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コラム

廃棄物処理法政令市トリビアBUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

Some_rights_reserved_by_Nick_K_Nikos_Koutoulas_.jpg今回の話題は、2015年4月1日より施行された改正地方自治法を受け「今後、廃棄物処理法政令市が増えていくよ 」ということで、いわゆる中核市をテーマに取り上げてみました。数多い廃棄物処理法の「トリビア」の1つと思って気楽にお付き合いいただければ、と思います。

Some rights reserved by Nick K Nikos Koutoulas

中核市と廃棄物処理法 関係のおさらい

廃棄物処理法の規定のうち、産業廃棄物に関する権限・業務は、原則的に都道府県知事が行っています。具体的には産業廃棄物処理業許可、処理施設設置許可、マニフェストの報告受理等です。

しかし、一部の権限・業務については「市」が行っています。具体的には、その「市」のエリア内で中間処理や最終処分を行う場合や、収集運搬の積替保管を行う場合です。

ただ、全ての「市」がこれに該当する訳ではなく、廃棄物処理法の政令で規定している「市」に限定されていて、具体的には地方自治法の指定都市、中核市等がこれにあたります。

中核市に関わる条文

さて、ここから以降が「トリビア」です。この「指定都市、中核市等」について規定した条文を、ちょっと長いのですが、はっはぁ~と感じていただく点もあることから、紹介したいと思います。法律は第24条の2、これを受けた政令第27条です。

法律(政令で定める市の長による事務の処理)

第二十四条の二  この法律の規定により都道府県知事の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、政令で定める市の長が行うこととすることができる。

政令(政令で定める市の長による事務の処理)

第二十七条  法に規定する都道府県知事の権限に属する事務のうち、次に掲げる事務以外の事務は、地方自治法(中略)に規定する指定都市の長及び(中略)中核市の長並びに呉市、大牟田市及び佐世保市の長(以下この条において「指定都市の長等」という。)が行うこととする。(後略)

 法第十四条第一項 及び第十四条の四第一項の規定による許可(当該都道府県内の一の指定都市の長等の管轄区域内のみにおいて業として行おうとする産業廃棄物の収集又は運搬に係る許可及び産業廃棄物の積替えを行う区域において業として行おうとする産業廃棄物の収集又は運搬に係る許可を除く。)に関する事務

 法第十四条の二第一項 及び第十四条の五第一項 の規定による変更の許可(前号に規定する許可に係るものに限る。)に関する事務

(3号以降略)

頭を悩ませる部分

「二重否定」「三重否定」が多々見られる廃棄物処理法の条文において、今回の条文は素直です。廃棄物処理法の「政令」で定めた「市」が、知事に代わって「できる」と規定しています。ちなみに、廃棄物処理法の政令で規定しているので、この市を「廃棄物処理法政令市」と呼んでいるんですね。

問題は「次に掲げる事務以外の事務」と書いてるところです。素直に「次に掲げる事務」として列記してくれれば分かり易いものを「以外の事務」と記載されているんです。

1号では「法第十四条第一項 及び第十四条の四第一項の規定による許可(当該都道府県内の~(以下略))」と登場しますね。これは、普通の産廃収集運搬業の許可と、特管産廃収集運搬業の許可です。お読みになって、直ちに理解できた方は、相当の達人です。括弧書きが重要なんですよね。「その政令市内だけで収集運搬を行う業者」と「その政令市内で積替保管を行う収集運搬業者」、これを「除く」んです。

頭が混乱してきましたか?最初に「以外の事務」と規定して、そこで列挙した事項で「除」いているんですね。すなわち、上記の業務は政令市で担当する業務になる訳です。

2号を見ると「法第十四条の二第一項 及び第十四条の五第一項 」これは処理業変更許可なのですが、これは括弧書きで「前号に規定する許可に係るものに限る」とありますね。

したがって、ここまでは「その政令市内だけで収集運搬を行う業者」と「その政令市内で積替保管を行う収集運搬業者」の許可は政令市で担当して、この許可の変更許可も政令市が担当する、と規定している訳です。ちなみに、以降、3~7号まで読んでも「産業廃棄物処分業の許可」や「産業廃棄物処理施設設置許可(法15条許可)」は、登場しません。

