コラム
第1回:限られたページ数をどう活用するか?レポートって毎年作成する意味ありますか?
毎年作成するCSRレポートですが「作ったけど、なかなか本音で読者の声が聞けない」「次回作のために、専門家のアドバイスが欲しい」ということってありませんか?
本企画は、特定のレポートを有識者がレビューし、各社にも活用できる視点をコラムにする第一回。今回は、ソーシャルウェブマガジンgreenz.jpの編集長である兼松佳宏氏、京都大学iPS細胞研究所国際広報室の渡邉文隆氏の2名の若手有識者、及び、レビュー対象になったカスタネット代表取締役社長の植木氏に京都の風伝館に集まって頂き、有識者が本音で切り込むCSRレポートについての対談が実現しました。CSRレポートを読む際の視点として、有識者がどのように考えているのか。当日のファシリテーターはCSRJAPAN(※1)の編集長である猪又が担当しました。
■本コラム一覧
- 第1回:限られたページ数をどう活用するか?
- 第2回:行動の背景、意図、課題認識等をより知りたかった
- 第3回:「できていない理由」の明示が素晴らしい
- CSR本音対談|レポート、毎年出す必要ありますか?
(※1)CSRJAPAN・・・2010年11月4日~2017年6月29日までアミタ(株)が運営していたWebサイト。2017年6月29日以降は「おしえて!アミタさん」サイトに統合。
「CSR活動ができていない理由」が明示されている点はとても誠実
猪又:兼松さんはCSRレポートを読まれてどのような感想をお持ちになりましたか?
兼松氏:貴社を知っている人にとっては手作り感があり、身近に感じられるレポートだと思いました。特に、冒頭4ページ「これからの取り組みと課題」で、今後進めていくべき取り組みにおいて「今それができていない理由」が明示されている点は、とても誠実で素晴らしいなあと。企業報告は、実績・成果と計画だけでなく、課題とその対策を伝えることも重要です。ステークホルダーにとって、うまく行かないこととその理由ほど、知りたいもの。でもそれって普通の企業なら隠したいものでもあるので、清々しいほどの透明性は貴社レポートが多くの共感を呼んだ1つの理由だと思います。
その上で、ひとつ指摘したいのは、貴社のことを知らない人には読みづらい点があるかもしれないということです。ただし、それは想定読者をどこに置くのかによって、達成するべきことも変わってくるものではありますが。改めてどなたを想定読者としているのか、教えていただけますか?
植木氏:一番の読み手は社員であり、その家族です。ですから、作る過程も重要と考えて、最後の印刷以外は社員が作成しました。
画像(上):「これからの取り組みと課題」が明確に書かれているので誠実さが伝わってくる。
画像(下):「一番の読み手は社員であり、その家族」と力説するカスタネット代表取締役社長植木氏
greenz.jpとして大切にしているのは、1つ1つの記事を読者の方への贈り物・ラブレターとして書くように心がける
兼松氏:なるほど。そうすると今の感じはちょうどよいのかもしれませんね。通常、本のように買ったものでなく、無料で手に入るもの、あるいはもらったものは、自分との接点が薄かったりします。大概はパラパラとページをめくって、自分が関心のある事を探すので、写真などのビジュアルを工夫して、フックになるようなものを用意しているCSRレポートは多いですよね。それを敢えて自社で作成して手作り感を大切にするというのは、想定読者に向けてはとても良いことだと思います。ただ、デザインやライティングにはそれなりにコツがあるので、一度プロからノウハウを学んでから、改めてチャレンジすると、さらに多くの人に読んでもらえるようになるかもしれませんね。
また、本文を読んでもらうために大切なのは、読者との接点をつくることです。例えばgreenz.jpの記事では、冒頭で「あるある話」から始めます。朝開催される勉強会「朝大学」のようなものを取り上げる際に、いきなり「こんな素敵なプロジェクトがあるので参加しませんか?」と言ってもスルーされてしまいます。まずは「みなさんは通勤電車で嫌な思いをしたことはないですか?」といった一文を入れて「あ、自分もそういうときがあるなあ。なんだろう?」と思ってもらえるように、読み手との接点をつくるんです。
そういうことも含めて、greenz.jpとして大切にしているのは、1つ1つの記事を読者の方への贈り物・ラブレターとして書くように心がけるということ。不特定多数のために書かれたものよりも、この人のために!と強い思いで書かれた文章の方が、結果的に多くの人に共感を生み出すことがあると思っています。
猪又:誰へのラブレターかによって文章が変わるように、読み手を明確にすることでレポートの表現も変わるはずです。CSRレポートというとどうしてもかたいものになりがちですが、専門家以外を想定読者にする場合は、特に目を引くキャッチや、図解等を活用し視覚的により読みやすくすることが大切ですよね。
画像:「1つ1つの記事を読者の方への贈り物・ラブレターとして書くように心がける」ウェブマガジンgreenz.jp 編集長 兼松 佳宏 氏
レビューするレポート:株式会社カスタネット「小さな企業のCSR報告書」
発行年:2012年 ページ数:18
想定読者:従業員とその家族、既存顧客
業種:オフィス用品卸売業
同レポートはCSR JAPANアクセス数2012年第2位、2013年第3位。
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