コラム
エシカルとは?なぜ今エシカルなのか?今さら聞けない、そもそもなぜ今エシカルなの?を徹底解説!
2015年に国際連合が定めたSDGs(持続可能な開発目標)に私たちが貢献していく手段として「エシカル消費」というものがありますが、ニュースやSNS上で最近この言葉を見聞きすることが増えてきたように思います。
今回は、エシカル(倫理的)な選択をする人が増えるように活動し、社会課題の解決を目的に行う事業や組織を応援している一般社団法人ECEF(いーせふ)の代表理事 田中新吾様に、エシカルの定義や潮流などについて連載していただきます。
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Photo by Gerd Altmann From Pixabay
エシカルはエコやロハスよりも上位の概念
そもそもエシカル(ethical)とは、日本語に直訳すると「倫理的な」あるいは「道徳的上の」という意味の形容詞になります。ちなみにエシカルの名詞形はエシック(ethic)で倫理・道徳という意味です。「倫理的な」と耳にすると、少々硬さを感じるかもしれませんが、平易に言うと「人間の良心にしたがって考えてみよう」と解釈することができます。今現在はさらに進んで「人、地球環境、社会を大切にする気持ちや考え方および行動」がエシカルであるとして、私たちが暮らす社会のあちこちに拡がってきています。
エシカルと似たような言葉に「エコ」や「ロハス」があります。エコ(ECO)は生態学を意味するエコロジー(ecology)の略語ですが、今は「環境への負荷を減らす」や「地球に優しい」など、もともとの意味よりも広義な意味で使われています。また一方で「節約」や「経済的な」という意味のエコノミー(economy)の略語として使われる場合も増えました。例えば、自動車や家電製品の「エコモード」などはそれを使うことでエネルギーの消費を抑えられるため、その結果として環境に良いと言われています。日本語としてもうすっかり定着したエコ(ECO)という言葉ですが、盛んに使われるようになったのは2000年ごろだと言われています。
ロハス(LoHaS)は「Lifestyle of Health and Sustainability」の頭文字をつなげた略語で、直訳すると「健康で持続可能な生活様式」という意味になります。これを平易にした「健康と環境に意識の高いライフスタイル」が私たちが知っているロハスではないでしょうか。この言葉の起源を探ると一人のアメリカ人に辿り着きます。へンリー・ディヴィット・ソロー(1817年7月12日 - 1862年5月6日)という思想家です。ソローには「人間は自由に生きる為にはできるだけ簡素に暮らし、生活を小さくする必要がある」という考えがあり、これを「Lifestyle of Health and Sustainability」として唱えたと言われています。日本では2004年頃からメディアがロハスを紹介しはじめるようになり、世間が注目し広まったと言われています。
環境に良い選択をするというエコ、健康と環境について意識を高く生活をするロハス、そして、人、地球環境、社会を大切にする気持ちや考え方および行動を指すエシカル。このように一つ一つの意味を確認すると、エコもロハスもエシカルの中に含まれていることに気づきます。つまりエシカルは、エコやロハスからさらに視野を広げた上位の概念と言えるのです。
なぜいまエシカルなのか?
「エシカル」のはじまりは産業革命や経済学と同じくイギリスです。「ethical consumer」という1989年に創刊された雑誌がきっかけになったと言われています。この雑誌が独自に定めたエシカル度を測る「エシスコア(商品力ではなくエシカル度で評価する基準)」などによって、イギリス国内中心に「エシカル」が広がりを見せるなか、1997年に当時のブレア首相が議会で国際外交について「エシカルが大事」という発言をしたことで、この言葉が世界中に波及していったそうです。
あらためて言うまでもないと思いますが、今現在地球上のいたるところに課題が存在しています。それは生物多様性の損失、途上国における労働搾取や児童労働、気候変動、資源不足、食糧危機、貧困といったように広範で枚挙にいとまがありません。いずれも深刻な問題であるために世界規模での対策が急務となっている状況です。これがまとめられたものがSDGsです。そして、こうした課題を解決していくために「エシカル」に注目が集まっているのだと思います。地球が抱えている課題を解決に導く一端を、私たち一人一人が担うための有効な手段が「エシカル」だからです。
企業にとってエシカルとは?
企業には事業を継続することと、それを持続的に成長させるという重大なミッションがあります。そのために一番大切なことは「現代社会からの期待や要請へ対応していくこと」です。そして「企業の社会的責任」として広く認知されているCSRの「本質」が実はここにあります。
CSR元年は2003年と言われていますが、まだまだ「本業とは関係のない社会貢献」という認識が多いように思います。しかしながら「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとったCSRは、Responsibility(責任)をResponse(応答)+ Ability(能力)で考える「社会への対応力」がその本質になります。だからこそ、CSRは「社会(時代の価値観を反映したステークホルダー)の変化を認識すること」を基点として、社会と共に新しい価値を提案し、新しい市場を創造し、現代社会の要請や期待に応えていくことで信頼や支持を獲得していく企業競争力の原動力になります。ですから、本来は「経営戦略の中核」に位置付けていくべきものなのです。
このようにCSRをとらえると「SDGs」や「エシカル」との関係性も自ずと見えてきます。「サステナビリティ」に対する目標がまとめられたSDGsは、現代社会からの期待や要請そのものです。そして「人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動」であるエシカルは、CSRの本質を捉えた考え方や行動であり、SDGsに貢献していくものになります。
2018年7月に発表されたスターバックスのプラスチック製ストローの廃止宣言をはじめとして、三菱UFJ銀行の紙通帳廃止、ユニクロが2020年までに店頭での使い捨てプラスチック包装を85%削減するなど、エシカルな行動に舵を切る企業が増えてきました。このようなエシカルな行動は着実にCSRを磨きます。これからはこういった企業事例も参考にしてより多くの企業がエシカルな行動を取る「エシカルカンパニー」に変化していく時代になるはずです。
次回は、拡がる「エシカル消費」として用語の解説や事例をご紹介していきます。
参考情報
執筆者プロフィール
田中 新吾(たなか しんご)氏
一般社団法人ECEF
代表理事
中央大学理工学部卒業後、マーケティング会社でキャリアを積み、現在はコミュニケーションデザインという領域で活動しているコミュニケーション・ディレクター。ECEFでは埼玉県を拠点にして企業や自治体のエシカルな事業のサポートや企画の立案実装を行なっている。エシカルコンシェルジュ。NPO法人地球のしごと大學の副理事長も務める。
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