第4回:環境制約下で持続可能な経営を行う戦略(後編) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

第4回:環境制約下で持続可能な経営を行う戦略(後編)商品価値から企業価値へ~2030年の環境戦略の姿~

2030年の社会状況や環境制約を見据えたときに、企業はどのような環境戦略・価値創出を行っていくべきかをお伝えする、本コラム。

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前回は、環境制約下で持続可能な経営を行う戦略について解説してきました。
今回では、2030年の環境戦略について具体的な事例をご紹介します。

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(Some right sreserved by kevin dooley)

事例:パタゴニア「Worn Wear」プログラム

ここでは、アウトドア商品を取り扱うパタゴニアの事例をご紹介します。
同社は「新品よりもずっといい」という標語をもとに「Worn Wear」プログラムを実施しています。ウェア等を頻繁に買い替えるのではなく、長持ちして修理も可能な高品質の製品を展開することで、必要以上の消費や廃棄物を減らし、アウトドアに必要不可欠な自然環境を守ることにもつなげています。
通常だと売上減少にもつながりかねないこのプログラムは、パタゴニアの社会に対する主張を明確に打ち出し、同社の企業姿勢への賛同者が増えることにより結果として収益につながっています。また、この取り組みは大量生産・大量消費の現状を是とせずに、あるべき姿から環境課題にとりくんだバックキャスト思考の好事例とも言えます。

フォア

キャスト

現状分析や過去の統計、実績等のデータをもとに、未来の潮流を演繹的に予測する手法。いかにしてトレンドに対応するかという戦略論になる。

バック

キャスト

未来を予測するうえで目標となるような状態・状況を想定し、そこから現在に立ち戻って"やるべきこと"を考える手法。望ましい状況に至るための道筋と条件の分析などを通じた戦略論になる。

参考:パタゴニアの「Worn Wear」プログラム

多様な環境評価導入の動き~環境の+と-を経済に内在化~

そのほかに出資や労働提供等に関する動向もご紹介します。
先進国の政府やグローバル企業を中心とする多くの組織もこのままでは経済活動と地球環境が両立せず持続可能性に影響があることは感じています。よって、環境に対する+と-の影響を様々な点から経済活動の評価に取り入れる動きが出ています。
法律による規制強化はもちろん、課税・免税制度の適応、また金融業界では「社会的責任投資(SRI)」の市場が拡大しています。IR(株主とのコミュニケーション)では財務諸表に加えて環境・社会・組織統治等の非財務諸表を加えた統合報告を推進する動きがあります。世界のSRI市場は2014年に21.4兆ドルで欧州中心に規模が拡大しています。SRI分野でアジアは非常に遅れていますが、その分今後の成長も見込まれます。(下図)

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(参照:2014 Global Sustainable Investment Review)

また、環境評価に関する新しい指標についてもEU中心に議論されており、2015年6月にドイツで行われたG7でも話題の1つとして取り上げられています。これまでEUは、2020年の社会の在り方として「Resource Efficient Europe」をテーマに掲げて、資源利用効率の向上により経済と社会の持続的成長を図る一連の環境・資源利用政策を推進してきました。今後は「Circular Economy」を旗印に掲げて、サプライチェーン全体で、"循環の輪を作る"ための取り組みや、消費スタイルそのものの変化を推進することを意図しています。その中には「短い製品寿命、頻繁なアップグレード製品の提供から、長い製品寿命、競争力が持続する製品の提供に切り替える」ことや「再生資源利用率が一定以上でない製品は輸入しない」といった基準も検討されています。EUの環境政策もまた、大量生産・大量消費・大量廃棄の現状をよしとせず、バックキャスティングによって政策を検討していると言えます。
近年日本では「ブラック企業」という言葉が注目されています。労働力を大量利用し、大量廃棄する(離職させる)企業は市場から締め出されようとしています。就職活動の軸としても「社風・雰囲気」・「個人生活と仕事の両立」・「社会貢献性や企業理念への賛同」などが中心になっており、就職先選定には、働く場として自らの価値観に合うかといった視点が重要視されています。

2030年を見据えた環境戦略へのステップ

現業を継続するために守りの環境戦略は必要不可欠です。その上で現業の収益があるうちに、社会に対する企業としての提供価値をどう定義するのかが重要です。未来の社会のあるべき姿の中に、自社はどう貢献して、どのような事業ドメインに進出するのか。その際、率先対応する環境対策は何かを考える必要があります。その後進むべき方向に向けて、各テーマに、いつまでにどう取り組むかといった、定期的な目的・目標を定めていく必要があります。

次回以降は企業が環境戦略を検討する上での様々な課題と、それに対する手法についてご紹介していきます。

第5回は、環境戦略立案のための人員確保に関する手法をご紹介します。

※本コラムは(株)ポスティコーポレーションの専門誌「ラバーインダストリー 2015年9月号掲載」記事を一部改編して掲載しています。

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執筆者プロフィール

mrkarajama.jpg唐鎌 真一 (からかま しんいち)
アミタ株式会社 環境戦略支援営業グループ 
グループリーダー 

2006年12月、国内大手金融機関を経てアミタグループに合流。中央省庁(農林水産省、林野庁、水産庁、環境省等)および、地方自治体向け地域活性化促進事業を支援。企業向けに、環境管理業務のアウトソーシング、環境リスク低減支援、環境効果の向上支援等に関する環境戦略支援サービスを提供。

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