コラム
第10回:循環型社会に向けた「専ら物」堀口昌澄_連載「揺らぐ廃棄物の定義」
本連載シリーズでは、廃棄物関連のコンサルタントや研修を数多く実施してきたアミタの主席コンサルタントの堀口昌澄が、連載12回を通じて「揺らぐ廃棄物の定義」について解説します。 廃棄物を取り巻く法の矛盾や課題を理解することで、今後起こりうる廃棄物関連法の改正への先手を打つことができます。
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今回は「専ら物」に関する規制緩和の流れから廃棄物の定義について解説いたします。本コラム記事の一覧はこちらから。
「専ら物」既存業者の保護と激変緩和のための特例措置
「専ら物」とは正式には「専ら再生利用の目的となる一般廃棄物と産業廃棄物」を指す。「古紙・くず鉄(古銅等を含む)・あきびん類・古繊維)」の4種類が専ら物に該当し、これらは通称「専ら4品目」とよばれている。専ら物は「許可不要」「マニフェスト不要」という2つの特例が明示されている。
免除される業務 | 根拠条項 |
処理業許可不要 |
規則第1条の17、同条第1条の18、法第7条第1項、同7条第6項、規則第8条の2の8、同条第8条の3、法第14条第1項、同条第6項 |
マニフェスト不要 | 規則第8条の19 |
契約書の作成義務は免除されていないため、産業廃棄物の場合は契約書を作成しなければならない。しかし「専ら物は廃棄物ではない」という誤解のために、契約書が作られていないことも多い。このように「専ら物」は廃棄物管理で最も煩雑な管理業務を省略できるため「専ら4品目」のリサイクルはスムーズに行われてきた。
そもそも「専ら物」の規定は既存業者の保護と激変緩和のための特例措置として設けられた。そのためにこの通知は「専門に取り扱っている既存の回収業者」を対象としている。確かに既存の回収業者に廃棄物処理法の許可取得を課してしまうと、施行後しばらく専ら物の回収・リサイクルは混乱していただろう。しかし、施行後40年以上を経過した現在、通知本来の目的を考えれば「専ら物」を扱う業者も許可を取得するのが筋だろう。
実際「専ら物」を専門に扱う既存業者はそれほど残っていない。専門でも既存でもない業者が専ら物を扱うことについて行政に確認すると、許可不要と指導されることが多い。つまり法施行時の既存業者の保護という目的は消え、事実上リサイクル促進の軽減措置になっている。政策的には正しい方向だといえるが、方法論として正しいのだろうか。
専ら物の目的を変えて品目を拡大する
リサイクル促進の軽減措置であるとするならば、この軽減措置は法施行当時の4品目に限定せずに拡大するか、同様の特例制度を別途作ることができないだろうか?例えば、缶とガラスビンが専ら物ならば、ペットボトルも専ら物とすべきなのではないか。家庭で洗浄後にスーパーの店頭で回収される食品トレーも専ら物と考えられないのか。学校ではペットボトルも食品トレーも綺麗に洗っておけば資源としてリサイクルされるので、ゴミではないという教育をしている。これが、一般市民の感覚であろう。
これは廃棄物処理法に関する規制改革会議でもテーマとして取り上げられた議論だ。専ら4品目のみが特権的地位を保ち続ける。これは現代日本社会の一般的感覚からも、環境制約が厳しくなり、資源の有効利用が重要になってくる世界の常識からもずれているような気がする。外部の市民感覚、さらには海外に目を向けて国際感覚を持つことで、将来の循環資源法制の新たな地平が開けてくるのではないだろうか。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 環境戦略機能チーム 主席コンサルタント(行政書士)
産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。 環境専門誌「日経エコロジー」にも連載中。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。大気関係第一種公害防止管理者、法政大学大学院特別講師、日本能率協会登録講師。
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