コラム
第2回:建設工事の判断、企業と自治体でどう異なる?アンケートから考える、2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」の問題点とは
前回は、2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」の問題点として、建設工事の定義自体のあいまいさと、その判断の手がかりとなる情報をお伝えしました。今回はその定義のあいまいさが具体的な作業において解釈の見地からどのような判断に分かれるかご説明します。
※アンケートの結果概要と留意事項はこちら
(Photo by kubotake.Some rights reserved)
企業に比べて自治体は個別判断に偏る傾向
今回のアンケートでは個別の事例を挙げ、建設工事の該当、非該当の判断について回答をいただいています。全体の傾向として、自治体は個別事情による判断という回答が多いのに対し、企業は建設工事に該当しないという判断が多い回答でした。
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自治体は一般論としての回答を避け、個別具体的に判断するという慎重姿勢にあるのは当然の結果でしょう。一方、企業は法律の規定だけでなく商慣習として常識的な感覚にも影響される傾向があるため「該当しない」という回答が多いのも、納得いく結果です。
具体的作業の解釈で判断がどう分かれるか
今回は「(10)時計を掛けるためのフックを壁にねじ込む工事」について考えてみましょう。建設工事に該当すると回答したのは自治体の24%、企業の10%にすぎないのです。
法律だけから解釈すると、壁は工作物の一部で、これに穴あけという物理的変化を起こして新しいモノを設置するのですから、増築といえるでしょう。壁にフックをねじ込む=工作物の増築=建設工事ということです。アンカーボルトをコンクリートに打ち込んで設置するのと、やっていることは変わりません。建設工事の判断基準には、規模要件が入っていないのです。
フックをねじ込む「作業」が建設工事というのは常識的ではないですし、2010年改正廃棄物処理法の趣旨から考えても、そんな訳はないという考え方もあるでしょう。
ねじ込み作業を単体で考えると、この主張は通りそうですが、一連の建設(リフォーム)工事の中でこの作業が行なわれた場合どうでしょうか。フックねじ込み作業だけは建設工事でないとすると、フックねじ込み作業で出てきた廃棄物については、元請ではなく下請けが排出事業者となるのでしょうか。
それはおかしいので、このような場合はフックねじ込み作業は建設工事に含まれると解釈するのでしょうか。しかし、工事契約に含まれるかどうかで、建設工事であるかどうかが変わってしまっていいはずがありません。
建設工事をこれだけ広く定義付けしたのであれば、規模要件は必要だったのではないかと改めて思います。
次回はこの判断の相違がどのように排出事業者リスクにつながるのかをご説明します。
(第3回へ続く)
第1回:建設工事の定義が曖昧で認識が統一されない?
第2回:建設工事の判断、企業と自治体でどう異なる?
共同アンケートを実施した環境総合専門紙 『環境新聞』についてはこちら。
執筆者プロフィール(執筆当時)
堀口 昌澄
株式会社アミタ持続可能経済研究所 ソリューションチーム
主席コンサルタント(行政書士)
廃棄物のリスク診断・マネジメント構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。最近では、廃棄物処理業者の評価/選定システムの構築も行っている。個人で運営しているブログ「議論de廃棄物」も好評を得ている。『日経エコロジー』にて廃棄物処理法に関するコラムを連載中。
昨年11月には、廃棄物処理法を今後どうして行くべきかについて考えた「廃棄物処理法のあるべき姿を考える」を環境新聞社より上梓。
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