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コラム

"電力自由化"で電気料金は安くなるのか? 初心者向け今こそ知りたい !電力自由化と電気の環境調達!

Some_rights_reserved_by_Dave_Dugdale.jpg企業の電力調達について解説する本コラム。第2回目の今回は、誰もが気になる「電力自由化で電気料金が安くなるのか」というテーマを考えていきます。

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Some rights reserved by Dave Dugdale

電力自由化によって、電気料金は安くなるのか?

端的に言うと、電力自由化を実施すれば、必ず電気料金が安くなるということではありません。もちろん安くなる場合もありますが「将来的に電気料金は上昇していくと考えられるため、今後はコストダウンが難しい」と予想されます。

実は、政府も電力自由化によって電気料金が安くなるとは説明しておらず、電力自由化を含む電力システム改革を行う目的の1つとして「電力料金を最大限抑制する」と説明しています。つまり、今後、電力料金が上がっていくということを前提にした上で、その上昇を如何に抑制するかを政府も課題として認識しているということです。

▼ポイント

電力自由化によって、電気料金が安くなる需要家もいるが、そもそも全体として、電気料金の上昇が見込まれるため、コストダウンは難しい。

電気料金の上昇にはいくつかの理由がありますが、主な理由として以下の4点が挙げられます。

▼電気料金の上昇の主な理由

  1. 戦後から利用していた送配電設備の老朽化が進み、更新工事が増えていくため。
  2. 現在、原発を再稼働しない場合も見据えて、石炭火力発電所の建設が多く進められているが、原発が再稼働した場合を考えると、発電設備が過剰な状況になるため。
  3. 再エネ普及促進のために導入された固定価格買取制度によって、各電力会社が再エネ発電所に支払う交付金総額が上昇するため。
  4. 1~3の状況にある一方で、そもそもの電力需要が伸びていないため。

以下は、先進国の電力の料金の推移です。これを見てわかるとおり、多くの国では、価格が下がるどころか上昇しています。国によって状況は異なりますが、再エネの導入促進や燃料価格の高騰による部分が大きいと考えられます。

<図1> 図はクリックすると大きくなります。

180424_img001.jpg総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 
電力・ガス基本政策小委員会(第1回)資料9「電力・ガス産業の今後のあり方」より

電気料金の内訳からみる!電気料金の今後の動向

より具体的に電気料金の今後を考えていきましょう。私たちが支払っている電気料金の内訳は、①電力調達費、②託送料、③販売管理費、④再エネ賦課金の大きく4つで構成されています。それぞれのコストについては、将来的に以下の状況が予想できます。

<図2> 図はクリックすると大きくなります。

180424_img002.jpg

「① 電力調達費」には、発電コストが反映されます。もちろん、本来であれば競争原理が働き、コストの高い電源が廃止されて、全体コストは下がっていくものですが、現状の日本の政策では、"万が一でも停電しないこと"がコスト以上に重要視されています。そのため、新規の電源が増えても、古い電源が廃止され難いといった方向で制度の議論が進んでいると言われています。上記でも述べましたが、電源過剰によって、社会全体でのコストは増加する傾向にあります。

「② 託送料」は、電気を発電所から需要家まで送るためのコストです。こちらは、現在、政府がコスト削減を推し進めています。しかし、今後、多くの送配電設備で老朽化したインフラ更新工事が必要になること、また偏在する再エネを新たな需要地に送るための送電設備の整備も進んでいくことから、コスト削減は難しいとも言われています。

「③ 販売管理費」は、小売電気事業者の努力で下げられるコストです。現在、各事業者は販売管理費を下げるため、管理業務をコンピュータで自動化するなど、様々な工夫をしているところです。とはいえ実際のところ、販売管理費自体は電力料金の1~2割に過ぎないため、全体の料金の大幅な値下げにはなりません。

「④ 再エネ賦課金」は、再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下、再エネ特措法)にて全ての需要家から電気使用量に応じて一律で徴収されている料金です。再エネ特措法に基づいた再エネ発電所は、今後も増えていきますので、その発電に交付される金額は増えていきます。2017年度は2.64円/kWhですが、将来的には4円/kWh程度まで上がっていくと予想されています。

電気料金が安くなるケースとは?負荷率が決め手!

全体の電気料金は上がっていきますが、現時点で、安くできる需要家もあります。それは、負荷率の低い場合です。負荷率とは、契約電力(kW)を24時間1か月間使い続けた電気使用量を100%としたときの実際の電気使用量の割合です。例えば「朝から夕方までの稼働で夜間はほとんど電気を使わない」「短時間だけ高い電力が必要な機器がある」、などのケースにあてはまる工場や店舗は負荷率が低いため、みなし小売(旧一般電気事業者の電力販売部門)から、新電力に切り替えると料金が下がる場合があります。

一般的には、負荷率が30%以下であれば、料金が下がる可能性が高いため、一度は検討をオススメします。また、環境担当者の方は、削減した資金で新たな取り組みを提案してみてはいかがでしょうか。環境価値付きの電力にしたり、太陽光発電設備を導入するなど、これまで予算不足を理由に導入できなかったことができるようになるかもしれません。

"安さ"にとどまらない!電力自由化時代の選択基準とは?

電力自由化により、電気の購入先を変えても料金が大きく下がらないのであれば「電力会社を変える意味はない」と考えてしまうかもしれません。しかし、果たして本当に意味のないことでしょうか?

電力自由化で選べるようになったのは、"価格"だけではありません。"電力のCO2排出係数"や"環境価値"なども選べるようになったのです。
企業にとっては、これまで実施できなかった環境取り組みを加速させるチャンスでもあります。次回以降は、こうした電力が持つ"CO2排出量削減効果"や"環境価値"に関して説明していきます。

執筆者プロフィール

180314_profile.jpg川島 悟一(かわしま ごいち)氏 
自然電力株式会社
電力小売事業部 マネージャー

東北大学理学研究科を修了後、複数の企業にて環境やエネルギーに関する事業の企画運営に携わる。環境コンサルタントとして独立後、内閣府参事官補佐として、NGO/NPOが活躍しやすい社会基盤整備の担当を経て現職。現在は、自然エネルギー100%の世界を目指すために必要な新規事業の創発など、自然エネルギーをより拡大させていくための突破口づくりに邁進中。

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