コラム
中越パルプ工業の竹紙|全国的に増加する放置林を救う鍵サステイナブル コミュニティ デザイン ~2030年に向けた行政・企業・住民の連携~
人類は気候変動・資源枯渇・人口増加という未体験の環境下に向かっています。また、日本は、少子高齢化・労働人口減少・税収減少などで、今のしくみでは社会インフラの提供が難しい状況を迎えつつあります。そのような中で、持続可能な社会・コミュニティ デザインを行政・企業・住民の連携でどのように作っていくのかは、非常に重要なテーマです。
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そこで本コラムでは、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長の泊みゆき氏に、サステイナブル コミュニティ デザインについて、参考事例などを交えて連載していただきます。最終回は、民間企業の地元連携の事例として中越パルプ工業の竹紙についてご紹介します。
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経済採算の鍵は集積システムの構築
全国に放置竹林が広がり、地域の竹資源の利用をしたいという声が上がっています。しかし、経済的に成立している例は少ないです。そうしたなかでひときわ注目されるのが、中越パルプ工業の竹紙です。
竹林面積全国第一位の鹿児島をはじめ、九州の竹林は全国の4割を占めます。鹿児島県薩摩川内市に工場がある同社は、間伐された竹の利用を地元から打診され、地域貢献の一環として1998年から竹紙の取り組みを始めました。(写真 伐採した竹を軽トラなどでチップ工場へ運ぶ 同社HPより)
地域の未利用バイオマス資源を利用する際の大きな課題は、収集方法です。産業利用のためには一定量が集まらないと利用しにくいためです。中でも竹の利用は、林地残材以上に難しく、その理由の一つは、中が空洞なので木材に比べて運搬効率などが悪いことです。そこで同社は、タケノコ農家やチップ工場の協力を得ながら試行錯誤を重ね、竹の集積システムを構築しました。(写真 竹チップとなり、中越パルプ工業の製紙工場へ運ばれる|同社HPより)
農家などが畑に行ったついでなどに竹を伐採し、同社と提携するチップ工場に持ち込めば、広葉樹と同様の価格で買い取られます。チップ工場では一定量の竹が集まると、チップ化し、同社の製紙工場に運びます。(写真 川内工場竹紙抄造|同社提供)
混合竹紙を作ることで供給量の変動にも対応
同社では竹100%の紙だけでなく、通常の紙に竹を数%混合させる紙も製造しています。これにより、竹の調達量が増減した際でも、利用量の調整が可能です。製紙原料を作るチップ工場に対しては、広葉樹より硬い竹を使うため、刃を取り換えてもらいましたが、その他は付加コストがかかりません。担当者が地域の人から竹の利用について相談を受けたことから始まったこのプロジェクトでしたが、通常の原料調達フローに組み込めたため、業績に関わりなく、無理なく事業として継続が可能になりました。(採用事例|画像はクリックすると拡大します。)
2009年に生産を始めた国産竹100%の紙は、強度があり、独特の風合いがあります。折り紙、短冊、ノート、書籍、雑誌、封筒のほか、カレンダーやノベルティグッズなど多様な製品を生産しています。この取り組みへの対外的な評価は高く、過去に、エコプロダクツ大賞農林水産大臣賞(2011年)、生物多様性日本アワード優秀賞(2013年)、グリーン購入大賞(同年)など、数々の賞を受賞しています。(写真 竹紙灯ろう|同社提供)
また、同社の竹紙をより多くの人に伝え、社会的課題の解決に向けて自ら行動を起こす人が増えることをめざす「MEETS TAKEGAMI」の取り組みを続けています。地域資源の活用を、いかに事業の中に組み込むか。中越パルプ工業の竹紙は、その重要な成功例と言えるでしょう。
執筆者プロフィール(執筆時点)
泊 みゆき(とまり みゆき)氏
NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長
京都府京丹後市出身。大手シンクタンクで10年以上、環境問題、社会問題についてのリサーチに携わる。2001年退職。1999年、BINを設立、共同代表に就任。2004年、NPO法人取得にともない、理事長に就任。
NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク:http://www.npobin.net/
■主な著書・共著
『アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ [環境ビジネス+社会開発]最前線』(築地書館)
『バイオマス産業社会 「生物資源(バイオマス)」利用の基礎知識』(築地書館)
『バイオマス本当の話 持続可能な社会に向けて』(築地書館)
『地域の力で自然エネルギー!』(岩波ブックレット、共著)
『草と木のバイオマス』(朝日新聞社、共著)
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