コラム
「掘削廃棄物」「工事に伴う廃棄物」は、誰がどのように処理すればいいのか?BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」
元・行政担当者、BUNさんによる廃棄物管理解説コラム。アミタ社員が、廃棄物管理に関する素朴な疑問をBUNさんにお尋ねしていきます。今回は、「掘削廃棄物」「工事に伴う廃棄物」の排出事業者責任についてです。
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Image by Bruno Germany from Pixabay
Q. 工場の敷地を掘削したら、がれき類が出てきました。どうしたらよいでしょうか?
アミタ石田:何とも漠然とした質問ですが、BUNさん、どうしたらいいんでしょう?
BUN:なかなか大勢の前では言いにくいことですが、掘削したから出てきたんですよね。出て困るのであれば、そっとしておけばよかったんじゃないですか?
アミタ石田:え!?それは犯罪、不法投棄にはならないのですか?
BUN:実はそうでもないのです。「廃棄物」を規制する法律は廃棄物処理法ですが、この法律が施行されたのは昭和46年からです。それ以前も清掃法や汚物掃除法といった法律はあったのですが、私が調べた限りでは「廃棄物」という言葉は昭和40年の広辞苑にはまだ登場していないんです。(「廃棄する」という言葉は載っています)。このことからも推察されると思うのですが「汚物」や「有害物」という概念は古くからあったようなのですが「廃棄物」という概念が出てきたのはたかだかここ半世紀位なんです。
アミタ石田:そのことと今回の質問はどう結びつくのですか?
BUN:人間は太古の昔から「ごみ」は排出していた訳で、その一つが貝塚です。時代は下りますが、関東大震災や空襲などでは大量のがれき類が出ました。今でこそ「災害廃棄物も適正処理」という時代になりましたが、ちょっと前までは災害が起きれば、土の中に埋まったままの場所も数多くあります。
だから、その辺の土地でも多少深く掘れば、かれきが出てくるなどということはよくあることなのです。
アミタ石田:そういう土地なら「そっとしておけば、そのまま」ってことになるという意味なのですね。でも、今回の質問は、おそらく増設工事等で敷地を掘削しなければならなくなったんでしょうね。その場合は「どうしたらいいですか?」
掘削廃棄物は誰が排出事業者になる?
BUN:廃棄物処理法に関する事案の時は、まずは「適正に処理するにはどうすればよいか」、それを検討するためには、やはり常に「誰がやるべきか」、すなわち「排出者は誰か」ってことからでしょうね。
アミタ石田:では、掘削して出てきた廃棄物の排出者は誰でしょうか?
BUN:それは掘削工事を行った元請業者です。実はこの掘削廃棄物については古い昭和56年の疑義応答があり「掘削廃棄物の排出者は当該工事を行った者である」旨を記載しているんです。
さらに、平成22年の改正で第21条の3第1項が出来て、建設系廃棄物の排出者は工事の元請と規定しています。よって、現在では「原則的には、掘削廃棄物の排出者は掘削工事を請け負った元請業者」ということになるでしょうね。
アミタ石田:なるほど。でも、BUNさん、掘削廃棄物ってどの程度出てくるか掘ってみないとわからないって要素が多いと思うんです。そんな状態で全て工事業者に任せていいんでしょうか?土地の所有者や発注者は何にもしなくていいんでしょうか?
BUN:「排出者処理責任」と「経費負担を誰が負うか」は必ずしも一致したものではありません。通常の解体工事でも、解体から出てくる廃棄物の処理経費を見込んで、解体業者は発注者に経費を請求しているでしょ。掘削廃棄物に関しても、必要経費は負担するべき人が負うことになるんでしょうね。
「原則的には元請業者」の例外とは?
アミタ石田:あと1点。先ほどBUNさんは「原則的には元請業者」という表現を使いましたよね。ということは「原則を外れるようなケースもある」のでしょうか?
BUN:前述の通り現在は第21条の3という条項がありますから、「建設工事」という概念に当てはまるようなら元請でしょう。しかし「建設工事」とは言い難い状況。たとえば「ここは元々我が社のミニ処分場だったので、40年前の我が社の廃棄物が埋まっているのだが掘り返して欲しい」というようなケースでは、本来の排出者が明確にわかっているだけに、その人物が排出者であるとすることも可能だと思います。
アミタ石田:確かにそうですよね。不法投棄した人物がわかっていて、その不法投棄された廃棄物を、行政や警察に頼まれて掘り起こしたら「掘り起こしたあなたの廃棄物です」って言われたら困りますよね。
BUN:実は廃棄物処理法では「事業者」という文言は度々登場するのですが「排出者」という文言は条文には一度も出てこないんです。そのため「排出者処理責任」と言われても「その排出者ってだれなんだ」ってケースは度々起きることなんです。
アミタ石田:どう判断すればいいんですか?
BUN:法律の条文には登場しないのですが、平成5年に東京高裁で出された判決文(この裁判は廃棄物処理業界では有名な「フジコー裁判」として知られています。)の趣旨から「排出者とは一塊、一括の仕事を支配管理できる存在」とされています。
アミタ石田:それもまた抽象的でわかりにくいですね。
BUN:結局、掘削廃棄物は原則的には掘削した人に適正処理する責任がある。経費負担については、関係者で協議して決めればよい。当然、土地の所有者もそれなりの責任のある行動をとる必要があるということですね。
アミタ石田:なるほど、今回も勉強になりました。ありがとうございました。
講師プロフィール(執筆時点)
長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。
聞き手プロフィール(執筆時点)
石田 みずき(いしだ みずき)
アミタ株式会社
サステナビリティ・デザイングループ マーケティングチーム
滋賀県立大学環境科学部を卒業後、アミタに入社。メールマガジンの発信、ウェブサイトの運営など、お役立ち情報の発信を担当。おしえて!アミタさんへの情熱は人一倍熱い。
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