つまり「登場しません」から、これらの業務は「以外の事務」ではない。すなわち、これらの業務も政令市が担当する、と読める訳です。

法律の歴史的な経緯

この「廃棄物処理法政令市」は、幾多の変遷を経て今の規定に至っています。現在は「地域保健法」に移行してきていますが、その昔「保健所法」という法律があり、公衆衛生に関する権限は「保健所」に集中させていました。実は、この「保健所法」という法律は、戦前に「富国強兵」のために成立されたとされています。ですから、当時、炭坑や製鉄所、軍港等が所在した場所には、保健所が設置されていました。

そして、廃棄物処理法がスタートした昭和45年の当時も、まだ、保健所法が存在していましたから、当時の第8条(一般廃棄物処理施設設置許可、廃棄物処理法で知事の権限が初めて登場する条文)の括弧書きで「知事の権限は、保健所設置市においては市長とする」という規定だったのです。

現在の第27条に具体的な固有名詞を残す呉市、大牟田市及び佐世保市がその名残です。

しかし、昭和も終わり、平成の時代になったあたりで「公衆衛生」の概念も相当変わりました。戦前、戦後のような「伝染病にならないように」のレベルではなく、なんといっても「環境」問題が大きな分野を占めるようになってきました。

そこで、平成6年に「保健所法」そのものが「地域保健法」に移行(「改正」というよりも、大きく衣替えしたので「移行」としてみました。)しました。

この頃までは、県(都道府県のうち都道府は特殊だと思いますので「県」と記載します)の機関でも「保健所」で廃棄物処理法を担当しているところが多かったのですが、大規模不法投棄、処理施設設置反対住民運動等が多発し、昔ながらの「医療」を専門とする「保健所」では、業務内容が合わなくなり「地方事務所」「総合支庁」「環境センタ-」等と称する総合出先機関に業務を移すところが多くなりました。現在では「保健所」で廃棄物処理法を担当しているという自治体は少数派でしょう。

廃棄物処理法も平成18年の法律改正で「保健所設置市においては市長」という規定をやめて、(先に紹介しました)現在の第24条の2により「廃棄物処理法政令市」に変更しています。その後、平成22年の改正により、規制緩和の一環と言うことで、積替保管を「含まない」収集運搬業の許可は都道府県に「吸い上げ、統合」を行い、現在に至っています。

個人的な見解

行政業務の移管前にあたっては人事計画、書類の移管、台帳原本の整合性確認・突合等、かなり大がかりな業務となります。

これ程までして、果たして産業廃棄物業務を「政令市」、特に近い将来「中核市」に仲間入りする「政令市」が担当することを、国民は望んでいるのでしょうか?

人口20万の「市」は、それなりに大きいでしょうが、廃棄物処理担当に、何人の職員を配置できるでしょう?

しかも、業務は、中間処分、最終処分が担当になる訳です。収集運搬は「積替保管有り」を担当することになります。単なる収集運搬業であれば、それなりの件数もあり、経験を積むこともできるでしょう。

しかし、最終処分場や焼却施設などは、滅多に出てこないでしょう。しかし、それが出てきた時は、少ない人数で、未経験の担当者だけで処理しなければならなくなります。

このようなことを勘案すると、なにも産業廃棄物業務を「地域密着」「地方分権」にする必然性は薄いのではないかと思うのです。

大抵の県は人口は100万人はいます。最終処分場、焼却施設、その他の処理施設もほとんどの県では数件から数十施設抱えています。この程度のスケール、規模が産業廃棄物の業務としては、相応しいのではないかと感じています。

人口が20万人を超えたからと言って、必ずしも中核市になる必要はありません。地方自治法の規定により「できる」規定です。と、言うことは、条文上は「中核市にならない」選択肢もある訳です。

ちなみに、小樽市は「保健所設置市」であったのですが「廃棄物処理法政令市」への改正時に、産業廃棄物業務を受けませんでした。おかれた状況によりいろいろだとは思いますが、小樽市は小樽市独自の判断を行った、ということは評価してよいと思っています。

これから(新)中核市になれる状況に置かれる市長さんには、是非、この辺のことを熟慮いただき、受けるなら、十二分に業務を果たせる職員数、組織体系を構築していただきたいと思います。

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執筆者プロフィール

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

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