コラム
ガラスびん|リユースびんで新たなライフスタイルも体現できる? 企業・地域を変える!?「ゼロ・ウェイスト」の可能性
ごみはすべての人に関わりがある事柄といって過言ではありません。そして今までは、個人、自治体、企業にとって、できるだけコストと労力を割きたくない事象でもありました。しかし今、この「ごみ」が、世界の資源枯渇・生態系破壊などの環境問題への意識の高まりと共に、可能性ある資源として注目されています。また、コミュニティ内すべての構成員が関わる共通課題として、まちづくりへの参画を促すきっかけとしても注目されています。
Some rights reserved by chrisoakl
本コラムでは、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、徹底資源化を実施している徳島県上勝町での実績がある特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーの理事長 坂野 晶様に「ゼロ・ウェイスト」の可能性と、具体的な進め方について連載していただきます。 ここまでは、生ごみと紙について取り上げてきました。今回は「ガラスびん」です!
本コラム一覧はこちら
びんからびんへ。ガラスびんはリサイクル優等生
全国の自治体において分別収集され、リサイクルされた一般廃棄物のうち、ガラス類が占める割合は11.6%です。これは、前回紹介した紙類の約27%に次いで、非常に重量のある金属類(11.8%)と同等の2位なのです。ちなみに、ガラスびん以外のガラス類の分別回収を行っている自治体は非常に少数のため、この「ガラス類」は基本的にほぼガラスびんと同義と捉えられます。ガラスは素材として重量があり、重さで計算する廃棄物の割合では上位にランクインするのも納得ですが、それだけではない、非常にリサイクルの優等生でもある・・そんなガラスびんのあれこれを今回はご紹介します。
ガラスびんのリサイクル率は、69.2%(2017年)と優秀です。しかし、もっと注目すべきは「びんtoびん率」、つまりガラスびんをリサイクルして、再びガラスびんとして再生した率です。なんと堂々の82.3%(2017年)。これは、回収したガラスびんのうち、異物を除去し、再度資源として活用できるようにしたものの中で、ガラスびん以外の用途となったものを除いた割合です。
ガラスは本来、けい砂、石灰石、ソーダ灰などから作られますが、ガラス溶解の過程に多くのエネルギーを消費します。そのため、すでにガラスびんの前段階であるカレットという状態になったものを、何度も繰り返しリサイクルして再生し続けると、天然資源を新たに使わずに済むだけでなく、実はエネルギー利用も少なくて済むのです。一般にガラス量に対するカレットの使用比率を10%増加させると、ガラス溶解に必要なエネルギーを約2.5%抑えることが出来るそうです。ガラスびんの中にはラベルに「エコロジーボトル」と記載があるものがあり、それらはなんと90%以上リサイクルされたカレットを使用して作られたびんです。ぜひ買い物の際にはマークをチェックしてみたいですね。(出典:日本ガラスびん協会)
そんなガラスびんのリサイクルは、他の素材のリサイクルに先駆けて1970年代に始まりました。それまではガラスびんは繰り返し使われるのが普通でした(!)が、ライフスタイルの変化から、使い捨てされるようになったことがきっかけです。
実は昔もあった?!|びんによる量り売り
日本でガラスびんが流通を始めたのは明治頃から。それまでは、陶器の徳利が一般的でした。樽から徳利に酒を入れて小分けで販売し、徳利は貸し出すという「量り売り」と「リターナブルボトル」がまさに王道だったのです。明治になってワインやリキュール、ブランデーなどが輸入されるようになり、ガラスびんが流通するようになりました。それらの使用済みガラスびんを買い集めて売る商売が生まれ、ガラスびんのリユースに発展していきます。
ガラスびんのリユースのしくみの中核を担ってきたのが「びん商」です。リターナブルびんの回収・洗浄・販売を手掛け、おなじみの一升びんやビールびんなどの流通を担ってきました。ゼロ・ウェイスト宣言を行った自治体の一つでもある熊本県水俣市で水俣エコタウンの中核を担う(株)田中商店もそんな「びん商」。年間全国から集まる400万本のびんを洗浄し、特に九州地域を中心に、900mlの焼酎びんを主とする茶色のガラスびんを「Rびん」に変え、リユースシステムを構築するという企画の立役者でもあります。
