コラム
第1回:建設工事の定義が曖昧で認識が統一されない?アンケートから考える、2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」の問題点とは
排出事業者のご担当者様を悩ます2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」。施行以来、何が建設工事に該当するか分からない、法の通りに運用することが実際には不可能である、国による定義の説明が不十分だ、等の声が多くあがっていました。
そこで、アミタグループと環境新聞社は、共同で「企業の環境担当者」と「自治体の担当者」の現状の認識をアンケート調査しました。(※)
→結果概要はこちら
この調査結果から見えてきた「建設工事の定義」に関する問題点について、これから3回にわたって考察していきます。
(※)【調査結果について留意事項】
本調査は、民間企業、メディアが、企業、自治体の任意の協力に基づいて実施したものであり、統計的に有意な結果を導き出すために十分なサンプルを収集したものではありません。その点をご留意いただいたうえで、ご参考頂ければと思います。
建設工事の定義がわからない
「第21条の3」が現場を困らす最大の原因は、建設工事の定義がわからないという点です。法律では建設工事とは「土木建築に関する工事で、建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む」とされており、具体性に欠けています。
この点については、企業の環境担当の方(以下企業)も自治体の担当の方(以下自治体)も、国の説明が不十分と感じています。
Q:建設工事の定義について、国は十分に説明していると思いますか?
また、自由回答欄に「そもそも定義がわからないので、素人がしない工事を建設工事と判断して管理しています。」「基本的に別会社に工事を発注したら、建設工事等に該当すると考えている。」という回答があることからも、現場では個人で感覚的に判断しているのが現状のようです。
建設工事の定義を探るヒント
2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」の条文の他、通知では以下のように記載されています。
引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について
環廃対発第110204005号 環廃産発第110204002号 平成23年2月4日
増築は通知に明記されておりませんが、改築が対象なら増築も当然対象と読めます。
また過去に国が出した「建設廃棄物処理ガイドライン」では以下のように定義されています。
なお、環境省は、この資料を参考とすべきであるとは、文書に残る形では公表しておらず、私が環境省を取材したときに口頭で説明されたに過ぎませんので、ご注意ください。
共通するポイント
上記2つのポイントは、以下の通りでしょう。
「建築物や工作物を、新しく作る、改造する、取り除く工事が対象」
「土地に固定されていれば、ものの大小を問わず工作物に該当する」
さらに噛み砕いて言うと、以下のように読めます。
「土地に固定されたものを作ったり、一部でも改造したり、外したり、壊したりしたら建設工事である」
次回は、この建設工事の定義の曖昧さが、具体的な作業項目でどのような判断となるかをご紹介いたします。
(第2回に続く)
(Photo by woinary.Some rights reserved)
共同アンケートを実施した環境総合専門紙 『環境新聞』についてはこちら。
執筆者プロフィール(執筆当時)
堀口 昌澄
株式会社アミタ持続可能経済研究所 ソリューションチーム
主席コンサルタント(行政書士)
廃棄物のリスク診断・マネジメント構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。最近では、廃棄物処理業者の評価/選定システムの構築も行っている。個人で運営しているブログ「議論de廃棄物」も好評を得ている。『日経エコロジー』にて廃棄物処理法に関するコラムを連載中。
昨年11月には、廃棄物処理法を今後どうして行くべきかについて考えた「廃棄物処理法のあるべき姿を考える」を環境新聞社より上梓。
関連情報
アミタの支援サービス「The Sustainable Stage」では、廃棄物管理を始め、脱炭素にかかる施策(CDP質問書への回答、SBT、RE100への取組み・実践体制の構築、支援など)、SDGs、生物多様性、バイオマス発電など企業の持続可能性を環境面から支えるための支援を行っています。
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