島津製作所|イノベーションを支える技術力と応用力で、生物多様性に貢献! | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

島津製作所|イノベーションを支える技術力と応用力で、生物多様性に貢献!おしえて!きかせて!環境戦略

shimadzu_001.JPG1909年に日本初の医療用X線装置を開発した株式会社島津製作所。1875年に京都で創業し、140年以上にわたり技術革新を重ねる同社は、2002年に田中 耕一氏がノーベル化学賞を受賞されたことでも注目を集めました。そんな島津製作所では環境活動において生物多様性で先駆的な取り組みを実施されています。そこで今回は、株式会社島津製作所 地球環境管理室 室長 藤岡 秀治氏、同じく地球環境管理室 主任 岡野 雅通氏にお話をうかがいました。

右から藤岡氏、岡野氏(島津製作所)、米澤(アミタ)

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生物多様性への取り組みは、こうして始まった!

米澤:各社環境活動に取り組むなかで、島津製作所では生物多様性に対する取り組みが印象的です。本社工場につくられた「島津の森」は、その一つの象徴と言えますね。

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画像提供:島津製作所

藤岡氏:そうですね。2014年に本社棟を建替える際に、自然な森をつくろうというコンセプトのもと、構内の南側一帯に京都や近隣地域の在来植物を中心に植栽して整備しました。この「島津の森」は、2015年にハビタット評価認証(※)の最高ランクであるAAAの認証を京都府内で初めて取得しました。西日本での製造事業所としても当社が初めての取得となりました。その後、京都の葵祭で使われるフタバアオイの育成などにも協力し、生物多様性の保全を通じた文化の継承にも取り組んでいます。

※生物多様性への効果的な取り組みを推進することを目的とする、公益財団法人 日本生態系協会が定める制度。生物多様性の価値を数値化し、客観的な評価を行う。

米澤:工場の中にそうした空間があるのは素敵ですね。島津製作所の生物多様性に対する取り組みが際立ってきたのは、どのような経緯があったのでしょうか。

岡野当社にとっては2010年に名古屋で開催されたCOP10が1つの契機となりました。生物多様性に対する人々の関心が高まり、重要課題として世界的に議論されていく流れがありましたので、その数年前から取り組みを開始しています。

shimadzu_004.jpg元々当社では、子どもたちに遊びながら楽しく環境問題を学んでもらうため「え~こクラブ」という社内のチームが中心となって、環境教育のための教材を作成し、出前授業を行うという活動がありました。この活動の中で、絶滅危惧種に指定された動植物について学ぶことのできるカードゲーム「bidi」を、同志社大学様と京都精華大学様とのコラボレーションで2008年に制作しました。

画像提供:島津製作所
生物多様性を題材としたカードゲーム「bidi」


米澤:「え~こクラブ」には、どういった方が参加されているのですか。

岡野氏:「え~こクラブ」は、社内のさまざまな部署から参加した女性のみで構成されるチームで、15名(2017年2月現在)のメンバーで構成されています。活動は就業時間内に行っており、活動のための予算も準備されています。一方でノルマ等は設けずに、自由な発想が生まれやすい環境の中で活動が続いてきました。

米澤:部署を越え全社的活動として取り組むことで、社内の環境意識の啓発にも貢献しますね。就業時間内に行える、予算もつけるなど、活動が続けやすい環境をしっかり整えられていますね。

藤岡「え~こクラブ」が始まってから、かれこれ17年になりますが、よく他社の方から「これほど長く続く秘訣は何か」といったご質問をいただくことがあります。秘訣かどうかはわかりませんが、2006年に地球温暖化防止活動 環境大臣表彰、2013年に第1回生物多様性アクション大賞の「つたえよう」部門の優秀賞、2015年に京都環境賞の企業活動賞を受賞するなど、外部から評価される機会が比較的多くあり、モチベーション向上に繋がっていると感じます。

岡野氏:「え~こクラブ」が中心となり、生物多様性にかかわる社外に向けた活動が生まれたので、次は会社全体としての取り組みを行うために、生物多様性を社内にどう落とし込めばよいかということを考えました。2008年には「生物多様性への貢献」という視点を加える形で、会社としての環境方針を改訂しました。また、社内教育、廃棄物の削減など、今までの環境活動を改めて整理し、島津らしい特徴ある取り組みを毎年1件ずつ追加していこうと決めて、徐々に拡大してきました。「島津の森」もその一環で生まれたものです。

本業で生物多様性に貢献!研究開発を支える島津の技術力と応用力

米澤:島津製作所の本業と、生物多様性の取り組みについても、詳しくおうかがいしたいと思います。生物多様性は、重要な課題として認識される一方で、なかなか企業にとっては本業と結びつけることが困難なテーマですよね。

