コラム
半径5mからの社会変革【第2回】日本初"障害児の子育て"を変える!障害児訪問型保育事業半径5mからの社会変革
こんにちは。NPO法人フローレンスは「病児保育」などで、子育て家庭をサポートしてきた団体です。そして2015年4月、新たな取り組みとして、日本初・重い障害児のある子どもを預かる訪問型保育を開始しました。その取り組みを紹介します。
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日本初の障害児向け自宅でのマンツーマン保育
「障害児訪問保育アニー」
(動画)障害児訪問保育アニーを始めたきっかけ
https://www.youtube.com/watch?v=2Vr08sqJuKE
【半径5mからの社会変革】全6回はこちら
- 第1回 病児保育とひとり親支援
- 第2回 日本初"障害児の子育て"を変える!障害児訪問型保育事業
- 第3回 LGBT、やらなきゃ損する!? ダイバーシティ推進の突破口
- 第4回 「37.5℃の涙」の実際に迫る! 共働きの子育て事情
- 第5回 クラウドファンディングで集った仲間で事業の門出を祝う!新しい社会参画のカタチ
- 第6回 血縁だけが親子じゃない。特別養子縁組でも育休可能な就業規則に
障害児の母親は95%仕事をやめている今の社会
4月は、育休されていたお母さんが子どもを保育園に預けて職場復帰される時期。ご自身が復帰された方や、職場で育休復帰の同僚を迎えた方も多いのではないでしょうか。私たちフローレンスが運営する保育園でも、たくさんの入園児を迎えました。しかし、一方で、保育園に入れない子どもたちがいます。日本では、障害児、特に重い障害がある子ども(日常的に医療的ケアが必要な重症心身障害児)を預かれる保育園がほぼ無く、障害児の母親の95%がフルタイムの仕事を辞めています。私たちがお会いしたお母さんは「『チューブがついている子の保育園入園は難しいです』と、役所の窓口で断られた」と話します。
障害児を育てるということ。それは現状の日本では、両親のどちらかが仕事を諦めて、ほぼ一日中つきっきりで子どもの介護にあたるということ、と言って過言ではありません。その精神的・肉体的負担は非常に大きいものです。また、親の片方は介護に専念せざるを得ないために片働きとなり、収入も健常児の家庭より少ない傾向にあります。医療費・療養費の負担も大きいことから経済的に厳しい状況に追い込まれ、障害児の子育ては貧困リスクとも近接しているといえます。0~5歳の重症心身障害児は、東京23区で1,600人、全国で約17,000人と推計されています。
妊娠中に胎児に病気があるかどうか判定する新型出生前検査が導入されて以来、検査は急速に広まっているというニュースを見ましたが、その背景には、障害児を育てることに不安を持たざるを得ない社会の現状があります。
障害があってもなくても、
誰もが受け入れられる場所あれば、子育てを支えてくれるサポート網があれば-
障害児の子育てという"未知"への不安も、少し違ったものになってくるのではないでしょうか。
重い障害の子どもを自宅で預かる取り組みで「障害児の子育て」を変える
そのような障害児のための保育が不足する社会の現状を変えたくて、この4月立ち上げたのが、障害児訪問保育「アニー」です。障害児の自宅に保育スタッフが伺い、親御さんが働きに出る8時間、マンツーマンで保育をします。現在、3人の子どもたちを預かっています。
子どもは慣れた環境で個々の状態に合った保育と訪問看護サービスを受けられるので、親御さんは毎日安心してフルタイムでの就労もできます。
また、在宅保育だけでなく、自治体内の保育園に連携して子ども同士が触れ合える交流保育の機会も増やしていく予定です。この取り組みにより、生活の大半を家で過ごしていた障害のある子どもたちが、健康な子どもと同じように社会と接点を持つことができます。保育とは、決して親が働くためだけにあるのでなく、子どもの成長を支える役目があります。ひとりひとりの子どもの可能性、感性を社会の中で育んでいくことでもあるのです。アニーは障害児家庭の「第二の家族」のような存在となって、子どもと一緒に飛び立てるような保育を目指すという思いを、鳥のロゴに込めました。
たくさんの人が少しずつ。その想いが1,500万円にもなる。
アニーは企業からの応援として、スーパーの西友さんにも応援してもらうことができましたが、まだまだ資金が足りていない状況でした。そこで、なんとか事業資金を集めようと、一般の方に協力を呼びかけるクラウドファンディングを実施。本当に協力してくれる人が集まるだろうか・・・という心配もあった中、蓋を開けてみると、多くの人々が寄付をしてくれたのでした。開始から20日間で、693人もの方からの寄付が集まり、なんと1,500万円という大きな金額の支援になりました。寄付だけでなく、SNS等でも拡散して下さったお陰で、多くの人々に知られていったのです。
障害児訪問保育は、これまでなかったものです。しかし、なければ創っていけばいいのです。
自分たちの力は小さくても、たくさんの人が力を借りて、共に創っていけばいい ―
そう確信した瞬間でした。
寄付を通じて想いを託してくれた人たちと一緒に、重度障害児とその家族を支えると同時に、障害のある子もない子も社会の中で豊かに育っていける社会、親が安心して子育てできる社会を目指します。
関連情報
- 認定NPO法人フローレンス
- 日本初の障害児向け自宅でのマンツーマン保育「障害児訪問保育アニー」
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プロフィール
藤田 順子(ふじた じゅんこ)氏
認定NPO法人フローレンス
経営企画室 マネージャー
前職では広告会社で商業施設や大手通信会社のマーケティングに携わる。在職中、実母の看病で介護休職した経験をきっかけに、介護や子育てなど「家族のケア」を抱えるライフステージにある人が、仕事を辞めることなく家族や生活を大切にできる日本社会にしたいと課題意識を持つようになる。
2010年、子育てと仕事の両立をはばむ社会課題の解決を軸に事業展開するNPO法人フローレンスに参画。ひとり親家庭の支援、被災地の子どもの学習支援などの活動に携わり、応援してくれる人を活動に巻き込むソーシャルプロモーションに取り組んでいる。
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