コラム
産業廃棄物マニフェストの返送期限が延長、新型コロナウイルス感染拡大を受け【令和2年廃棄物処理法、特例解説】佐藤泉先生の「廃棄物処理法・環境法はこう読む!」
新型コロナウイルス感染症拡大により、産業廃棄物処理施設の処理能力低下および一定の処理施設への集中が発生しているようです。また、テレワークの推奨を受け、電子および紙マニフェストの担当者の勤務時間や勤務場所が制限されるなどにより、通常業務が困難になるケースも発生しています。
そこで、マニフェストの事務停滞に伴う事業者の混乱および負担を軽減するため、今回「マニフェストの返送期限に関する特例措置」が行われました。詳しく解説します。
※本記事は、2020年5月に執筆した記事を加筆しています
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目次 |
改正の概要(令和2年環境省令第16号、令和2年5月15日公布、産業廃棄物管理票の返送等に関する特例部分)
概要は大きく以下の2点です。
1.産業廃棄物運搬受託者及び処分受託者の排出事業者への返送・登録期間延長 【対象マニフェスト】 【延長内容】 (2)電子マニフェスト(同省令第11条) 【延長内容】 (3)一次マニフェストが紙、二次マニフェストが電子である場合(同省令第12条) 【延長内容】
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2.マニフェストが返送されなかった場合等に、排出事業者等に義務が生じるまでの期間延長(同省令第10条) (2)令和元年10月10日から緊急事態解除宣言日(令和2年5月25日)までの間に交付した紙マニフェスト及び登録した電子マニフェスト 【延長内容】 |
今回の特例では、排出事業者が産業廃棄物を排出する際の、紙マニフェスト交付または電子マニフェスト登録ついては、特例がありません。したがって、通常どおり交付または登録義務がありますので、注意してください。 |
具体事例:処理業者側の義務について
「1. 産業廃棄物運搬受託者及び処分受託者の排出事業者への返送・登録期間延長」について具体事例をもとに見てみましょう。特例の適用は、緊急事態宣言の時期にも左右されます。
従来の返送期限がいつか、運搬または処分を終了した日付がいつかという点を意識して、確認するとよいでしょう。
下記は、処理業者側の義務です。排出事業者は、処理業者からのマニフェスト返送が、通常より遅い場合があることを認識しておきましょう。
事例1.3月30日に排出事業者が産廃を排出し、同時に紙マニフェストを交付して、3月31日に運搬が終了、4月8日に中間処理が終了、4月20日に最終処分が終了、4月28日に紐づけマニフェストが中間処理業者に返送された場合 |
通常運搬又は処分終了又は紐づけマニフェスト受領から10日以内を30日以内に延長
- 運搬受託者のB2票返送期間、通常4月10日までを4月30日までに延長
理由:3月28日~緊急事態解除宣言日(5月25日)までの間に運搬が終了するため - 中間処理業者のD票返送期間、通常4月18日までを5月8日までに延長
理由:3月28日~緊急事態解除宣言日(5月25日)までの間に処分受託者の処分が終了するため - 中間処理業者のE票返送期間、通常5月8日までを5月28日までに延長
理由:3月28日~緊急事態解除宣言日(5月25日)までの間に二次マニフェストの返送を受領するため
事例2.5月22日に排出事業者が産廃を排出し、5月27日に電子マニフェスト登録を行い、5月22日に運搬が終了、5月28日に中間処分が終了、6月5日に最終処分が終了した場合 |
通常運搬又は処分終了から3日以内(休日等を除く)を30日以内に延長
(※延長された30日については、休日等を除かない点に注意)
- 運搬受託者のJWセンター報告期間、通常5月27日までを6月21日までに延長
理由:4月2日~緊急事態解除宣言日(5月25日)までの間に運搬受託者の運搬が終了するため - 中間処理業者のJWセンター報告期間、通常通り6月2日
理由:緊急事態解除宣言日後に処分が終了するため
注意するべき事項
1.処理業者が処理すべき期限
処理業者は、産業廃棄物を適正に処理する義務がありますが、受領してから何日以内に処理しなければならないという、処理そのものの期限はありません。もちろん、一般的には速やかに処理すべきですが、過剰保管にならず、かつ適切に処理をしていれば、処理が遅いということ自体に罰則はありません。乾燥や発酵処理などは、その性質上処理に時間がかかることがあります。処理が終了した時点で、マニフェストの返送等を行う義務が発生します。
2.排出事業者の報告義務
マニフェストの返送等が遅れた場合、排出事業者はなぜマニフェストの返送等が遅れているのか状況を確認し、万一不適切な処理が行われていることを確認した場合には、是正措置をとって紙マニフェストについては様式第四号、電子マニフェストについては様式第五号による報告書を排出場所の管轄行政へ提出する義務があります。この報告書提出は、郵送で問題ありません。
多くの場合、処理業者がマニフェストの返送を忘れていた、または処理業者に適切に保管されていたことが原因のようです。このような場合には、適切な処理を確認の上、生活環境保全上の支障は発生していないので、特段の措置は講じなかった旨記載し、提出すれば足ります。
万一、処理業者が倒産していた、または不適切な処理をしていたことが発覚した場合には、残された廃棄物を引き取るか他の業者に委託するなど、適切な措置を講じ、その結果を報告書に記載して行政に提出するべきです。
排出事業者の報告義務には罰則規定がありません。しかし、報告を行わない場合には、後日原状回復等の措置を命じられるおそれがありますので、きちんとした対応をすることが重要です。
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執筆者プロフィール
佐藤 泉(さとう いずみ)氏
佐藤泉法律事務所 弁護士
環境関連法を主な専門とする。特に、企業の廃棄物処理法、土壌汚染対策法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等に関連したコンプライアンス体制の構築、紛争の予防及び解決、契約書作成の支援等を実施。著書は「廃棄物処理法重点整理」(TAC出版)など
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