コラム
パリ協定(COP21)後に企業が取り組む『省エネ』と『創エネ』省エネと創エネ~日本と企業におよぼす今後の影響と対策
本コラムは「省エネ」や「創エネ」が、今後企業に与える影響を想定し、いかにリスクを減らしてチャンスにつなげていくかをテーマにします。「創エネ」とは、創エネルギーの略称であり、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスなどを活用して再生可能エネルギーを作り出すことです。今回は、重要課題である省エネ・創エネが必要な背景と日本企業における今後の方向性について紹介します。
※1 COP(Conference of the Parties)21...気候変動枠組み条約第21回締約国会議
企業が『省エネ』と『創エネ』に取り組む必要性
強化される企業の温室効果ガス報告義務
2016年11月にモロッコにて開催されたCOP22で、日本がCOP21の検討課題としていた「パリ協定」が正式に締結されました。これまで日本が環境政策として掲げるエネルギーミックスの中心は「原子力と再生可能エネルギーの共存」の推進でした。しかし、COP21とCOP22の内容を受けて、日本政府は既に掲げていた「5年ごとに温室効果ガスの削減状況を点検し、報告する」と「先進国から途上国への援助を強化する」という指針について再確認し、今後より対応を明確化する方向にあります。具体的には、CO2排出量が3,000t-CO2/年以上の事業所に対し、エネルギー消費原単位を年1%以上削減させることが重要視され、また、50~3,000t-CO2/年未満の企業に対する報告義務が今以上に強化されていくことなどが予想されます。
電力エネルギーの約9割を海外に依存する日本の企業が抱える課題
東日本大震災以降、福島原子力発電所の停止により、現在日本国内の9割が火力発電で供給されています。現在の日本は「エネルギー自給率の低下」「電力コストの上昇(変動)」「CO2排出量の増加」などの課題に直面しています。
日本の火力発電は、海外から輸入される石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料に大きく依存しており、依存度は2014年度で88%(電源構成ベース)です。これは、第一次石油ショック時よりも高い数字です。
※出所:「2016年度版 日本のエネルギー エネルギーの今を知る20の質問」
「経済産業省 資源エネルギー庁 引用:電力単価の変動」よりオオスミ作成(図はクリックすると拡大します)
この状況が続くと、日本企業は化石燃料の価格変動の影響を受け、電気単価が上がった際には、製造費などのコスト増加、さらに増加コストを製品価格に転化した場合の価格高騰による販売不振、あるいはコスト増加による企業経営の悪化などの影響が予想されます。
2016年4月に開始された電力自由化で、一時的に電力単価(\/kWh)は下がっています。しかし、原油や天然ガスの輸入価格が上昇傾向にあるため、現在の火力中心の電力供給体制では、電力単価の減少は一時的なものだと考えられます。
※出所:資源エネルギー庁「エネルギー白書2016」「エネルギー白書2017」をもとに作成
(図はクリックすると拡大します)
また、製品・サービスに関わる温室効果ガス排出量を削減するため、今後、調達先に対する温室効果ガス排出量の報告および削減の要請が強まる見込みです。そのため、企業は「省エネ」を行うとともに 、エネルギー自給率の向上、温室効果ガス削減の両面から「創エネ」 に取り組む必要性があります
「創エネ」が注目される理由
日本企業は既にある程度「省エネ」に取り組んでおり、今以上の対策は生産・品質等へも影響する可能性があります。そこで、安定した量・コストで電力利用するために「創エネ」を選択する時期に入ってきました。例えば、自社発電や「創エネ」電力を購入することなどです。
再生可能エネルギーは、火力発電よりCO2排出係数が小さいためCO2排出量を削減できます。自社発電の場合は、余剰電力を売電できます。災害などの停電時にも、最低限の電力を確保でき、早急に地域への支援活動を開始することや緊急避難場所としての役割なども期待できます。国は自治体と企業が連携したスマートシティの構築を推進しており、地方創生戦略の一環としても創エネは注目されています。
次回以降は、省エネや創エネのより詳細な各論や具体的な対応方法ついて説明します。
執筆者プロフィール
飯島 政明(いいじま まさあき)氏
株式会社オオスミ 調査第二グループ
山梨県機山工業(現、城西高校) 高校機械科を卒業後、半導体を製造している大手半導体メーカーでファシリティーの管理・省エネ改善と環境管理の業務を経て現職。現在は「省エネ診断及び環境関連の法令」についてのコンサルティングを60社以上の企業に提供し、好評を得ている。
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