コラム
元請業者の責任重大!? ―「建設廃棄物 排出事業者の明確化」(その6)堀口昌澄の「いまさら聞けない!廃棄物処理法2010年改正 7つのポイント」
廃棄物処理法の改正により、排出事業者も様々な面で対応を迫られることになります。 そこで「日刊おしえて!アミタさん」では、廃棄物処理法が施行される4月まで、廃棄物処理法改正のポイントを7回にわたって解説。 いまさら聞けない法改正のポイントをまとめておさらいしましょう!
原則:
建設工事の元請業者(※1)を建設廃棄物の排出事業者とすることが明確化された。
例外:
- 下請負人(※2)が建設工事現場で廃棄物を保管する場合は、排出事業者として保管基準を順守することが求められる。
- 一定の条件を満たし建設工事の請負契約などで定める場合には、下請負人が排出事業者として自ら建設廃棄物の運搬をすることができる。
- やむなく下請負人が処理委託をする場合にも、排出事業者として委託基準を順守する義務が発生する。
建設工事から発生する廃棄物は、元請業者(※2)が排出事業者になるという解釈が一般的でした。しかし、廃棄物処理法の条文に明記されておらず、一部では下請負人が排出事業者になるとの解釈に沿って、処理が行なわれている場合がありました。
今回の改正では、建設工事を請け負う営業を行った者(元請業者)が排出事業者になることが明記され、建設廃棄物の排出事業者が明確化されました。 ただ、実際の建設工事の現場では下請負人が建設廃棄物の管理に関わるケースも多いことから、いくつかの例外が設けられています。
※1 元請業者:建設工事の発注者から直接建設工事を請負った事業者
※2 下請負人:建設工事を他の者から請負った事業者から、当該建設工事を全部又は一部請負って建設業を営む者
[例外1] 建設工事現場での建設廃棄物の保管
建設工事の現場などで廃棄物の保管を行う際は、下請負人が実際の保管業務にあたる場合があります。この場合は、下請負人を排出事業者とみなし、産業廃棄物の保管基準を順守することが義務付けられます。
これは建設廃棄物の排出事業者が元請業者となるため、排出事業者ではない下請負人が当該廃棄物の保管を行う場合に、保管基準の適用を受けなくなることを避けるための規定になります。
[例外2] 下請負人による自ら運搬の条件
元請業者が排出事業者となるため、下請負人が建設廃棄物を運搬するには収集運搬業の許可が必要になります。ただ、小規模な建設工事などで少量の建設廃棄物が排出された場合には、例外的に下請負人を排出事業者とみなして、下請負人が当該廃棄物を自ら運搬することが認められています。
- 下請負人が運搬する旨、建設工事の契約で定めており運搬時にはその旨を証する書面を携行する
- 解体、新築、増築以外の工事で、請負代金が500万円以下、又は瑕疵の修補工事で、請負代金相当額が500万円以下
- 一回の運搬量が1立方メートル以下であることが明らかとなるよう区分して運搬
- 排出事業場の所在地又は隣接する都道府県の区域内の、元請業者が所有/使用権原がある施設に運搬
- 運搬途中において保管が行われない。
上記1の携行する書面の記載事項や様式は施行通知(PDFへリンク)で紹介されています。また、排出事業者による自社運搬になりますので、従前からある車両表示と書面携帯も必要になりますので、注意してください。
[例外3] やむなく下請負人が処理委託をする場合の義務
「改正法第21条の3 第4項」の内容は、これまで説明してきた元請業者による排出事業者の明確化と矛盾するものと思われがちです。
しかし、施行通知にあるとおり、 「元請業者が建設工事に伴い生ずる廃棄物を放置したまま破産等により消失した場合など、やむなく下請負人が自ら当該廃棄物の処理を委託するというような例外的な事例があった場合」であり、 「下請負人が廃棄物の処理を委託することを推奨する趣旨ではない」ということはおさえておいてください。
前述のようにやむなく下請負人が処理委託をする場合は、下請負人を排出事業者とみなし、契約書の締結やマニフェストの運用など通常の委託処理の手続きが必要になります。
これまでは、排出事業者ではない下請負人が建設廃棄物を処理委託する際に、委託基準の適用がなかったために設けた規定です。原則、元請業者が排出事業者として適正処理を行うが、何らかの理由で下請負人が処理を行う場合でも適正な手続きが必要になるということを示しています。
例外はあれど、元請業者が廃棄物の責任者に
以上のようにいくつかの例外規定が設けられてはいますが、元請業者が排出事業者となるという原則は変わりません。元請業者が下請負人に対して、建設廃棄物の処理を行うことを口頭で指示(又は示唆)した場合には、元請業者が委託基準違反に問われる可能性もあります。
自社で建設工事に関わる部署や業務があれば、元請業者になる場合は下請負人に建設廃棄物の処理を委託していないか、下請負人であれば元請業者の廃棄物を処理していないか、状況を確認し、例外規定も踏まえて適切な運用がなされるよう働きかける必要があります。
■堀口昌澄の「いまさら聞けない!廃棄物処理法2010年改正 7つのポイント」
- その1 自社処理にも帳簿が必要?―「自社処理帳簿の義務化」
- その2 事前の周知が肝心!―「処理困難通知への対応」
- その3 処理計画の様式を統一化!―「多量排出事業者処理計画の見直し」
- その4 どこまでやるべき?―「実地確認の努力義務化」
- その5 許可証管理が複雑に!?―「収集運搬業の許可制度改革」
- その6 元請業者の責任重大 !?―「建設廃棄物の排出事業者の明確化」
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執筆者プロフィール(執筆当時)
堀口 昌澄
株式会社アミタ持続可能経済研究所
環境ソリューション室 主席コンサルタント(行政書士)
廃棄物のリスク診断・マネジメント構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。最近では、廃棄物処理業者の評価/選定システムの構築も行っている。個人で運営しているブログ「議論de廃棄物」も好評を得ている。『日経エコロジー』にて廃棄物処理法に関するコラムを連載中。
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