岡野はい。我々も、これまでの活動は社会貢献的な側面が強かったため、もっと生物多様性と本業を繋げるにはどうしたら良いかを常々考えていました。当社では、直接的に生物資源を使って製品を作ることは基本的にありません。しかし、もし本業を通じて生物多様性の保全や活用を見せることができるようになれば、それは確実に当社の強みになると考えていました。そして、当社の本業に立ち返った時に、分析計測機器をはじめとした最先端の技術によって生物多様性に関わる研究開発の領域に貢献できることに気が付いたのです。

米澤:特に注目されてきたのがバイオミメティクスの分野ですね。

藤岡氏:はい。バイオミメティクスは「生物模倣」とも言われますが、例えば「サメ肌」や「ハスの葉」など、生物が作りだした構造やその機能などを利用して、新素材や新製品の開発をすることと定義されています。例えばこうした動植物の組織を解析したいと考えたとします。解析というのは、まず見ることから始まります。例えば「どんな形をしているか」「どんな構造になっているか」ということをさまざまな顕微鏡で観察します。また、当社の産業用X線CTの場合は対象物を破壊せずに、中を透かして見ることが可能です。次に表面構造のザラザラ感などをかもし出す凹凸の寸法や、その硬さを測り、さらに材質は何かを測ります。総合分析機器メーカーである当社は、こうした「見て測る」ための最新技術を幅広く備えています。これらの技術が、バイオミメティクスの研究開発において、大きな強みを発揮しているといった声を多くの研究者の方々からいただいています。

米澤:貴社の機器がバイオミメティクスの研究開発に役立ち、生物多様性を利用した新たなイノベーションを後押ししているのですね。

shimadzu_005.JPG藤岡氏:はい。今後様々な分野で、新素材を開発していく上で、バイオミメティクスは重要なヒントをもたらすと考えます。今後、新エネルギーの開発、環境に関わる製品の開発などにおいて、バイオミメティクスが利用されるケースは非常に多くなるでしょうね。

岡野氏:その他にも、微生物や植物による「代謝」というメカニズムに着目した研究開発も行われています。これは排水や土壌中の重金属などを体内に蓄積するプロセスを用いて、環境浄化に用いる技術です。こうした研究でも、微生物や植物による活動のための最適条件を分析したり、本当に化学物質が回収されて浄化されているかどうかなどを調べるために、当社の装置が利用されています。

米澤:なるほど、生物多様性を利用したイノベーションを支えるために必要な技術を揃えていらっしゃるわけですね。

岡野氏:揃えたというより、もともと本業として培ってきた技術の中に、イノベーションの下支えとなる技術が揃っていた、というのが正しいでしょうね。
何よりも、応用力が大きいと思います。環境以外の分野でも言えることですが、1つの製品で1つの使い方だけをしていたら、ここまでの会社にはなっていないと思います。例えば、過去には石油化学産業の発展を支えてきた分析計測機器が、成分分析という点から環境保全や食品安全に関わる分析に使われるようになり、最近ではさらにがんなどの病気の早期発見を目的とした血液の分析へも応用されようとしています。

藤岡氏:私が入社した頃から、製品を開発したらその用途開発をすることを意識していました。使い道がもっと他にあるのではないかと、常に上司や経営層から言われていましたよ。

米澤:応用することを常に意識されていたことが、様々な分野での活躍を可能としたのですね。10年以上続く「え〜こクラブ」の活動も、生物多様性と貴社の関わりを再認識し、本業と一致させるに至った背景も、こういった知的好奇心や応用力という土台があったからこそではないかと思います。

藤岡氏:我々が社会に対して直接的にイノベーションを起こすというよりも、お客様がイノベーションを起こす時の下支えになること、そしてイノベーションを起こす際に必要となる装置を開発することで社会に貢献してきた実績があります。

「人と地球の健康」という経営理念に即した事業をしっかりと展開してきたと思いますし、また今後もこの経営理念の具現化が社会への貢献となり、当社の持続的な成長をもたらすと考えています。

米澤:今後も、貴社の今ある技術がどのように応用され、環境、生物多様性など様々な分野でどのように活用されていくのか、非常に楽しみですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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話し手プロフィール

shimadzu_mr.fujioka.jpg藤岡 秀治 (ふじおか しゅうじ)氏
株式会社島津製作所
地球環境管理室 室長

1983年に株式会社島津製作所に入社し、約25年間、分析計測機器の販売に従事。静岡支店長、横浜支店長を経て、2014年から現部署室長として環境経営を推進している。

shimadzu_mr.okano.jpg岡野 雅通 (おかの まさみち)氏
株式会社島津製作所
地球環境管理室 主任

2007年に株式会社島津製作所に入社。化学物質管理、廃棄物管理に関わる全社的なコンプライアンス対応や社内の環境教育、環境レポートの編集などに従事。

執筆者プロフィール

yonezawa2.jpg米澤 理音 (よねざわ りお)
アミタ株式会社
カスタマーホスピタリティグループ 西日本チーム

東京都出身。持続可能な社会を本気で目指すアミタの事業とその理念に共感し、入社。現在は、カスタマーホスピタリティグループ 西日本チームにて、リサイクルの配車連絡、非対面の営業等を担当。

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