コラム
第1回:一般廃棄物処理・地域課題の解決につながる「ICT×ごみ出し」の可能性「地域消滅時代」に立ち向かう自治体行政のICT利活用
地域を豊かに持続していく、従来型のシステムに代わる新たな社会システムとはどのようなものか?限られた財源の中で、どのように行政サービスを提供するのか?アミタグループでは、上記の提案として「ごみ出し」を活用しながら、地域価値および持続性を高める支援を行っています。本記事では、ICTを活用した「循環技術」による支援について、弊社の事例を通してご紹介いたします。
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※本記事は、「都市清掃」7月号(2020年7月中旬発行予定)に掲載予定です。一部、加筆・修正しています。
はじめに
財源確保と地域課題の解決はいずれも、地方自治体にとって喫緊の課題となっています。「日本創生会議」の発表によると、およそ50%の自治体が「消滅可能性都市」、すなわち人口流出と少子高齢化のために存続できなくなる恐れのある自治体とされています(具体的には「2010年から2040年にかけて、20 ~39歳の若年女性人口が 5 割以下に減少する市区町村」と定義されています)。さらに2050年には、日本の高齢化率が約39%に達すると予想されています。人口の約4割が65歳以上という未曽有の時代を迎える準備が、今求められているのです。
一般廃棄物処理の現状と課題
「消滅可能性都市」として指定される自治体は、いずれも人口流出に伴う歳入減少と、高齢化による社会保障費の増大に悩まされています。また地域コミュニティにおける人間関係の希薄化により、永く地域社会の基盤を担ってきた住民自治機能が衰退している例も多いのが現状です。こうした自治機能は、震災や感染症などの非常時には最も確かな拠り所となり、生命線ともなりえます。住民自治のセーフティネットが、かつてなく弱体化していることは、重大な社会的リスクといえるでしょう。
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こうした中で、自治体財政をさらに圧迫する大きな要因となっているのが、一般廃棄物処理サービスです。住民の健康と生命にかかわる医療介護関係の予算よりも多額の費用を「ごみを燃やして埋め立てるため」の廃棄物処理費に回さざるを得なくなっている自治体も少なくありません。具体的な課題は下記の通りです。
・課題1:焼却炉の老朽化・廃炉問題と処理量削減の課題
一般廃棄物の中間処理を担う焼却施設の多くが、耐用年数を超えてなお運用されています。全国の焼却施設約1,130施設のうち、一般的な焼却施設の耐用年数とされる20年を超えた施設は約7割にものぼります。ダイオキシン発生量の規制基準を満たせずに休炉・廃炉となる施設も少なくありません。
一方、新たな焼却炉を建設するためには莫大な費用がかかり、その費用は焼却炉の日量処理能力に比例します。t/日当たりの建設費は平均単価で約5,700万円、100t/日未満の焼却炉では同7,200万円にもなります。安く見積もっても数十億円もの焼却炉の建設費を賄える自治体は限られています。加えて国の脱炭素政策により、環境省が求める焼却炉のダウンサイズ化を達成しなければ、建設費の補助金も満足に得られません。可燃ごみの総量を大幅に削減しなければ、一般廃棄物処理計画は自ずと立ち行かなくなってしまいます。
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・課題2:高齢化と収集困難の課題
一方で、中山間部を中心とした高齢化が進む地域では「ごみ出し難民」と呼ばれる、自力で収集所までごみを出しに行けない人が増えています。結果、戸別収集を検討する必要が高まっています。とはいえ、その数が人口の一定割合に達しなければ、採算を取ることは難しいです。また、収集運搬に係るドライバー等の人手不足も顕在化しつつあります。既存の収集作業に戸別収集を取り込むなど、収集体制自体を抜本的に変えていかなければならない事態も想定されます。
・課題3:焼却処理の課題
一般廃棄物の処理にあたっては、現状では大半の自治体において、焼却処理が行われています。丸ごと燃やされる「可燃ごみ」の約40%が、含水率約80%の生ごみです。これを分別するだけで、焼却から埋立までにかかるエネルギーとCO2排出量を約40%削減できます。同時に、焼却炉新設のイニシャルコストも大幅に削減可能です。つまり「生ごみの分別と資源利用」は、環境負荷とコストの同時低減を実現するダウンサイジングの切り札となりえます。しかし、その実現には「可燃ごみから生ごみを分別する際の各家庭における労力コスト」がネックとなるのです。
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このような地域社会の課題を解決しうる有効な手段としてアミタが活用したのは、下記の2点です。
1. ICTの活用 2. "ごみ出し"という、住民の誰もが日常的に関わる生活行動を通じた「住民の関係性の再構築」 |
アミタグループの「地域デザイン事業」では自治体行政の支援を通じ、この2つの手段を活用した「コミュニティ強化(住民自治機能の再構築)」を目指しています。
次回より、この取り組み事例として、2つの自治体のケースをご紹介いたします。(第2回へ続く)
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