コラム
第5回:戦略的アウトソースの必要性【前編】商品価値から企業価値へ~2030年の環境戦略の姿~
2030年の社会状況や環境制約を見据えたときに、企業はどのような環境戦略・価値創出を行っていくべきかをお伝えする、本コラム。
前回は厳しくなる環境制約に対して、企業は商品価値から企業価値の向上へ転換し、社会にどのような価値を提供するかということを視野に入れて環境戦略を立案することの重要性についてご説明しました。今後は環境戦略立案のため社内リソースを確保することが必要となります。今回はそのリソースの源となる企業の環境部の現状についてご紹介します。
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拡大する環境業務
時代の変化とともに、企業が取るべき環境対策の内容は大きく移り変わっています。公害対策から始まったといえる日本の環境対策も、環境マネジメントシステムの導入、頻繁に改正される環境法への対応に加えて、昨今では環境リスクマネジメントや資源・エネルギーの安定確保、生物多様性への対応や、環境配慮製品の開発など、その業務範囲はますます拡大しています。
牽引してきた社員の高齢化・退職による引継ぎ・仕組み化の問題
日本の環境部はISO14001などの環境マネジメントシステム導入が始まる少し前、1990年頃から大手企業中心に発足しました。2005年頃には中堅以上の企業の多くには環境部が設立され今日に至っています。
2013年アミタ株 顧客アンケート結果(N=245)
環境部は事業への理解や様々な部門間調整が必要となるために、当時30~50代の社員(団塊の世代とその少し下の世代)が中心に発足されることが多く、立ち上げ時から牽引していた人材が60歳前後になっている企業が多くあります。また、専門性が必要な業務でもあり業務が専任化・属人化している場合もあります。特に拠点の環境業務は設備担当者や総務担当者などが何年も兼任することになり、個々人独自のやり方で運営されているケースも多いです。
企業の環境業務を支えてきた人材は、2007年前後から退職時期に差し掛かり、担当者の後任準備や引継ぎ、業務管理の効率化・一元化などの課題が顕在化しています。(図参照)現在は嘱託制度などを活用して、対策を先送りして対応する企業もありますが、今後5年内にはナレッジ継承・属人化防止・後継者育成問題などを解決する必要があります。
ナレッジ継承の危機!定年退職者増加と補充されない人員
「平成24年版高齢社会白書」の試算によれば、今後50年間で生産年齢人口(15~64歳の全人口比率)は半減。また、15~29歳までの若手と30~65歳までの中高年の労働者比率は、2010年で1:10となっています。この傾向は少子化が進むにつれ、ますます進展することが確実でしょう。
その結果、今後日本企業の多くは若い人材を本業中心に配置し、重要ではあるが本業ではない環境業務について、必要な人員数をなかなか確保できなくなることが予想されます。
複雑な法体系と頻発する法律改正
環境関連法は環境基本法を中心に約20もの法律から成り立っており、すべての法律に対応するには高い専門性と長い経験が必要となります。なかでも廃棄物処理法は数ある環境関連法のなかでも内容が難解で、かつ改正が多いことで有名です。(右図参照 アミタ調べ)
人員が減り、コスト削減が強く求められる企業環境部にとって、常にすべての環境関連法の最新状況をアップデートし、環境方針、マニュアル策定、社内研修、システム構築などを実施するのは事実上不可能と言えます。
しかし、環境制約が強まるとともに、関連法令の増加、罰則の強化の流れは進み、業務リスクは拡大するでしょう。現在でも、法律違反で国からの書面指導により株価が大幅に下落し企業イメージダウンにつながった事例や、法令違反の結果、役員・マネジメント担当者・実務担当者が書類送検される事例なども後を絶ちません。
このような背景の中で、現在環境部はどのような課題を抱えているのでしょうか?
第6回は、企業の環境部が抱える課題とその解決方法についてお話しします。
※本コラムは(株)ポスティコーポレーションの専門誌「ラバーインダストリー 2015年9月号掲載」記事を一部改編して掲載しています。
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執筆者プロフィール
田部井 進一 (たべい しんいち)
アミタ株式会社 ワークデザイン営業チーム
チームリーダー
関東エリア中心に企業への環境コンプライアンスへの対策、リサイクル提案、市場調査から環境・CSRまで、幅広い顧客への環境戦略支援を実施している。現在は企業の廃棄物管理業務アウトソーシング導入支援などを実施している。
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