コラム
ごみ監査が面白い! | ごみは、全ての無駄を教えてくれる 企業・地域を変える!?「ゼロ・ウェイスト」の可能性
ごみはすべての人に関わりがある事柄といって過言ではありません。そして今までは、個人、自治体、企業にとって、できるだけコストと労力を割きたくない事象でもありました。しかし今、この「ごみ」が、世界の資源枯渇・生態系破壊などの環境問題への意識の高まりと共に、可能性ある資源として注目されています。また、コミュニティ内すべての構成員が関わる共通課題として、まちづくりへの参画を促すきっかけとしても注目されています。
© Masataka Namazu
本コラムでは、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、徹底資源化を実施している徳島県上勝町での実績がある特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーの理事長 坂野 晶様に「ゼロ・ウェイスト」の可能性と、具体的な進め方について連載していただきます。(写真:上勝町の資源回収ステーション)
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自分のごみを知ることが、ごみを減らすことへの最短の道
自分の出すごみを、改めてしげしげと見直したり、分析したりしたことがあるでしょうか。相当マニアックに聞こえるかもしれませんが、自分のごみを知ることが、ごみを減らすことへの最短の道なのです。これは、企業や自治体にとっても同じことです。
「廃棄物の組成調査」というのが、こうしたごみの中身を知る調査の一般的な呼び方です。しかしそれでは少し堅苦しく、一般の方には伝わりづらいため、特に企業や個人に向けては、筆者はわかりやすく「ごみ監査」と呼んでいます。(以下では自治体での実施は「組成調査」、その他企業や個人での実施は「ごみ監査」と使い分けています)
自治体では「どれだけきちんと分別が出来ているのか?」「もっと資源化できるはずのものは無いか?」を調べるためにごみの組成調査を行います。企業でも、資源化できるものや無駄になっているものを知るために、こうした手法を活用することができます。
実際に、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、細かな分別でリサイクル率80%以上を誇る徳島県の上勝町でも、ごみ処理の問題に取り組もうとした際に、最初に行ったのが「どんなごみがどれだけ出ているのか」を調べる組成調査でした。その結果判明した「約30%は生ごみである」というデータに基づき、まずは生ごみを堆肥化し、各家庭で処理してもらうことで、大幅に「焼却せざるをえない」ごみ処理量を減らす、という方針を打ち立てることができました。(生ごみ処理の詳細については次回のコラムで扱います。)
インセンティブをあげる、楽しむなどの工夫も重要
上勝町では、現在も町内の「焼却せざるをえない」ごみの組成調査を毎年実施しており、その調査結果に基づいて様々な施策を立案しています。例えば、2013年度の調査では、焼却ごみの中に新聞紙や段ボール以外の、細かい紙資源が多く含まれていることがわかりました(組成割合31.8%)。そこで、それら紙資源を、焼却ではなく資源として分けてごみステーションへ持ちこんでもらおうと「雑紙ポイントキャンペーン」を始動しました。(右画像はクリックすると拡大します。)
「雑紙ポイントキャンペーン」とは、
- 雑紙(お菓子の箱やメモ用紙などの、細かい綺麗な紙類)を分別し、紙袋にまとめて持ってきた場合
- 紙パック(牛乳パック等)や紙芯(ラップなどの硬い芯)などを5つ以上まとめて持ってきた場合
それぞれに、ごみステーションにてポイントカードにポイントが貯まり、貯まったポイントはトイレットペーパーなどの賞品に交換できる、という仕組みです。
(2018年現在は「ちりつもポイント(塵も積もれば山となる)」と名称を変えて運用されています。)
こうしたインセンティブを設けることで、特定の資源の分別を促進し「焼却せざるをえない」ごみを減らすことはもちろん、楽しくごみ分別に取り組んでもらえるように工夫しています。実際に、このポイントキャンペーン開始後に実施したごみの組成調査では「焼却せざるをえない」ごみへの雑紙混入率は減少しました。
ごみを見直すことは事業を見直すことにつながる
家庭から出るごみだけでなく、事業所の廃棄物の調査も行っています。スタート時は上勝町内の事業所に向けた分別指導が目的でしたが、2017年から飲食店向けの「ゼロ・ウェイスト認証制度」を運用し始めてからは、お店や事業所において「発生抑制」ができるごみを洗い出し、ごみをそもそも出さないようにしていく取り組みへの第一歩として「ごみ監査」を導入しています。
例えば、長崎県雲仙市小浜町にあるゼロ・ウェイスト認証店「刈水庵」では、認証取得の現地審査時に行ったごみ監査で、生ごみを除いた可燃ごみのうち、約10%が使い捨てのおしぼりでした。そうした結果を共有しながら、おしぼりはどんなタイミングで必要か?という話し合いを進めたところ、店長さんから「おしぼりは出すものだという固定観念があっただけで、別に無くても問題ないのでは・・」という意見が。むしろ、使用済みのおしぼり本体とプラスチックの袋が食後にテーブル上に散乱している様子は美しくなく、片付けるのも気分が良いものではないため「出さない」という方法を試してみようという話になりました。ごみを改めて見直すことで、無理をするのではなく、効果的に無駄をそぎ落としていける切り口が見つかった例です。
事業規模によってインパクトの大小は様々ですが、こうした「ごみ監査」を通じて、そもそも使わなくてもいいものや、他に活用できるはずなのに無駄にしてしまっているものを洗い出し「使わない」選択肢を取ることで、仕入れのコスト削減、そして事業所によってはごみ処理のコスト削減にも繋がります。自社の事業を検証する際には、ぜひ会計監査だけでなく「ごみ監査」にもトライしてみてはいかがでしょうか?(画像は「ゼロ・ウェイスト認証制度」審査結果通知)
次回は、具体的に出たごみへの対応策と活用法をご紹介します!
執筆者プロフィール
坂野 晶(さかの あきら)氏
特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー
理事長
大学で環境政策を専攻後、国際物流企業での営業職を経て現職。日本初の「ゼロ・ウェイスト」宣言を行った徳島県上勝町を拠点に、同町のゼロ・ウェイストタウン計画策定や実装、ゼロ・ウェイスト認証制度の設立、企業との連携事業など政策立案や事業開発を行うとともに、国内外で年間100件以上の研修や講演を行いゼロ・ウェイストの普及に貢献する。
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