リユースの鍵は一定量の同じ規格のびんの流通と、回収ルートの確保
ガラスびんをリユースするためには、回収し洗浄し再利用するためにびん詰工程へ戻すことが必要ですが、そのためには一定量の同じ規格のびんの流通と、回収ルートの確保が鍵となります。同じ規格のびんを作ることで、内容物を限定せず様々な用途で流通させることができ、リユースの効率が飛躍的に上がります。日本ガラスびん協会が認定する「Rびん」は、規格統一リターナブルびんと認められたガラスびんに「Rマーク」を付けるというものです。見た目からリターナブルびんの識別がしやすくなり、リユースがさらに進むことが期待されています。ぜひ先述のエコロジーボトルと合わせてお店でも探してみたいですね。(出典:日本ガラスびん協会)
LCA(ライフサイクルアセスメント)手法による容器間比較報告書を参照しても、何度も使われることを前提としたリターナブルびんは、他のペットボトルなどの容器等と比べて非常に環境負荷が少ない容器であることがわかっています。しかし、容器の軽量化が進む流れや、昔ながらの酒屋による回収ルートの衰退などによってリターナブルびんの流通量は年々減少傾向にあります。そんな現状に一石を投じたいという思いが「リサイクルより、さらに一歩進んだリユースへ」という(株)田中商店が掲げたキャッチコピーにも現れているように思います。
ライフスタイルを体現した新アイテム|マイボトルでもなくマイグラスでもなくマイガラスびん?!
一方で、世界的にゼロ・ウェイストなライフスタイルが注目され、トレンドになりつつある中で、ガラスびんが再び注目されています。様々な調味料や穀類からクッキーやナッツなどの乾物はもちろん、発酵食品や液体物まで、密閉できて便利な保存容器としてだけでなく、何度も使え、見た目にも美しい(SNS映えする!)点も人気のポイントでしょう。量り売りで自分の好きな量だけ、容器持参で買い物をする際にガラスびんを持参することや、自作のドリンクをガラスびんで持ち歩いて、マイボトルでもなくマイグラスでもなく、マイガラスびん?!がオシャレなアイテムとして認識され始めています。
海外製のオシャレなガラスびんが台頭する中、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーでは、量り売りを推奨するアイテムとして「量り売り専用ガラスびん」を国産ガラスびんの老舗、株式会社大川硝子工業所と共にプロデュースしました。(写真はクリックすると拡大します。)
ゼロ・ウェイストの考え方に共感いただき、取引中止やデッドストックなど、行き場を失い倉庫で眠っていたガラスびんを発掘して、量り売り専用容器としてリブランディングすることにしました。海洋プラスチック汚染の問題も注目される中で、プラスチックフリーの動きも加速しており、ますますガラスびんの出番は増えるかも?!今後新しく容器を買ったり、考え直す機会があるなら、生分解性プラスチックなどの新素材に目が行きがちですが、この機会にぜひ、改めて古くからある優良素材にも目を向けてみてはどうでしょうか。
ここまでご紹介してきた、生ごみ、紙、そしてガラスびん。そもそも出さない方法を考えること、商品を買うときに気にかけたい素材としてももちろん注目いただきたいのですが、使い終わってリサイクルしよう、という時に大事になるのが、分別!紙もガラスびんも、分別してきれいな状態で出すことが、一番リサイクルへの近道なのです。ということで、次回は(ようやく?!)分別回収についてお伝えします。
執筆者プロフィール
坂野 晶(さかの あきら)氏
特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー
理事長
大学で環境政策を専攻後、国際物流企業での営業職を経て現職。日本初の「ゼロ・ウェイスト」宣言を行った徳島県上勝町を拠点に、同町のゼロ・ウェイストタウン計画策定や実装、ゼロ・ウェイスト認証制度の設立、企業との連携事業など政策立案や事業開発を行うとともに、国内外で年間100件以上の研修や講演を行いゼロ・ウェイストの普及に貢献する。
ゼロ・ウェイストアカデミー:http://zwa.jp/
おすすめ情報
お役立ち資料・セミナーアーカイブ一覧
- なぜESG経営への移行が求められているの?
- サーキュラーエコノミーの成功事例が知りたい
- 脱炭素移行における戦略策定時のポイントは?
- アミタのサービスを詳しく知りたい
アミタでは、上記のようなお悩みを解決するダウンロード
資料やセミナー動画をご用意しております。
是非、ご覧ください。