コラム
現場で体感してこそわかる森林の多様な価値(その2)リレーコラム
ISO26000の中核主題の一つ「環境」の項目の中で「組織は、人間の活動が生態系を急速に変化させつつあることを踏まえ、環境、生物多様性、自然生息地の回復に向けて行動すべきである」という記述があります。(『ISO26000英和対訳版』 財団法人日本規格協会、2010年)
これは、いわゆる生物多様性に関する組織の社会的責任について記載された部分です。しかし、具体的にどう取り組むのか、迷っている企業ご担当者様も多いのではないかと思われます。
そこで今回は、生物多様性保全サービスのコンサルティングを始め様々な分野でご活躍のValue Frontier 株式会社 取締役 梅原 由美子様に、森林の価値とその体験の重要性について語っていただきました。(第1回はこちら)
人の手が入るからこそ保たれる生物多様性
みなさんは「アサギマダラ」という蝶をご存じですか?
南西諸島から北海道、ロシア方面まで3,000kmもの「渡り」をする蝶です。普通、トンボや蝶が飛べる範囲は1.5~2km程度ですから、この距離がどれだけすごいかお分かりいただけると思います。
しかし、驚くのはそれだけではありません。この蝶が南から北に渡るのは1世代で片道だけです。北から南に戻るのはなんと次の世代なのです。なぜ次世代の蝶は前の世代の蝶が来た道が分かるのでしょうか。知れば知るほどミステリアスないきものです。
なぜこの蝶のご紹介をしたかというと、実際に今回の森林見学ツアー先の一つ、岐阜県中津川市加子母村の森林を下見している時に偶然出会うという、ちょっとした「感動体験」があったのです。上昇気流に乗って3,000kmも渡るのですから、時々、羽を休めたり水や餌を得るために森林や公園に降りてくるのです。他にも加子母村では、ウグイス、キビタキ、ヒガラ、メジロ、カケス等の鳥の声を聞き、水源ではサンショウウオやカゲロウ、天然のわさびにもお目にかかりました。そこには「木材生産用の人工林」というイメージを覆す、多様な生態系がありました。
もちろんこれは、加子母森林組合が、長年持続的な林業を目指し「複層林施業」に取り組んできた1つの成果であると言えます。人工林でも十分に手入れをして光を入れることで、多様な植物が自生し、様々ないきものによる生態系が育まれるということが、森を歩いてみてようやく腑に落ちた感じがしました。
今回の森林見学ツアーは加子母以外にも、北海道は苫小牧の王子製紙の森、関東は奥多摩の人工林、大阪は河内長野市の里山、福岡は油山自然観察の森等、各地で異なるタイプの森林や生物多様性への取り組みを見学することができます。
今回のシンポジウムは、森林というテーマを中心として、森林の「多面的機能」からオフィスや工場でできる生物多様性保全など、具体的なアイデアが満載の内容になっています。「これから何かできないだろうか」と考えている方だけでなく、既に森林活動や生物多様性保全の取り組みを行っている企業や個人の方にもご参加いただきたいと願っています。
座学だけでは、生物多様性や森林の価値を理解することは難しいです。そこで、実際に森を歩き、様々な森の価値を体感することで、日常生活や企業活動において、たくさんのヒントが得られるはずです。
ツアーは幅広い層の方に楽しんでいただく、地域の生態系を活かしたサービスを楽しんでいただくといった点に気をつけて、自然観察や散策、地産地消のランチ等をご用意しています。皆さんも私たちと一緒に森を歩きながら、企業や市民として「森林」とどのように関わっていくのか考えてみませんか。
「みんなで学ぼう!森林の生物多様性シンポジウム&森林見学ツアー」の詳細についてはこちらをご覧ください。
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執筆者プロフィール
梅原 由美子
Value Frontier 株式会社
取締役
企業における持続的な環境経営のための環境マネジメントや環境マーケティング支援、環境人材育成サービス開発を行っている。また国際協力や国内地域振興のための排出権事業形成コンサルティングや、企業・市民・NGO等による参加型環境プロジェクト開発を手がける。
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