コラム
第13回:企業価値を高めるステークホルダーコミュニケーション【前編】商品価値から企業価値へ~2030年の環境戦略の姿~
2030年の社会状況や環境制約を見据えたときに、企業はどのような環境戦略・価値創出を行っていくべきかをお伝えする、本コラム。
前回は企業が海外進出をしていく際に、考慮すべき海外の環境リスクについてご説明しました。第13回目は企業の環境・CSR活動を経営戦略と絡めて効果的に発信し、企業価値を向上させる「環境・CSRコミュニケーション」について解説します。
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今後重要となってくるCSVの重要性
これまでの連載でも書いてきたとおり、今後ますます厳しくなる環境制約下の中で、企業は環境に関するリスク対策を実施し、持続可能な経営を行う必要があります。そのためには、商品やサービスに企業独自の環境付加価値をつけ、企業価値そのものを向上させることで他企業と差別化された競争力を獲得することが重要です。
では、企業価値を向上させる企業独自の環境付加価値とは、具体的にどういったものでしょうか?これは環境領域におけるCSV(Creating Shared Value)の実践ともとらえることができます。CSVとは、社会的な価値と経済的価値を両立させて、企業の事業活動を通じて社会的な課題を解決していくことを目指す考えです。これは「本業におけるCSR(企業の社会的責任)」に似ています。CSVとCSRの関係を整理していきましょう。
CSRは「守りのCSR」と「攻めのCSR」の2つに分けることができます(図1,2参照)。「守りのCSR」は法的責任や経済的責任など企業経営で必ず実施する必要がある活動です。しかし、これらの活動は他の企業も同様に実施しているので差別化要因にはなりません。
「攻めのCSR」は企業が自発的に実践する活動です。例えば、社会課題を事業で解決する「本業における環境・CSR活動」や、フィランソロピー活動・メセナ活動などの社会貢献活動があります。つまり「本業における環境・CSR活動」は「CSV=企業の事業活動を通じて社会的な課題を解決していくこと」と言いかえられ、これこそが企業が持続可能な経営をしていく上で重要となる企業価値を向上させる付加価値なのです。
次回は効果的な「環境・CSRコミュニケーション」のポイントをお伝えします。
※本コラムは(株)ポスティコーポレーションの専門誌「ラバーインダストリー 2016年2月号掲載」記事を一部改編して掲載しています。
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執筆者プロフィール
猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社環境戦略デザイングループ
シニアコンサルタント「CSR JAPAN」元編集長
外資系ネット企業やベンチャーキャピタルを経て大手人材紹介会社で新規事業を軌道に乗せた後、アミタに合流。環境・CSR分野における仕事・雇用・教育に関する研究。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」「CSR JAPAN」等をプロデュース。現在、企業や大学、NPO/NGOなどで講演、研修、コンサルティング、新聞や本の執筆活動など多数活躍中。共著:「CSRデジタルコミュニケーション入門」(good.book)
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