。次回は、大活躍した子どもたちやママさんのエピソードを中心にご紹介します。

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