サラヤ|経営トップが動く!現場主義のCSR | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

サラヤ|経営トップが動く!現場主義のCSRおしえて!きかせて!環境戦略

saraya_no1.jpg看板商品である「ヤシノミ洗剤」をはじめ、地球環境にやさしく、衛生・健康に貢献する商品を数多く生み出してきたサラヤ株式会社は、第4回日経ソーシャルイニシアチブ大賞企業部門賞を受賞、DBJ環境格付では2回連続で最高ランクの評価を受けるなど、環境分野において高く評価されています。
今回は、サラヤ株式会社の取締役で、コミュニケーション本部 本部長 兼 コンシューマー事業本部 副本部長の代島 裕世氏、総務人事本部・CSR推進部 専任課長の小辻 昌平氏にお話をおうかがいしました。

写真:右から代島氏、小辻氏(サラヤ)、米澤(アミタ)

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持続可能なパーム油調達のためRSPO認証を取得

saraya_no2.jpg米澤:「ヤシノミ洗剤」をはじめとするサラヤの商品には、持続可能なパーム油であることを証明する、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議、以下 RSPO)認証・グリーンパーム認証を取得しているパーム油が使用されていますね。

代島氏:はい。パーム油というのはアブラヤシの実から搾られる油で、主な産地はインドネシア、マレーシアです。消費量が年間約6,200万トンと、大豆油を抜いて世界でもっとも消費されている植物油脂です。石けん・洗剤・化粧品にはアブラヤシの種から搾るパーム核油が使われます。サラヤの一般消費者向けの商品はRSPO認証・グリーンパーム認証を取得しています。2020年までに、すべての商品についてRSPO認証を取得する計画です。

米澤:なぜ、RSPO認証パーム油を使用するようになったのですか?

代島氏: 2004年、マレーシアのボルネオ島での熱帯林破壊の問題がテレビ番組に取り上げられ、当社の更家 悠介社長がその番組に出演したことがきっかけでした。我々はそこで初めて、ボルネオで生物多様性が失われていること、その原因がアブラヤシ農園のプランテーション開発であるという事実を突きつけられました。パーム油はアブラヤシを収穫してから24時間以内に搾油しないと劣化する性質を持つため、搾油工場を併設する必要があり、採算を合わせるため大規模農園で生産されます。大規模農園開発が無秩序に進んだことで、豊かな生物資源が失われていることや、行き場をなくしたボルネオゾウやオランウータンなどの野生動物が、人間の乱開発によって命を落としている事実が徐々に明らかになっていったのです。

米澤:それで周辺環境に配慮した原料を調達しようとされたのですね。

代島氏:はい。この問題を解決するアプローチの1つとして、RSPOへ参画しました。RSPOは2003年にWWFを中心に始まったのですが、サラヤは2005年に初めて参加して以来、一回も欠かさず出席しています。今後、サラヤの商品を持続可能な視点でお客さまに届けるためには、労働環境や自然環境に配慮した原料調達が欠かせないと考えています。

「商品のストーリー」で消費者の心を掴むマーケティング

米澤:RSPO認証パーム油の利用にとどまらず、ボルネオで環境保全活動にも取り組まれています。なぜでしょうか?

代島氏:現場を知ってしまったからです。我々はボルネオに2004年から調査に入っていますが、現地ではRSPOだけでは解決できない課題があることがわかりました。そのまま課題が放置されると不買運動が起こるリスクもありました。そこで2006年、ボルネオでの生物多様性保全活動と環境保護活動を行なうために「ボルネオ保全トラスト」というNGOを現地で立ち上げました。具体的には、動物たちの自由な移動と生態系維持のため、プランテーションの開発でとぎれとぎれになってしまった約20,000haの熱帯雨林を野生動物が自由に行き来できるようにつなげる「緑の回廊プロジェクト」という取り組みなどを行なっています。また、2007年から「ヤシノミ洗剤」をはじめとする対象商品の売り上げの1%をボルネオ保全トラストに支援金として拠出する、コーズマーケティング(※1)をはじめました。以来、有難いことにお客様にもご理解いただき売り上げは伸び続けています。

(※1) 消費者が特定の商品やサービスを購入することで、社会貢献や環境保護に貢献する活動に寄付することができるという価値を伝え、売上数の拡大を目指すマーケティング活動のこと。

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画像提供:サラヤ株式会社

米澤:コーズマーケティングが「ヤシノミ洗剤」の売り上げに貢献しているのですね。

saraya_no4.jpg代島氏:「ヤシノミ洗剤」はこの10年で、ソーシャルプロダクツと呼べる商品に変わってきました。最近ではエシカルコンシューマーと言われる人「モノ選びは投票と一緒だ」と考える人が増えていると実感しています。

米澤:一方で、一般的には、エシカルだから、環境によいモノだからというだけでは売れない、という話も聞きます。

小辻氏:確かに、きれいごとだけで市場が動いているわけではありません。我々はニッチマーケットで勝負しているので成り立つところがあるかもしれないです。

代島氏:我々は商品自体がストーリーを語らねばならない、という考えを持っています。インターネットの普及でコミュニケーションコストが下がっていますので、お金をかけなくても商品の持つストーリーが伝わる努力をすることが重要です。もちろん独りよがりにならないように情報を整理する必要はありますが、CSRを本気でやっていることがSNSなどを通じてお客様に伝わるかどうかが、企業の生き残りの鍵となる時代になってきたと思っています。

米澤:なるほど、SNSなどのインターネットを使ったコミュニケーションがとりやすくなったことで、CSRの取り組みがそのままマーケティング活動につながっている、ということですね。

代島氏:ボルネオのほかにウガンダ共和国でも取り組みを始めており、そちらは現地スタッフに2週間ごとにFacebookで発信してもらっています。

創業時のミッション「手洗い」をウガンダでも展開

saraya_no5.jpg米澤:ウガンダでの取り組みについても、教えていただけますか?

