コラム
自然エネルギーと再生可能エネルギーの違いと活用のポイント省エネと創エネ~日本と企業におよぼす今後の影響と対策
本コラムは「省エネ」や「創エネ」が、今後企業に与える影響を想定し、いかにリスクを減らしてチャンスにつなげていくかをテーマにします。「創エネ」とは、創エネルギーの略称であり、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスなどを活用して再生可能エネルギーを作り出すことです。第2回目は、企業が自然エネルギーを活用するポイントについてご説明します。
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再生可能エネルギーと自然エネルギーの違い
再生可能エネルギーは再利用することができるエネルギー全般を表す言葉です。ここでいう再生可能とは「使ってもまた資源が補充される 」という意味で大まかにとらえてください。例えば、石油や天然ガスなどの化石燃料は消費量に対して再生されず、いずれ枯渇してしまいます。それに対して、例えば木質バイオマスであれば、木を植えて育つ量が使用量より多ければ、エネルギーは枯渇しません。自然エネルギーは再生可能エネルギーの一部です。
- 再生可能エネルギー...消費しても、その補充が定常的に期待できるエネルギーの総称。自然エネルギーの他に「バイオマスエネルギー」や「温度差・濃度差エネルギー」など自然現象ではなく、別の再利用できる資源を使って生み出されるものも含みます。
- 自然エネルギー...再生可能エネルギーのうち、自然現象から得られるエネルギー。主に(1)太陽光(2)風力(3)中小水力(4)地熱 などが該当します。
自然エネルギー活用のポイント
火力・原子力発電と比べ た自然エネルギーの一般的な特徴は、以下の3つです。
- 設置場所や発電容量によっては投資費用と投資の回収年数が小さく、効果が早く出る
- メンテナンス費用が安い
- 近隣地域や環境に対し影響が少ない
企業は以下の表のようにエネルギーそれぞれの特徴を理解し、導入・活用することが必要です。
(表はクリックすると大きくなります。)
太陽光はパネルの反射光や反遮熱、風力は低騒音などで近隣住民から苦情が来る例も少なくありません。設置に際しては、近隣住民などへの説明は不可欠です。また、発電設備の容量が大きくなると電気事業法や建築基準法など各種法令に該当する場合もあるので注意が必要となります。
それぞれのエネルギー特徴を活かした開発もおこなわれています。例えば、中小水力は、循環冷却水などの配管に取り付ける発電設備の開発がされています。 また、地熱は発電以外にヒートポンプ式で熱利用をする事業所も年々増加しています。
太陽光発電と風力発電に関する比較~ケーススタディ~
最後に自然エネルギー導入のケーススタディの一例として、一般的な太陽光と風力を比較します。
太陽光は、2012年度と比較して約9倍に発電導入量が増加しています。 FIT(固定価格買取制度 以下、FIT)(※)導入は、両者の普及に大きく寄与しました。2016年5月に成立し、2017年4月に施行されたFIT改正法では2017年8月から2019年度の買取金額が定められ、2030年度まで継続される方針が打ち出されました。風力(陸上)は2019年度で19円/kWh(税抜)と設定されています。 なお、太陽光は2018年度以降発電設備の見直しにより明確な価格は定められていません。
※国は2012年7月より「FIT(固定価格買取制度)」をスタートさせました。これは太陽光や風力といった再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取る際は、10年および20年(条件によって異なる)という一定の間、その年に定められた価格(適正な利潤などを勘案)で買い取り続けるよう義務づけたものです。中立的な調達価格等算定委員会の意見を尊重し、経済産業大臣が決定します。現在の見通しでは、買取価格は下がっていく方向です。
出所:「資源エネルギー庁 平成27年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2016)」より(株)オオスミが作成 | 出所:「経済産業省 省エネルギー庁なっとく再生可能エネルギー」より(株)オオスミが作成 |
そこで、 中小規模程度の電気容量である2,000kWで費用(投資+維持費:土地費用除く)を推定して、FIT制度が継続した場合、投資回収年数は、関東地域の日照時間の平均から太陽光で約6年、東京電力管内の風力で約10年となります。 なお、ここでは太陽光の価格を2016年度以前の動向から15円/kWh (税抜)と推定しました。
現在、全国どの地域においても購入する電力単価は約24円/kWh (税抜)ですが、今後FIT買取価格が下がった場合には、売電から自社消費に切り替えることも考慮する必要があります。
出所:「FIT法改正を踏まえた調達価格の算定について」「経済産業省 資源エネルギー庁」よりオオスミが作成
いずれにせよ、自然エネルギーを活用する際は、自然エネルギー活用のポイントで記載したメリット・デメリットを考慮して設置し、FIT制度を使う場合は将来的に制度がなくなることを想定に入れて事業計画を立てる必要があります。
執筆者プロフィール
飯島 政明(いいじま まさあき)氏
株式会社オオスミ 調査第二グループ
山梨県機山工業(現、城西高校) 高校機械科を卒業後、半導体を製造している大手半導体メーカーでファシリティーの管理・省エネ改善と環境管理の業務を経て現職。現在は「省エネ診断及び環境関連の法令」についてのコンサルティングを60社以上の企業に提供し、好評を得ている。
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