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産業廃棄物管理票交付等状況報告書の報告様式と考え方BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

Some_rights_reserved_by_NobMouse1.jpg既に対応を終えられている方もいらっしゃるかもしれませんが、この季節になると排出事業者の頭を悩ますのが「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」と「多量排出事業者の計画・実施状況報告書」ではないでしょうか。
どちらも、報告の期限が6月30日となっていますので、該当する方はお忘れ無く。
「該当する方は」と書きましたが「多量」の方は、普通産業廃棄物なら年間1,000トン(特管産業廃棄物は50トン)以上の事業所だけが該当になりますので、関係しない方も大勢いらっしゃると思いますが「マニフェスト」の方はほとんどの方が該当するでしょう。今回は、ほとんどの方が該当する「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」について、取り上げてみたいと思います。

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報告様式

ご存じのとおり、この「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」は「紙マニフェスト」を交付した事業所であれば、たった1枚でも、わずか数キロの産業廃棄物の委託であっても該当します。

ただし、すべて「電子マニフェスト」を使用している事業者は、電子マニフェストを運用している「情報処理センター」(「(公財)日本産業廃棄物処理振興センター」が情報処理センターの指定を受けています)から行政に報告が行きますから、排出事業者が報告書を提出する必要はありません。

さて、この「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」は省令で様式が定められているのですが使いづらく、排出事業者からも、実は自治体の担当者からも、あまり評判が良くないようです。平成10年の省令改正時に現在の様式になり、すでに20年近く使用されていますから、各社パソコンに登録しているところも多く、安易に様式を変更するとクレームになりかねません。よって、この報告様式は、なんらかの大きな改正でもあった機会に「ついでに」改正するしかないと思いますから、皆さんもしばらくはこの様式に付き合わなければならないと覚悟しておいてください。

記載事項で注意する点

「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」の様式の記載事項を見ていきましょう。
まず、この報告は原則として「排出事業所ごと」に報告しなければなりません。ですから、同じ県内に工場が2つ3つある会社は、その数だけ報告書を作成しなければなりません。

ただし「排出場所が短期間に転々と移動する」場合などは、いくつかの事業所分をまとめて「1事業所」として提出することも可能です。たとえば、建設業に関しては、建設現場が「排出場所」に該当しますから、年間でいくつもの現場を抱え、短期間に現場が変わることもよくあることなので、こういった時は1つの報告書として提出してもよいとしています。

次に、この報告書は「産業廃棄物の種類ごと、処理委託先ごとに記載しろ」となっています。ここがこの様式のもっとも「扱いにくい」要因でもあります。

マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、委託の度に、運送会社・処理会社・産業廃棄物の種類毎に「交付」しているので、結構な枚数になっているケースが多いわけですが、これを整理して1枚の報告書に書かなければならない訳です。
大きな事業所では、お付き合いしている処理会社も複数いるでしょう。

たとえば、A排出事業所では、廃プラスチック類と汚泥は収集運搬B社を経由して、中間処理をC社とD社に委託している。金属くずとがれき類は収集運搬E社とF社を経由して中間処理をG社に委託している、という時は下記表のように8パターンの「記載欄」が必要となり、それぞれで年間何トン委託したかを集計し、記載しなければなりません。

パターン 排出事業所 産業廃棄物種類 収集運搬会社 中間処理会社
1

A事業所

廃プラスチック類

B社

C社
2 D社
3 汚泥 C社
4 D社
5 金属くず E社

G社

6 F社
7 がれき類 E社
8 F社

年間1~2回、受託業者が1社ずつであればいざしらず、多くの会社ではマニフェスト単票を保管しておくだけでは、この報告書を作成するのは「不可能」と言ってもいいでしょうね。

ちなみに、報告書をエクセルなどの集計ソフトを使用して作成している事業者も多いことと思います。時折「うちは収集運搬会社が報告書を作成してきてくれるので、判子を押して提出するだけだ」という方もいらっしゃいます。

大丈夫ですか?

ほとんどの業者さんはまじめで誠意のある方々だと思ってはいますが、中には例の「横流し事件」のように、自分の都合の良いように虚偽の報告をしていないとも限りません。判子を押して行政に提出するということは、そこから以降は自社がその報告をした、となってしまいます。判子を押す前に、一度、自分自身でチェックすることは必要ですね。

産業廃棄物の種類

次に頭を悩ませるのが「産業廃棄物の種類」です。原則的には法令で規定している「産業廃棄物20種」の表現を使用してくれ、となっていますから、本来なら「建設廃棄物」や「廃電機機器」という記載はだめです。しかし、マニフェストについては、平成23年3月17日付けの「産業廃棄物管理票制度の運用について」という通知の中で「複数の産業廃棄物が発生段階から一体不可分の状態で混合しているような場合には、これを一つの種類として管理票を交付して差し支えない」とされています。そのため、慣用的に使用されている混合廃棄物の呼称のいくつか(「建設混合廃棄物」や「シュレッダーダスト」など)は使用してかまわないとしている自治体もあります。
マニフェストの記載が「産業廃棄物20種」の表現と異なる場合は、報告書を受け取る自治体に確認してみましょう。

排出量の把握

様式では「統計」「集計」のため「排出量」については「t(トン)」で表記してくれ、としています。従って、時折、有害な廃酸が、一瓶(300グラム)ほど排出された時などは「0.0003t」となってしまいます。
さらに、前述のマニフェスト通知では「ドラム缶1本」「4tダンプ一台」のような表記でも良い、としているものですから、報告の時点で「トンで表記しろ」と言われても困ってしまうときも出てきます。そのような時は「体積、重量換算表」などを提示している自治体も多いのですが、これにも注意が必要です。
と、言うのは、産業廃棄物の「体積」と「重量」は状況により大きく違ってくるためです。
たとえば、同じ「廃プラスチック類」でも、塩化ビニルと発泡スチロールは2桁位違ってしまいます。「木くず」は乾燥している状態と、雨に濡れて湿気っている状態では違ってくることは感覚的にもご理解いただけると思います。
ですから、できれば、あまり換算表に頼らず、自社から出て行く産業廃棄物は「どの程度の重さ、比重、体積なのか」あたりは承知していても損は無いと思います。

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執筆者プロフィール

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社
特別顧問

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

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