コラム
元青年海外協力隊が語る|草の根活動が世界をつなぐ 最終回草の根活動が世界をつなぐ
こんにちは、今回でコラムも最終回になりました。これまでお読み頂いた皆様、本当にありがとうございました。冬の寒さから、少しずつ春に近づいてきました。暖かくなるのは良いですが、花粉症である私は嬉しさ半分、ツラさ半分の季節です。フィリピンは花粉症がありませんし、任地であるサガイ市は毎年3月中旬にお祭り「シニガヤン フェスティバル」が開催され、この時期は特にフィリピンへ行きたい気持ちになります。
写真:シニガヤン フェスティバルの様子
元青年海外協力隊が語る|草の根活動が世界をつなぐ
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 最終回
日本大使館の草の根無償資金協力
サガイ市では、日本で使用されていたゴミ収集車(パッカー車)でゴミ回収を行っていました。なんと車内のステッカーには「東京清掃局 昭和62年 検済」と表示があり、25年以上も昔の車両を使っています。そのためエンジントラブルが高頻度に発生し、サビによる劣化が著しいのです。驚いたことにゴミ回収時に中に押し込む操作は、むき出された2本の配線を接触させ、火花を飛ばしながら動かします。
日本では当たり前のよう決められた収集日、時間にパッカー車が来て回収して行きます。もし、朝皆さんが出したゴミ袋が回収されず1・2日そのまま放置されていたらどうですか?フィリピンは年中通して30度を超えます。たちまち悪臭を放ち、大量の虫が湧きます。
せっかくゴミ分別を始めたところで、スケジュール通りパッカー車が回収に来なければ住民も分別をやめてしまいます。
こうしたことから、在比日本大使館の草の根無償資金協力によって日本の自治体で使い終えたパッカー車2台を譲ってもらえることになりました。埼玉県上尾市、愛知県豊中市で走り終えったパッカー車は現在サガイ市を走り、市民のために活躍しています。
写真:草の根資金協力の調印式の様子 当時:卜部大使とサガイ市長
ウエストピッカーから市職員へ
1回目のコラムで書きました、フィリピンではゴミ山で売れるものを探して生活するウエストピッカーが大勢います。サガイ市にもウエストピッカーが生活していましたが、衛生埋立処分場の運営に併せて、彼らを市の職員として雇うことにしました。
分別回収された中にも分別されていないモノがたくさんあります。彼らの経験と技術によって、それらを完全分別させます。有機ゴミはコンポスト場へ、有機以外のゴミは埋立処分場へ、リサイクルできるものはリサイクル場へと完全分別が可能になりました。
不安定な収入と劣悪な労働条件で働いていましたが、市がサポートすることで労働環境も改善され、一方で市も衛生埋立場の管理が徹底されWin-Winの関係になりました。彼らと一緒に話している時間は本当に楽しいです。
写真:埋立処分場の作業員
草の根活動だからできること
『草の根活動』とは何か??帰国してもうすぐ2年経過しましたが、いまだに答えを見つけられていません。草の根活動を行う地域は、テレビやインターネットを通して知る世界でも、休日に訪れるところや観光地とも異なります。
草の根活動が必要な地域に住み、住民と同じ時間を過ごす中で、新しい発見や自分自身に気づくことがたくさんありました。2年6カ月の青年海外協力隊としての活動。文化や習慣の違いから、同僚とのケンカも数え切れないほどありました。そんな生活を支えてくれたのも同僚達でした。
「環境問題はサガイ市だけの問題ではなく、フィリピン、そして日本だけの問題でもなく、世界全体に問題である。しかし、世界規模の問題も全てはひとり一人の行動に掛かっている。」この行動のきっかけ作りが、『草の根活動』なのかと思います。
写真:サガイ市役所環境課のメンバー
執筆者プロフィール
山﨑 晃生(やまざき てるお)
アミタ株式会社
海外事業グループ 海外事業チーム
2013年にアミタホールディングス株式会社へ合流し、経営管理グループにおいて本社移転、拠点管理に従事する。現在はアミタ株式会社海外事業グループにて主に東南アジアにおける調査事業および新規事業の立ち上げを担当している。
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