コラム
廃棄物処理法はこうやって学ぶ!:その1基礎知識の復習 BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」
これまでのコラムとは少し路線が違うかも知れませんが、これから数回にわたり「BUNさん流、廃棄物処理法の学び方」について述べていきたいと思います。新任担当者の方や、教育を担当される立場の方の参考になればと思います。あくまでも「学び方」であり、廃棄物処理法そのものの話はあまり登場しないかもしれません。それについては紹介する文献等で改めて勉強してください。
Some rights reserved by PlusLexia.com
目次 |
本コラムの一覧はこちら
覚えておきたい!廃棄物処理法3つの基礎要素とは?
さて、廃棄物処理法の理解度の「需要」は、人によって異なると思います。差しあたって、マニフェストの集計だけすればよい方もいれば、本社の環境部門にいて、何カ所もの事業所の廃棄物の管理を担当している方もいるでしょう。
しかし、どんな立場の方でも、私はまずは「廃棄物処理法の3要素(私が命名。皆が言っている訳ではありません。)」を覚えて欲しいとお話ししています。「廃棄物処理法の3要素」というのは、「物の区分」「業の許可制度」「排出者」の3つです。
廃棄物処理法のセミナーというとすぐに「委託契約書、マニフェスト」がテーマという方がいらっしゃいますが、少し立ち止まって考えてみてください。
「無許可業者と委託契約書を締結して意味がありますか?」「排出者でもない人物がマニフェストを交付するのですか?」「一般廃棄物なのに産業廃棄物業者に頼めますか?」
回り道をしているように感じるかも知れませんが、上記の事態に陥らないように、廃棄物処理法に携わる人は、まずは3要素について勉強しましょう。
「物の区分」について
「物」は廃棄物処理法の観点から区分すれば、まずは大きく「有価物」と「廃棄物」に分かれます。一般的には、人が金を出して買ってくれる物が「有価物」。逆に処理料金を支払わないと持って行ってくれない物は「廃棄物」として扱われています。しかし、売った、買っただけでは解決できないグレーゾーンが存在してきます。その典型的な例が「0円取引」です。「タダだったら持って行ってやるよ」という物は、はたして有価物なのか廃棄物なのか。売った買ったという要因だけでは判断ができません。そこで「物が有価物か廃棄物かは総合的に判断する」というのが定説です。
これを総合判断説といい、その要因として「物の性状」「排出の状況」「通常の取扱い形態」「取引価値の有無」「占有者の意志」の5つの要素、プラスαを総合的に勘案して、はじめて物が有価物か廃棄物か判断できる、というものです。
次に「物」は廃棄物として、さらに一般廃棄物と産業廃棄物に分かれます。産業廃棄物はさらに20種に種類分けされ、原則的にはこの種類毎に許可を出しています。また「特別管理」という、特に注意をして扱わなければならないという「物」もあります。「物の区分」については、特に「事業系一般廃棄物」という「事業活動を伴っていても一般廃棄物となるものもある」ので注意しなければなりません。
図:「物の区分」について
(画像はクリックすると拡大します)
「業の許可制度」について
上述のように、廃棄物はいくつかの区分に分けられ、それに伴って「処理業の許可」もいくつかの区分に分かれています。また「業許可」は、さらに「どんなことができるか(行為の区分)」ということでも区分されています。具体的には、運搬するだけの「収集運搬業」と、中間処理・最終処分という「処分業」の許可です。
「物の区分」と「行為の区分」の組み合わせで、業許可は次の6通りとなっています。
▼業許可の組み合わせ
(1)一般廃棄物の収集運搬業 (2)一般廃棄物の処分業 (3)普通の産業廃棄物の収集運搬業 (4)普通の産業廃棄物の処分業 (5)特別管理産業廃棄物の収集運搬業 (6)特別管理産業廃棄物の処分業 |
なお、特別管理一般廃棄物の業許可は種々の事情により想定されていません。これらの詳細については、拙著「土日で入門、廃棄物処理法」などを参照してください。
このように、廃棄物処理の許可は一つでなく、廃棄物の区分毎に許可も分かれています。いくら一般廃棄物処理業の許可を持っていたとしても産業廃棄物を扱えば、無許可になる訳です。
「無許可」は、廃棄物処理法の中では最も重い罰則である「最高刑懲役5年」が規定されています。(正確に言えば「5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金、又はその併科」なので、私は簡略化して<最高刑懲役5年>とお伝えしています。)
ちなみに、マニフェストに関する違反は直近の廃棄物処理法改正(平成29年改正)で罰則を倍に上げましたが、それでも最高刑懲役1年です。無許可という行為が法令では、どれ程重大なこととして捉えられているか、わかっていただけるかと思います。以上のことから「業の許可制度」をしっかりと押さえましょう。
「排出者」について
「排出者責任」という言葉を耳にした方も多いと思います。しかしながら、実は廃棄物処理法では「事業者」という文言は度々登場しますが「排出者」というのは定義していないのです。これには様々な事情があるものと思います。大抵の条文では「事業者」という文言を「排出者」に置き換えて読んでもいいと思いますが、条項によっては「事業者」を「生産者」「販売者」という趣旨で使っているときもありますので、注意してください。法律の条項では「排出者」を定義していないために、時折「排出者責任が誰にあるのか」等、課題になるときがあります。
そこで、過去のある裁判の判決の趣旨から「排出者とは一括、一塊の仕事を支配、管理できる存在」とするのが定説となっています。これもなかなか抽象的で難しいなぁと感じています。
最後に 廃棄物処理法は「基礎」が脆弱
実は、廃棄物処理法というのは「おかしい」といいますか「変わった」といいますか、他のルールや理論にはあまり見られない面があるなぁと感じています。それはなにかと言いますと、大抵の理論やルールは、基礎知識は簡単で感覚的にもわかりやすいんですね。応用になったとしても、その基礎知識を土台にして複雑な理論構成から成り立っている。例えば数学でも1+2=3、2×3=2+2+2=6、そしてこれが微積分、指数計算のようになっていきますから、積分でわからなくなったら、掛け算に戻り、掛け算でわからなければ足し算に戻って理論を確認していく。
ところが、廃棄物処理法では、応用である委託契約書やマニフェストというのは、えらく、細かく、詳細に規定しているのに、それを構成している基本的な要素である「物の区分」や「排出者」は極めてあいまいな規定の仕方をしているのです。だから、廃棄物処理法は勉強すれば勉強するほど、訳がわからなくなってしまう、泥沼に入り込んでしまうって感じになるんですね。
まぁ、これは私の個人的な感覚に過ぎませんが「その1基礎知識の復習」のまとめにかえさせていただきます。次回は「三段対照法令集」について解説します。
関連情報
執筆者プロフィール(執筆時点)
長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。
おすすめ情報
お役立ち資料・セミナーアーカイブ一覧
- なぜESG経営への移行が求められているの?
- サーキュラーエコノミーの成功事例が知りたい
- 脱炭素移行における戦略策定時のポイントは?
- アミタのサービスを詳しく知りたい
アミタでは、上記のようなお悩みを解決するダウンロード
資料やセミナー動画をご用意しております。
是非、ご覧ください。