コラム
産業廃棄物の管理・事務を他社へ委託、廃棄物処理法上は適法?佐藤泉先生の「廃棄物処理法・環境法はこう読む!」
廃棄物処理業者の選定、現地確認、契約書の作成、処理料金の支払いなどを、自社の子会社、ビルのメンテナンス会社、コンサルティング会社等に業務委託することは、廃棄物処理法上問題ないのでしょうか。多くの企業担当者様が一度は悩むこちらのテーマについて、業務委託をする際の注意点も含めて解説します。
Some rights reserved by
franchiseopportunitiesphotos
目次 |
廃棄物管理業務の人手や知識の不足から業務改善方法を検討されている方には、アウトソーシングが有効な手段です。アミタは、廃棄物管理のプロが業務のサポートを行うことで企業価値の向上をご提案します。
排出事業者責任の規定について
廃棄物処理法第3条1項は「事業者は、その事業活動に伴って生じる廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と規定しています。そして、産業廃棄物については、自ら処理の原則(法11条1項)と、第三者に委託する場合には産廃業者へ委託しなければならないという委託基準の遵守(法12条5項、6項)、さらに最終処分が終了するまでの必要な措置の努力義務(法12条7項)が定められています。
排出事業者が無許可業者に委託することは、委託基準違反であり、罰則(法25条1項6号、法定刑は5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金、又はこの併科)の対象となります。また、無許可で受託した会社も、無許可営業として上記と同じ内容の法定刑の対象となります(法25条1項1号)。
廃棄物処理法が、このように厳しい排出事業者責任を規定している理由は、廃棄物の運搬・処分から発生する環境負荷・生活環境保全上の支障を未然に防止し、適正処理を行うためです。
事務の委託・アウトソーシングは違反ではない !
廃棄物の処理そのものではなく、排出事業者が行う事務を、廃棄物処理業の許可を有しない第三者に委託・アウトソーシングすることは、廃棄物処理法に違反しません。なぜなら、このような事務作業は、環境負荷・生活環境保全上の支障を直接発生させるものではないからです。排出事業者の責任により、許可処理業者との契約が成立し、許可業者が実際の廃棄物の運搬、処分などの環境負荷が発生する行為を行っていれば、廃棄物処理法の目的は達成できるのです。
事務の委託・アウトソーシングは、廃棄物の処理そのものではないため、民法の契約自由の原則により、排出事業者がそのニーズに合わせて、自由に委託先を選び、委託先がその事務を行うことが可能です。事務の委託先は、契約に従って、委託された業務を、誠実に履行する義務があり、その報酬を受け取ることができます。委託する内容は、廃棄物の処理を物理的に伴わないのであれば、排出事業者が自由に決めることができます。
但し、事務の委託が実質的に処理の丸投げとなっている場合には、実質的に判断して、処理を委託したとみなされ、委託基準違反に該当する可能性があります。特に、ずさんな処理によって不法投棄や不適正処理が発生した場合には、実質的に無許可業者への委託になっているのではないかとの疑いを持たれる可能性が高いでしょう。
"丸投げ状態の委託"には要注意!根幹的内容は排出事業者が決める。
環境省は、産業廃棄物課長通知として「廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)」(環廃対発第1703212号、環廃産発第1703211号、平成29年3月21日)を発出しました。この通知では、排出事業者と処理業者間の契約に介在し、あっせん、仲介、代理等の行為を行う事例について、注意を促す言及があります。この通知は、平成28年に発生した廃棄カツの横流し事件で、仲介業者が介在したことについて、改正法の内容について検討していた中央環境審議会で、委員から疑問が出されたことが発端になっていると思われます。
この通知は、このような仲介業者を違法と判断しているのではありません。しかし、排出事業者が、廃棄物の種類・量、処理料金等の処理委託の根幹的内容の決定を第三者に委ねるべきではないと記載しています。なぜならば、排出事業者と処理業者間の直接の関係性が希薄になり、また仲介料等の発生により、処理業者に適正な処理料金が支払われなくなるといった状況が生じることにより、委託基準違反や処理基準違反、ひいては不法投棄等の不適正処理につながるおそれがあるからとしています。
責任を果たしながら、他社パートナーを活用!
排出事業者責任は重要です。しかし、排出事業者や排出現場は多様であり、排出事業者だけですべての事務を行うことは困難な場合もあります。また、第三者のサポートを受けた方が、排出事業者責任をより適切に果たすことが可能な場合もあります。
また、実態から考えると、排出事業者が収集運搬業者と処分業者から、直接、別々に請求書を受領し、別々に支払っているケースはかなり少ないと思います。
さらに、現在の廃棄物処理法は、とても分かりにくい状況にあります。例えば、廃棄物の種類一つをとっても、排出事業者が、自分が排出する廃棄物が汚泥なのか、廃酸なのか、廃油なのか、廃プラスチック類とすべきなのか、など判断しにくいのが現状です。また、どの地域にどのような処理業者がいるのか、自分が排出する廃棄物を安定的に処理する能力があるのか、などについても情報が不足しています。このようななかで、排出事業者をサポートする会社のニーズがあるのだと思います。
排出事業者としては、あくまで最終的な責任は自分にあることを自覚したうえで、事務の委託及びアウトソーシングを利用し、契約内容の確認及びマニフェスト管理をきちんと行うことが重要です。
まとめ
|
関連記事
関連情報
お問い合わせ
執筆者プロフィール
佐藤 泉(さとう いずみ)氏
佐藤泉法律事務所 弁護士
環境関連法を主な専門とする。特に、企業の廃棄物処理法、土壌汚染対策法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等に関連したコンプライアンス体制の構築、紛争の予防及び解決、契約書作成の支援等を実施。著書は「廃棄物処理法重点整理」(TAC出版)など
おすすめ情報
お役立ち資料・セミナーアーカイブ一覧
- なぜESG経営への移行が求められているの?
- サーキュラーエコノミーの成功事例が知りたい
- 脱炭素移行における戦略策定時のポイントは?
- アミタのサービスを詳しく知りたい
アミタでは、上記のようなお悩みを解決するダウンロード
資料やセミナー動画をご用意しております。
是非、ご覧ください。