コラム
CSR本音対談|レポート、毎年出す必要ありますか?レポートって毎年作成する意味ありますか?
「毎年同じページ割で、数字と特集だけ変える...CSRレポートってそれでいいの?」
「数字の公開だけなら、印刷しなくてもいいのでは?」
CSRレポート担当者なら一度は思ったことがあるこの疑問。
今回は、ウェブマガジンgreenz.jp 編集長の兼松 佳宏様と京都大学iPS細胞研究所 国際広報室 渡邉 文隆様、株式会社カスタネット代表取締役植木様に「伝える」ためのCSRレポートについて対談をしていただきました。
■本コラム一覧
- 第1回:限られたページ数をどう活用するか?
- 第2回:行動の背景、意図、課題認識等をより知りたかった
- 第3回:「できていない理由」の明示が素晴らしい
- CSR本音対談|レポート、毎年出す必要ありますか?
CSRレポートは毎年出す必要があるのか?
猪又:毎年発行されるCSRレポートですが、前年度と同じ形式で、数字と特集だけを変えているケースが多く見られます。また、同業種のライバル企業を参考にし合うので、各社の独自性がなかなか見えづらい状況があります。
一方で、カスタネット社の「小さな企業のCSR報告書」がCSRJAPANで2年連続トップ3入りしたのは、やはり企業の独自性ができていたからではないかと思います。
「みんなの「いいね」をあなたに伝える」がサイトメッセージであるCSR JAPANとしては、ぜひとも「伝わる」CSRレポートを期待したいところですが、みなさまはどうお考えでしょうか?
兼松氏:そもそもなんで毎年出す必要があるんだろう?と思うことはありますね。かつて私もCSRレポートの作成に関わっていたことがありますが、3年に1回くらいの発行の方が、よりインパクトのあるものをつくれるのかなとも思います。
植木氏:我々も毎年作ることありきで制作をするのは辞めようと当初から言っていました。
猪又:ではそもそもCSRレポートは毎年出す必要はないのでしょうか?
制作の目的は「データブック」か「ストーリーブック」か?
渡邉氏:CSRレポートにも様々な目的があり、毎年報告する意味はあります。それはレポート発行が求められている前提に「企業に対する社会の不信」があるからだと思います。そもそもCSRレポートの起源は財務諸表のみの評価では、企業不正や社会課題が解決されてこなかったことです。そこから説明責任(Accountability)という考え方が生まれ、非財務諸表の開示・報告という必要性が生まれました。
つまりはCSRレポートの中に、「進捗報告や実施結果を含めたデータブック」と「社会的意義を伝えるためのストーリーブック」の役割が混在しており、作り手と読み手を混乱させているのだと思います。
毎年報告が必要なのは、説明責任を持つデータブック部分だけでいいと思います。自分たちが作ろうとしているものが「データブック」なのか「ストーリーブック」なのかを明確にして、紙にするかWebにするか、動画や読み物形式にするか等々伝え方を決めれば良いのでは。私もストーリーブックなら、3年に1回ぐらいでいいと思います。
猪又:企業報告には様々なガイドラインがあり、CSRレポートの多くはそのいずれかの指標を元に作成され、定型化されたものになっています。それらは、業界を比較分析するためにはとても良いものですが「ストーリーブック」としては不十分に思えます。最終的には「独自性」の部分も必要だと思います。
兼松氏:2003年くらいにCSRという言葉を初めて聞いたとき、とてもワクワクしたんですよね。CSRレポートを各社が始めて、紙だけでなくWebにも公開され、ウェブサイトでIRと並ぶ日が絶対来ると感じましたし、実際にそうなったときにはすごく興奮しました。一方で、当たり前にあったからこそ均一化してしまって、なかなか違いが見いだせなくなってしまったのかなとも思います。
植木氏:従業員とお客様向けに、会社案内の役割も含めて作ることになった当社のCSRレポートですが、なんと1万冊以上発行することになりました。反響の裏には、独自性というか、中小企業のCSRレポートが他に少なく珍しかったのだと思います。おかげ様でいろんなところで取り上げられ、紹介していただきました。広告効果としても非常に大きいものとなりました。
今後CSRの展望は?~ステークホルダーに自社を定義してもらう?~
兼松氏:CSRは今、踊り場にあると思いますが、逆にまだまだできることはたくさんあると思います。ひとつの流れは生活者を巻き込んで、一緒につくっていく方向かもしれません。
グリーンズでは去年から「greenz people」という寄付会員制度をスタートしました。おかげ様で1年で約300名の方に会員になっていただいていますが、その方々に僕たちから「あなたにとってgreenzとはなんですか?」と聞くようにしているんです。「図書館」だったり「出会いの場」だったり、さまざまな答えがあるのですが、それは私たち自身が気づいていなかった存在意義を再発見する機会でもあって。
だからこそ、自社の社会的な役割を敢えてステークホルダーに定義してもらうのはいかがでしょうか?あなたにとって、この会社は何ですか?という声をいただくことで、自分たちも想像していなかったCSR活動の可能性が見えてくるかもしれません。
植木氏:CSRレポートはやはりパラパラとページをめくり、目に付いたところだけを読む人が多いです。でも私はもっとじっくり読んでいただきたい。ですから次回作は、小説のようなCSRレポートを作りたいと考えています。カバンに入って電車の中で読めるようなA5サイズのレポートを作ります。また、次回はなぜそれに取り組むかということまで詳しく書いていきたいと思います。「データブック」の要素はもちろんありますが、重きを置くのは次回も「ストーリーブック」としての役割です。
猪又:私は個人的に、その企業が今後どこに向かっていくのかということが読みたい。そして、各社の「独自性」がわかるようなCSRレポートに出会いたいです。もし、ストーリーブックとしてCSRレポートを作成される場合は、メッセージに軽重をつけるのがいいと思います。独自性、メッセージ性の強いCSRレポートに出会えることを楽しみにしています。今日はありがとうございます。
対談者:右から
兼松 佳宏 (かねまつ よしひろ) greenz.jp 編集長
植木 力 (うえき ちから) 株式会社カスタネット 代表取締役社長
渡邉 文隆 (わたなべ ふみたか) 京都大学iPS細胞研究所 国際広報室
猪又 陽一(いのまた よういち) アミタ株式会社 環境戦略支援グループ CSRプロデューサー
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