第12回:アジアに展開する日本企業を取り巻く環境管理リスク【後編】 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

第12回:アジアに展開する日本企業を取り巻く環境管理リスク【後編】商品価値から企業価値へ~2030年の環境戦略の姿~

Some_rights_reserved_by_thoughtfactory.jpg2030年の社会状況や環境制約を見据えたときに、企業はどのような環境戦略・価値創出を行っていくべきかをお伝えする、本コラム。

前回は、海外における廃棄物リスクについて解説しました。第12回は、環境事案に巻き込まれないための対策についてご説明します。

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ASEAN諸国での環境リスク事例

ASEAN諸国で実際に日系企業が巻き込まれた事例を2つご紹介します

【1 委託先の不法投棄に巻き込まれた事例(ベトナム)】

日本企業Aは現地廃棄物処理会社とのつながりも少なく、同工業団地の管理会社から現地処理会社を斡旋されました。多くの外資系企業が入居する工業団地管理会社からの紹介なので安心して、現地処理会社に廃棄物処理を委託したところ、不法投棄に巻き込まれてしまいました。この事例で日本企業Aは「排出者責任は事業者にある」と判断されて、ペナルティが課されました。

【2 現地社員が行政職員と癒着し刑事罰を受けた事例(中国)】

日系化粧品外包装メーカーが地元の法務当局職員に賄賂を渡し、4年間危険廃棄物計100トン以上を不法投棄(一般生活ゴミとして埋め立て処分)していました。本件は地元住民の通報で事件が発覚し「危険廃棄物3トン以上で刑事事件扱いする」という最高裁の解釈に基づき、民事ではなく刑事事件として処理されました。担当者は懲役7年、20万元(約400万円)の罰金を課せられました。

環境事案に巻き込まれないための対策

事例などから海外では国内と比べてモラルが欠如した行為や法の抜け穴などをつく運用が多く存在することがわかります。外部組織だけでなく、日本から派遣した社員や現地採用社員などが外部と癒着しやすい事も考慮し、適切な管理体制を構築する必要があります。
まずは環境関連法について日本との相違点を明確にし、現地法を一通り把握しましょう。また、法令制度が頻繁に変更されるため、自社の法令順守状況を定期的に確認し、都度適切に対応する必要があります。残念なことに現地環境・治安当局でも、環境法を熟知していないことが多いため、環境関連法に強い弁護士や現地コーディネーターなど現地ブレーンとのネットワークを確保しましょう。その上で以下のような準備が必要です。

  1. 常時法令遵守された状態にして、必要書類は揃えて、当局から検査されても問題ない状態を保つ
  2. 社内管理規定、管理台帳、緊急対応プランなど社内体制を整備する
  3. 環境当局や周辺住民(NGO含む)などのステークホルダーと関係構築をはかり、客観的な視点で自社の環境リスクをチェックする


【環境関連法を理解するポイント】

必要なのは各国の「法体系が異なる」ことを理解し、『A国ではこうだったからB国でも同じはず』という先入観を排除しましょう。その上で以下ポイントを抑えて対策をとりましょう。

  1. まず罰則のある条項を優先的に確認し、上位法令・関連法令・通達、引用標準、過去・現行法令も参照する。最終的に現場担当者は法令のポイントだけでなく全文に目を通す
  2. 日本語訳で翻訳の意味がずれることに注意する
  3. 規制の草案段階で担当省庁よりパブリックコメント段階の法案が公表される。策定の背景・経緯・根拠などの説明が掲載されている場合があるため確認する

【不法投棄に巻き込まれない廃棄物処理会社の探し方】

探し方は「環境当局や管轄自治体の窓口に問い合わせる」か「環境当局公式サイトに掲載されている事業者一覧を参照する」方法がよいです。但し紹介された会社でも、契約書の精査や処理フローの確認、現地確認を行い、信頼できる処理事業者かどうかをチェックしましょう。処理会社は現地確認を受けることに消極的なことが多いですが、信頼関係を構築するためにも定期的な現地確認をお勧めします。もし現地に環境関連の日系企業が進出していた場合、有力な選定候補にすべきでしょう。意思疎通のハードルも下がり、品質面でも日本基準のサービスが期待でき、リスクを抑制できる可能性が高くなります。

【ローカルスタッフへの対応】

各人の性格・知識・能力を把握し、不安な場合は日本の熟練職員や外部第三者コンサルを派遣して講習を行うなどの対応を実施しましょう。特に「トラブルが発覚しなければ問題ない」という認識が強く、問題が起きても、自身への評価を気にして報告しない傾向があります。任せきりになると関係者との「馴れ合い」が積み重なり、重大なリスク案件に発展する可能性が高まります。そういった事を未然に防ぐためにも、現地に赴いて不定期的に監査を行う事も重要です。

※本コラムは(株)ポスティコーポレーションの専門誌「ラバーインダストリー 2016年1月号掲載」記事を一部改編して掲載しています。

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アミタの支援サービス「The Sustainable Stage」では、廃棄物管理を始め、脱炭素にかかる施策(CDP質問書への回答、SBT、RE100への取組み・実践体制の構築、支援など)、SDGs、生物多様性、バイオマス発電など企業の持続可能性を環境面から支えるための支援を行っています。

執筆者プロフィール

main_img.png銘苅 洋 (めかる ひろし)
アミタ株式会社
海外事業チームチームリーダー

1998年に現アミタ株式会社に合流。国内の民間排出事業者への産業廃棄物再資源化の提案営業、ゼロエミッション支援、環境コンサルティングに従事後、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)へ出向、客員研究員。国際協力機構(JICA)技術協力プロジェクトにてケニアに専門家派遣(廃棄物管理能力向上PJ)。現在はアジア地区における国際資源循環事業や公官庁の環境関連調査、台湾とマレーシアにおける循環資源製造所の立ち上げに携わっている他、JICA研修講師や大学非常勤講師、環境リスクセミナー講演、各種雑誌への寄稿も行う。

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