コラム
役所・事業者・住民のPublic Risk Communication知って得する、土壌汚染の新常識
日本の社会では、なぜか未だに「お役所至上主義」が抜けきっていません。江戸時代の封建制度の名残だと思いますが、社会規範がそのように出来上がってしまっています。これは日本の良い面と悪い面があり、土壌・地下水汚染対策にも影響しています。
行政とは共に浄化を目指すパートナーになる
土壌・地下水汚染が確認された場合、周辺環境への影響や住民の健康影響といったリスクを定量化し、行政・住民・事業者が共通認識に立ち、リスクを共有し、解決のための方策を協議するPublic Risk Communicationが不可欠です。
そして汚染調査や浄化の原点を見失ってはならないと思います。もちろん自社のためということはありますが、同時に周辺環境や住民の健康維持のため、ひいては子孫に健全な地球環境を残すためです。
これまでも申し上げてきましたが、行政の指摘を単に言われたとおりにしていたのでは土壌・地下水汚染の浄化は完了しません。相談の仕方や行政側の対応者次第では、適切な判断にならないケースもあり、時には問題解決が出来ない間違った指摘になることもあるからです。
しかし、土地所有者も浄化対策事業者も行政の指摘を言葉通り受け入れてしまいます。重要なのは、そもそもの目的を達成するために科学的な根拠をもって行政と交渉することです。浄化対策事業者はそういったカウンターオファーができる知識と経験と技術を持ちあわせていなければなりません。
しかしながら、行政を無視して仕事はできません。調査の着手段階から行政の担当者と科学的な根拠に基づくコミュニケーションを取り、進捗状況や結果を随時報告していきます。時には一緒に考え、教えてあげるコミュニケーションも必要になります。こうすることにより、土壌汚染の調査・浄化がどの段階にあり、今後どのような手順で展開をしていくかということを関係者が全て了解済みの上で仕事を進めて行くことができます。これにより行政の担当者と良好な関係性を生み、極端に実施が困難な指導をされることはありません。
関係者全員が了解している状況を作る
一方で周辺住民に対しても積極的に情報公開をすることを勧めています。科学的なデータに基づいてわかりやすく説明すれば住民の皆さんは理解を示してくれます。ポイントは嘘偽りなく全ての情報をタイムリーに公開することと、見えない地下の現象を見せることです。そして周辺住民には理解をしていただけるまで対話の場を持つことが重要です。君津システムでは可能な限り住民説明を行う機会を設け、大きな心配を抱かせることなく事業進捗を果たします。
このように、関係者(当事者、行政、対策事業者、周辺住民)が全て了解している状況を作るということが円満な対策を進めていく上で非常に重要になります。これには、単に法に基づいた手法を推し進めるだけでは足りない部分が出てきます。
そのため対策事業者には総合的な知識と技術と経験、そして良好な関係性を構築できる能力が求められるのです。
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執筆者プロフィール
鈴木 喜計 (すずき よしかず) 氏
君津システム株式会社 代表取締役
1973年君津市役所に入所。31年間公害問題の調査研究・技術開発に従事し、土壌・地下水汚染の調査手法や浄化技法の開発・検証・普及に努める。
いままでに実施した地質汚染調査・浄化の実績は海外を含め100件を超え、240もの学術論文/研究発表、13巻の著書(共書)を持つ。その専門性が認められ、平成9年に起こった日本初の地下水汚染事件での鑑定人や平成14年土壌汚染対策法での国会参考人を担当、土壌環境基準設置委員(環境省)、廃棄物処理法改正委員なども歴任した。平成16年に「君津システム株式会社」を起業し現在に至る。
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