代島氏:サラヤでは、ウガンダでチャリティプログラムとソーシャルビジネスを展開しています。2010年よりユニセフに協力し「手洗い」からはじまった会社として「100万人の手洗いプロジェクト」を開始しました。ウガンダでの病死の原因はマラリアが1位ですが、2位が呼吸器疾患、3位が下痢で、どちらも手洗いによる予防が非常に有効です。現地で驚いたのは、医療現場では誰もアルコール消毒をしていないのに、イギリスの植民地だった背景からか蒸留酒の製造は盛んだったこと、つまりアルコール消毒剤を作れる環境が潜在的にあったことでした。

小辻氏:他にもサラヤのビジネスが成立する環境であることがだんだんとわかってきて、アルコール消毒剤を普及させるために2011年5月にSARAYA EAST AFRICAを設立、同年9月にはJICAのBOPビジネス連携促進制度の助成金案件に採択されました。その後2014年から「病院で手の消毒100%プロジェクト」を開始し、アルコール消毒剤をウガンダ現地生産し、院内感染予防に取り組んでいます。

代島氏: SARAYA EAST AFRICAは大きな可能性を持っていると確信しています。ヴィクトリア湖の周りを結ぶ一つの大きな経済圏がビジネスとして非常に魅力的なのです。日本とは対照的に、人口はもうすぐ2億人を超え、平均年齢も20歳くらいと若いです。

本業のなかに位置づけられている、サラヤのCSRとは?

saraya_no6.jpg米澤: CSRに取り組む中で、意識されていることはありますか。

小辻氏:今取り組んでいることが、すべての問題を解決できているとは思わないことですね。ご指摘やご批判はサラヤに対するエールだと受け取って、それに対して、すぐに解決できなくても、何らかの答えを出していくということをやめない、ということが重要だと思っています。

米澤:サラヤのCSRは、しっかりと本業に結び付いていますね。

代島氏:20世紀のビジネスモデルを「サステナブル」がキーワードとなる21世紀のモデルに再構築している感覚があります。どういう事かというと、1970年代に水質汚染の対策として作った「ヤシノミ洗剤」ですが、持続可能な原料調達という宿題がでてきました。不売運動にも繋がりかねない宿題に対する答えの模索を、まだCSRという言葉が浸透していない頃から必死にやってきただけなのです。

米澤:本業でCSRを実践するために重要なこととは何でしょうか。

代島氏:サラヤには「現場を見なければわからない」という主義があります。経営トップ自ら現場を見てもらい、問題を一人称で捉えてもらうことが非常に大切です。ボルネオでは更家 悠介社長が保護された子ゾウに直接触れることで、強烈な印象を持ち、その後のプロジェクトにつながりました。その経験があったため、ウガンダでは視察初年度から経営トップ自ら視察し、現地状況を目の当たりにしましたので、我々現場との間でスムーズに認識を共有することができました。

米澤:本業と一致したサラヤのCSRは、トップ自ら現場を見ることからはじまるのですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

サラヤのCSRまとめ
  • RSPO認証パーム油の調達にとどまらず、現地の課題解決につながる取り組みを行い、コーズマーケティングを通じて消費者を惹きつける。
  • コミュニケーションコストが低いSNSなどのツールをうまく活用して、消費者に商品のストーリーを伝える。
  • 経営トップに現地視察してもらうことで、現状認識を現地で行う。
関連情報
話し手プロフィール

mr.daishima.jpg代島 裕世 (だいしま ひろつぐ) 氏
サラヤ株式会社
取締役
コミュニケーション本部 本部長 兼 コンシューマー事業本部 副本部長

大学卒業後、進学塾講師、雑誌編集、ドキュメンタリー映画制作、タクシー運転手などを経験した後、1995年同社入社。商品企画、広告宣伝、広報PR、マーケティングを担当。現在はコミュニケーション本部とコンシューマー事業本部を兼任。NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン理事。


mr.kotsuji.jpg小辻 昌平 (こつじ しょうへい) 氏
サラヤ株式会社
総務人事本部・CSR推進部
専任課長

大学で微生物化学を専攻、卒業後食品メーカーで商品開発を担当した後、衆議院議員の公設秘書を経て、1998年サラヤ株式会社入社。主に総務部門に従事し、2010年CSR推進部発足時から同部へ。会社勤務の傍ら市民参加型ミュージアム「直木三十五記念館」を設立・運営。現在同記念館事務局長。

執筆者プロフィール

yonezawa2.jpg米澤 理音 (よねざわ りお)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ マーケティングチーム

東京都出身。持続可能な社会を本気で目指すアミタの事業とその理念に共感し、入社。現在は、マーケティングチームにて、非対面の営業・セミナー企画・ウェブサイトの運営などを担当。

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