コラム
第6回:目的は資源の有効利用へ~建設リサイクル法に見る改定のヒント~堀口昌澄_連載「揺らぐ廃棄物の定義」
本連載シリーズでは、廃棄物関連のコンサルタントや研修を数多く実施してきたアミタの主席コンサルタントの堀口昌澄が、連載12回を通じて「揺らぐ廃棄物の定義」について解説します。廃棄物を取り巻く法の矛盾や課題を理解することで、今後起こりうる廃棄物関連法の改正への先手を打つことができます。
今回は、建設リサイクル法に見る改定のヒントについて解説いたします。
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「再資源化等」と「再生」の違い
建設リサイクル法において、一定規模を超える建設工事では建設廃棄物を再資源化しなければならないと定めている。その際、自治体への再資源化計画の届出義務を元請業者ではなく発注者に課すことで、発注者の建設リサイクルについての理解・意識喚起を狙うなど、画期的な施策を打っている。
建設副産物を廃棄物と考えるかどうかの判断基準には、廃棄物処理法をそのまま適用している。つまり表向きは総合判断説だが、実際は有価/無価で判断しているということだ。
ところが、建設リサイクル法の主目標である建設廃棄物の「再資源化等」は、廃棄物処理法の「再生」とは似て非なるものだ。「再生」は、廃棄物ではなくなる、つまり有価物になることを指している。一方の「再資源化等」とは「資材又は原材料として利用することができる状態にする行為」または「燃焼の用に供することができるものについて、熱を得ることに利用することができる状態にする行為」をいうと定義されている。ポイントは「利用することができる状態」であり、そのものが売却できるかどうかを問うていないという点だ。そのため、再資源化等をしたが有価売却はできない(=廃棄物)こともある。その場合は"廃棄物処理法を順守すべき"旨の記載が「建設リサイクル法 質疑応答集」にもある。
再資源化等=有価物ではない理由
それにしてもなぜ、再資源化等=有価物としなかったのだろうか。これはおそらく、売却できても運賃の方が高い、いわゆる手元マイナス/逆有償の取引があり、有価/無価の判断が安定せず、目標として管理しにくかったためではないか。特に元請業者は再資源化等の実施状況を発注者に報告する義務があるが、市況や運搬距離によって再資源化等を行った場所が変動したのでは、たまらない。目的は「資源の有効な利用」なのだから、利用できる状態にすればそれで十分なのである。
実は、建設廃棄物以外のマニフェストの運用でも同様の問題は生じている。同じ処理をしているのに、売却先が近ければ運賃が安いので搬出する前に再生完了、遠ければ運賃が高くなり手元マイナスとなるので売却先に到着した瞬間に再生完了となる。さらに再生品市場が悪化すると、売却先に逆に処分費用を払う、つまり売却先だったはずが最終処分(再生)委託先となってしまう。再生完了のポイントが、コロコロ変わるのだ。それをその都度マニフェストに反映し契約書も都度変更する、もしくはそれを想定した内容にしておかなければならない。
さらに、中間処理後物が手元マイナスで搬出された場合、どこがマニフェストE票の「最終処分を行った場所」になるのだろうか。契約書に書くべき「最終処分の方法」「最終処分の処理能力」は何になるのだろうか。この問題については、現行法では想定してない運用のため正解はない。しかし「資材又は原材料として利用することができる状態」を再生の基準とすれば、この問題はすっきり解決する。 もちろん、廃棄物処理法は廃棄物かどうかで規制範囲を決める。そのため「利用できる状態」という抽象的な判断基準を採用するのは勇気がいるだろう。しかし、EUなど同様の廃棄物の卒業基準を採用している国はあるのだ。前向きに検討すべきではないだろうか。
次回は、木くず判定から見える廃棄物の定義について解説いたします。
※本コラムは、環境新聞にも連載中です。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 環境戦略機能チーム 主席コンサルタント(行政書士)
産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。
環境専門誌「日経エコロジー」にも連載中。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。大気関係第一種公害防止管理者、法政大学大学院特別講師、日本能率協会登録講師。
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