コラム
エシカルワーク 〜鍵となる「ダイバーシティ&インクルージョン」〜今さら聞けない、そもそもなぜ今エシカルなの?を徹底解説!
前回まで「エシカルなお金の使い方」についてご紹介をしてきましたが、そもそも私たちがエシカルにお金を使うためには、そのためのお金が必要です。このお金を持つための主要な手段の一つに「働く」があります。
せっかくエシカルなお金の使い方をするのであれば、それを得るための「働くもエシカルでありたい」。こんなことを考えたりはしないでしょうか。エシカルに働いて得ることができたお金をエシカルに使うということです。そこで第5回目のコラムでは「エシカルに働く」を「エシカルワーク」として、事例を交えながら考え方などをご紹介していきたいと思います。
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「エシカルワーク」って何?
エシカルワークは「働く」にエシカルの考え方を適応させたもので「人、地球環境、社会を大切に配慮した働き方」ということです。
例えば、前回のコラムでご紹介した「株式会社かわた」のように「エシカルな事業」を行っている会社で働くことはエシカルワークの代表格と言えます。また「エシカルなオフィス環境」が整えられている「ダイヤモンドヘッド株式会社」のような場所で働くこともエシカルワークと言えるでしょう。
2018年6月に「働き方改革関連法」が成立しました。働き方改革は長時間労働の解消、非正規社員と正社員の格差是正、高齢者の就労促進を図ることによって、働き手を増やし、出生率や労働生産性を向上させることを目指すものです。つまり、働き方改革とは労働力不足を解消して経済成長を果たすことを目的としているものになります。
しかし、その根本を考えると、経済成長の本質的な目的は、民間にしても公務にしても「働く人の幸せ」にあると思います。ですから、働く人の「働きやすさ」や「働きがい」に配慮がされている環境で働くこと、あるいはそのような環境を作りあげていくことも「エシカルワーク」になると考えています。
多様な人材が互いの違いを受け入れ、活かしあう「ダイバーシティ&インクルージョン」
昨今、多くの企業において、人口減少による労働力不足、働く側の価値観の変化、消費者ニーズの変化に対応し、国内市場および国外市場において競争力を維持して持続的に発展していくためには、経営戦略として「ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)」の推進に本格的に取り組む必要性があると言われています。
D&Iとは「多様な人材が互いの違いを受け入れ、活かしあいながら、それぞれに実力を発揮できる職場のあり方を目指す」ものです。「多様な人材が互いの違いを受け入れ、活かしあう」は、働く人を配慮するエシカルの考え方とリンクするため、D&Iを本格的に進める企業で働くことは「エシカルワーク」になるのだと思います。
例えば、浜松市にある大手IT企業の子会社(特例子会社)が同市の農家と連携して農作業を請け負っているといった事例があります。同社は農作業の工程を分解して効率を上げつつ障害者の雇用を生み出し、ITを活用することで名刺作りやデータ入力などのオフィス業務も行っており障害者の活躍の場を広げています。
また、京都市役所近くにある靴磨き専門店では、知的障害や発達障害のある若者らが店長や職人として働いています。社員で企業へ出向き靴を磨く訪問靴磨きは、これまで30社以上からの注文があり一度に70足もの靴を任されたこともあるそうです。
さらに、現在新型コロナウイルスの影響でリモートワークが急速に進んでいますが、これは何らかの理由で自宅にいざるをえなかった人たちの雇用機会につながっていくはずです。企業は人材採用をオフィスと所在地を切り離してできるようになるため、働き方はこの先、よりD&Iが推進されていくと考えています。
働く人の健康と幸福に重きを置く「ウェルビーイング」
「ウェルビーイング」はもともと、社会福祉の領域で使われてきた言葉ですが、今ではビジネスの世界で用いられる機会が増えています。ウェルビーイングとは直訳すると「良好な状態、よきあり方」ですが、辞書には「健康、幸せ、福祉」などと訳されています。体の良い状態が健康、心の良い状態が幸福ですから、ウェルビーイングは「心と体の両方が良い状態であること」を示していると言えます。
ウェルビーイングは、社員の仕事へのモチベーションやメンタルヘルス、企業への愛情といったものまで含めるため、身体的な健康面を重点においた「健康経営」の考え方をさらに推し進めます。このようなことから、企業がウェルビーイングを取り入れることは、働く人を配慮する考え方であるため「エシカルワーク」になると考えています。そして、ウェルビーイングの考え方が導入された企業で働くことは「エシカルワーク」になると思います。
例えば、ある半導体装置メーカーは2011年から「社内通貨制度」を取り入れ、働き方改革を進めています。社内のあらゆる仕事や物事に社内通貨を用いた金額が設定されており、仕事をすればその分が収入として、社内リソースを使用すればその分が支出として計上されるため、従業員はそれぞれ自分の「社内通貨口座の採算」を意識しながら働いています。仕事も物事もすべてのタスクが「オークション」によって売り出されるため、従業員は自分がやりたいタスクを社内通貨で落札しています。
やりがいのある仕事を希望する従業員はあえて高い金額の仕事に挑戦し、逆に、子育て中などで時間内に仕事を終えたい従業員は、終わる時間の読みやすい仕事を優先して落札しています。また、終わらない仕事に関しては、他の従業員に社内通貨制度を支払ってお願いする人もいるとのことです。
この企業ではその人それぞれのライフスタイルや能力に応じて「働き方を自由に選ぶ」ことができるといえます。ウェルビーイングを仕組みによって推進している良い事例だと思います。
このように、ウェルビーイングを取り入れることは、経営サイドにとっても、従業員サイドにとってもメリットが大きいため、今後さらに多くの企業が取り入れていくはずです。
次回の最終回のコラムのテーマは「アフターコロナ~エシカルのこれから~」です。
執筆者プロフィール
田中 新吾(たなか しんご)氏
一般社団法人ECEF
代表理事
中央大学理工学部卒業後、マーケティング会社でキャリアを積み、現在はコミュニケーションデザインという領域で活動しているコミュニケーション・ディレクター。ECEFでは埼玉県を拠点にして企業や自治体のエシカルな事業のサポートや企画の立案実装を行なっている。エシカルコンシェルジュ。NPO法人地球のしごと大學の副理事長も務める。
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