コラム
特別産業廃棄物排出事業者は、帳簿の管理をしないといけないの?それとも管理しなくていいの?BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」
時折「特管産廃排出事業所に帳簿は要るのですか?」という質問を受けることがあります。 まず、結論から述べますと「帳簿を使って管理するのがよいでしょう」。
廃棄物処理法の第12条の2第14項と省令第8条の5では「備え付け義務」と「保存義務」を規定しています。ただ、その解釈・運用には少し複雑なところがあります。
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平成22年の法令改正により、事業者に義務づけられている帳簿から「運搬の委託」「処分の委託」の欄が削除されました。そのため「特管産廃は排出するが、全量委託処理」という事業所では、記載するべき事項が存在しなくなってしまったかのように見えます。それにもかかわらず、法律と省令では「備え付け義務」と「保存義務」は残っている、という極めて不合理な状況にあるのです。解釈、運用によっては、なんの記載事項もないままに「白い帳簿を5年間保存」というような規定にもみえます。
どの解釈、運用が正解なのか現時点では不明です(※注)。「準用」を繰り返したために、このように非常にわかりにくい条文になったものと思われ、次回の法令改正で整理がなされるものと信じます。
帳簿に関して、平成19年12月19日発出、環境省の事務連絡「電子マニフェストを利用した場合の帳簿作成等について」の中で、実質的には「マニフェストを綴ることで代用可」としています。
ただ、ここで考えて欲しいのは、そもそも、なぜ、特管産廃排出事業所には帳簿が必要なんだろうか?と言うことです。 特管産廃は普通の産業廃棄物と比べても、その性状等によりリスクが高く、管理には特別の配慮が必要だからでしょう。 マニフェストを保管して、いつ、どんな特管産廃をどのくらい、どの業者に<委託した>、ということがわかったとしても、どの過程からどんな特管産廃が発生し、それをどのような状態で、いつの時点で、どの程度の量を保管していたのか、という特管産廃排出事業所にとってもっとも重要と思われる事項は、少しもわかりません。
法定事項うんぬんを議論する以前に、自分のところから「発生」している特管産廃を適正、適確に管理するためにも、帳簿の記載と保存はやっておきたい行為だと私は思っています。
※注)アミタより補足
平成23年2月4日環境省の通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等 の施行について(通知)」において、本件は帳簿記載事項と管理票制度における記載事項に重複があったことから、運搬又は処分を委託した場合には当該委託に係る事項は記載を不要としたことが示されています。
ただ、法規制の有無にかかわらず、マニフェストの情報はデータ管理しているという会社も多いと思いますが、それ以外にも廃棄物の具体的な内容、保管量、保管状況など管理すべき事項がないか検討し、必要に応じて帳簿などの記録をつけておいてもよいでしょう。
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執筆者プロフィール
長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。
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