コラム
廃プラスチック類の日本国内における年間排出量と処理能力は?BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」
2017年末の中国の廃プラスチック類輸出禁止以来「廃プラスチック類の処理は今後どうなるのか?」「日本国内で処理困難に陥るのでは?」という質問をよくお聞きします。
今回は、廃プラスチック類の年間排出量や国内の処理の動向について、BUNさんが解説します。
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目次 |
廃プラスチック類の年間排出量は?680万t 一人当たり1日約155g
廃プラスチック類は日本でどの程度排出されているのか。環境省が毎年発表している廃棄物処理統計の最新情報では、平成29年度実績(2017年)で、1年間で約680万tとの結果でした。「何百万t」「何億t」と言われるとなかなか感覚的には実感できないので、私はいつもこれを人口割りで説明しています。
680万tを1億2千万人で割り、1年365日で割ると、下記になります。
▼廃プラスチック類の1人当たり1日の排出量
680万t÷1億2千万人÷365日=約155g |
出典:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等」
りんご半分程度、これが廃プラスチック類の排出量です。「たったこれだけか」と思うか「こんなに出ているのか」と思うかは、人それぞれであると思いますが、このように数字で確認することはとても重要なことだと私は考えています。
ただし、今後は"産業廃棄物"としての廃プラスチック類が増加?
ところが、今回の課題はこの680万tの廃プラスチック類だけを検討すればよいというものではありません。上記はあくまで産業廃棄物の排出量であり、今まで有価物として扱われていた量は含まれていません。
そして、2018年は、廃棄物である廃プラスチック類は輸出されていません。環境省の発表より、平成30年(2018年)における廃棄物の輸出の状況について、現在、産業廃棄物の輸出として確認※されているのは「全て石炭灰」であることが公表されています。
(※現在、産業廃棄物を輸出するときは、環境大臣の「確認」を受けなければなりません。「確認」は、行政法上は「許可」とは違いますが、実質上「許可」と思っていただいて結構です。)
参考情報:環境省「廃棄物処理法に基づく廃棄物の輸出確認及び輸入許可(平成30年)について」
関連記事:環境省が語る!廃プラスチックの今後の方向性
一方で、環境省によれば、同年2018年に国外に輸出された「プラスチックくず」は、約100万tとなります。これらは、廃棄物ではなく有価物として、輸出されていると考えられます。しかし、各国政府が廃プラスチック類の輸入規制を実施したり、検討したりしていることから、これまで有価物扱いされてきたものも、廃棄物として扱われるようになる可能性があります。これらの100万tの今後についても検討が必要です。なお、財務省貿易統計の公表値によると、2019年1月から8月までの「プラスチックくず」の輸出量は約59万tのため、依然として国外への輸出は続けられていることがわかります。しかし、輸出先の上位は2017年に全体の半数以上を占めていた中国ではなく、マレーシア(27%)、台湾(18%)、タイ(13%)となっています。
廃プラスチック類の国内における年間の処理能力は?
次に気になるのが、現在の日本国内の廃プラスチック類の「処理能力」はどれ程あるのだろうかという点です。これも毎年発表される環境省の統計数値を利用して検討できます。
産業廃棄物許可処理移設数に関するデータの最新情報から、2017年4月時点の廃プラスチック類に関する施設数は下記となります。
施設名称 | 施設数 |
廃プラスチック類破砕施設 | 2,005施設 |
焼却施設 | 715施設 |
出典:環境省「産業廃棄物行政組織等調査報告書平成28年度実績」(2019年3月発表)
廃プラスチック類の破砕施設は5t/日以上が許可対象であることから、これらの処理施設の処理対象量は次のように推察できます。
▼破砕施設の処理能力
5t×2,005施設=約1万t(年間300日稼働とすれば、約300万t以上の処理能力あり) |
焼却施設については、許可対象は100kg/日ですが、現実には10t/日程度とすると下記の計算となります。
▼焼却施設の処理能力
10t×715施設=約7,150t(年間300日稼働とすれば、約215万t程度の処理能力あり) |
合計すると515万tとなります。(なお、破砕された後、有価物ではなく、焼却処理や埋め立て処理となるものもあります。)これらについては、環境省が処理設備の補助制度や廃棄物保管上限の一部引き上げを実施しています。
まとめ:行き場を失った廃プラスチック類は、処理困難に陥るのか?
結論から言えば、私は「当面は処理困難に陥ることはない」と思います。いくつか理由がありますが、主な理由は下記となります。
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リサイクルでの処理の場合は、再生資源の需要がどのくらいあるかによって、受け入れが可能な量が左右されます。そのため、リサイクルの処理受け入れ先がなかった場合は、やむを得ず焼却や埋め立てに回るという見解です。廃プラスチック類は安定型最終処分場で処分することも可能であり、汚れが付着したような状態でも(有害物が付着していなければ)管理型最終処分場で処分が可能です。(リサイクル率向上の視点からは、課題と感じますが、現実的には処理困難になった場合、そのような流れになると考えます。)
また、前述の通り、海外への輸出が、2019年時点でも続いています。ただし、中国に代わる輸出先となっている、マレーシアやタイでも規制の検討が進められていますので、根本的な問題解決が必要という状況は依然として変わりません。また、処理困難には陥らなくとも、処理料金は確実に値上がりすると思われます。
関連記事:2019年 東南アジアの廃プラスチック類輸入規制の最新動向は?
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執筆者プロフィール(執筆時点)
長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。
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