コラム
自社の敷地から埋設廃棄物が出土...処理責任はどうなる?佐藤泉先生の「廃棄物処理法・環境法はこう読む!」
「自社の土地の土壌調査したところ、埋設廃棄物が見つかった」「土地を購入して建物を建てようとしたところ、廃棄物が埋められていることを見つけた。」という場合、企業担当者はドキリとしますね。法律上はどのような対応を取ればよいのでしょうか。
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廃棄物処理法の規定から読み解く!
廃棄物処理法は、廃棄物の不法投棄を防止し、適正処理を推進するための法律ですが、過去に埋設された廃棄物についての土地所有者責任については、明確な規定がありません。
法5条2項は「土地の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する、若しくは管理する土地において、他の者によって不適正に処理された廃棄物と認められるものを発見したときは、速やかに、その旨を都道府県知事又は市町村長に通報するように努めなければならない。」と規定しています。この規定は、一般的に、放置された廃棄物の飛散流出、廃棄物による悪臭、害虫等が発生する可能性を考慮し、自治体が適切な対応をとることができるように配慮して規定されたものと考えられます。また、努力義務であり、通報しなければならないという規定ではありません。
長い期間、敷地内に廃棄物が埋設されていたが、これによる支障がなく、安全に土地利用が行われていた場合には、そのままの状態において、廃棄物による生活環境の支障はないと思われます。埋設されている廃棄物の種類にもよりますが、古い井戸、がれきなどであれば、土地の所有者が行政に通報する必要性は低いでしょう。
たとえ、土地の所有者が行政に通報したとしても、埋設されている廃棄物の撤去を命じられる可能性はほとんどないでしょう。産業廃棄物の措置命令(法19条の5、19条の6)は、基本的に、廃棄物の処理業者及び排出事業者を対象とするものであり、また廃棄物の飛散、汚染の流出などの生活環境保全上の支障が生ずるおそれがある場合に限定されています。
但し、土地の所有者が自ら埋めた廃棄物については、不法投棄として、土地の所有者に刑罰が科せられる可能性があります(法16条、法25条1項14号)。また、埋設されていた廃棄物を掘り起こしてもう一度埋めれば、新たな不法投棄になりますので、注意が必要です。不法投棄の刑法上の時効(公訴時効)は5年です。
環境省の通知から確認!
昭和57年6月14日付けの通知(環産21、厚生省環境衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の疑義について」)の問11には、以下のような記載があります。
「問11 地下工作物が老朽化したのでこれを埋め殺すという計画を有している事業者がいる。この計画のままでは生活環境の保全上の支障が想定されるが、いつの時点から法を適用していけばよいか。
答 地下工作物を埋め殺そうとする時点から当該工作物は廃棄物となり法の適用を受ける。」
上記通知は、廃棄物を他の場所から運んで埋める場合ではなく、元にあった場所に放置してその上を被覆するなどの行為で隠すという行為も、不法投棄に該当するということを示唆しています。但し、この通知は、建設廃棄物として、解体工事の際に本来撤去するべきものを対象として想定しています。その意味で、土地の所有者が埋設廃棄物を見つけたというケースの全てにこの通知が適用されるとは考えられません。
民法上の責任は?
現在の土地の所有者は、その責任として、土地の安全な状態を確保する民法上の義務があります。埋設廃棄物が原因で、土壌汚染が発生し、さらに地下水汚染が発生しているような事案では、土地の所有者がこのような状態を放置することは、近隣の住民に対する関係で、不法行為に該当する可能性があります。
購入した土地で廃棄物が確認されたため、土地の所有者が埋設廃棄物を撤去した場合、現在の土地の所有者は、これによって生じた費用を、土地の前所有者に求償することができる可能性があります。これは、売買契約上の瑕疵担保責任です。
また、埋設されている廃棄物が不法投棄されたものである場合には、現在の土地の所有者は、不法投棄をした者に、不法行為として損害賠償請求をすることも可能です。さらに、排出事業者に対して事務管理として損害賠償を請求することが可能な場合もあります。
排出事業者が気を付けるべきポイントは?
廃棄物が確認された状況にもよりますが、土地の所有者として、埋設廃棄物を全部残らず探し出して撤去するという義務がある、とまでは考えられません。市街地の多くの土地は、震災、戦争、土地開発、造成、土地利用等の歴史において、少なからず廃棄物が存在します。
土地の所有者は、確認された廃棄物の量、質、その廃棄物が環境に与える影響等を慎重に判断し、安全な土地利用及び近隣への配慮の観点から、合理的な対応をすることが必要だと思います。
土地の売買においては、埋設廃棄物が見つかった場合に、相互にどのような責任を負担するのか、契約書締結段階で協議し、契約書に明記しておくことが重要です。
まとめ
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執筆者プロフィール
佐藤 泉(さとう いずみ)氏
佐藤泉法律事務所 弁護士
環境関連法を主な専門とする。特に、企業の廃棄物処理法、土壌汚染対策法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等に関連したコンプライアンス体制の構築、紛争の予防及び解決、契約書作成の支援等を実施。著書は「廃棄物処理法重点整理」(TAC出版)など
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