Q&A
SDGsに関する日本国内の最新動向と、社内で取り組みを普及させるための方法について教えてください。
2015年に国連で採択された、持続可能な開発目標 SDGs(Sustainable Development Goals 以下、SDGs) 。日本でも急速に認知が広まりつつありますが、企業担当者様の中には「自社も取り組むべきなのか」「どのように取り組めばよいのか」と悩まれている方が多いとお聞きします。今回は国内のSDGsに関する最新動向と、SDGsを自社の経営戦略に取り入れるにあたり日本企業が克服すべき弱点について解説します。
今、何が起こっている?SDGsの最新動向
行政から一般市民まで、それぞれの動向をご紹介します。
● 日本政府
国連は、SDGs等の達成に向けて、各国政府・民間セクター・ステークホルダーが参加する「国連ハイレベル政治フォーラム」を定期的に開催しています。具体的には、参加者がSDGsの実施面で何がうまく行き、何がうまく行っていないのかを検討することによって、SDGsのビジョンを実現することを目指しています。2017年7月に開催された本フォーラムでは、各国の取り組み状況の報告が行われており、日本は次のことを報告しました。
- 政府全体および関係府省庁における各種計画や戦略、方針の策定や改訂にあたって、SDGs達成に向けた観点を入れ、政策誘導として、必要に応じた関係制度改革の検討や適切な財源確保に努めること。
- 企業・団体等のSDGsへの先駆的な取り組みを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を創設すること。
- 学校・家庭・職場等でSDGsに関する学習を奨励すること。特にSDGsの実現を担う人材の育成に着目し、学校教育における教育課程や教学習材の改善を検討していくこと。
※「ジャパンSDGsアワード」については、既に2017年9月より公募が開始されています。
● 企業
SDGsをきっかけに、産官学で連携し、事業創出と社会課題の同時解決に取り組む企業がでてきています。例えば、2017年の各種企業報告書では、以下の取り組みが見受けられるようになりました。
- トップコミットコメントにて、対応すべき社会的要請としてSDGsに触れている企業(IT企業)
- 中長期環境ビジョンにSDGsを関連づけて重点目標を策定している企業(大手ガス企業、大手食品企業)
- SDGs達成のために、官学との連携を行った結果を発表する企業(IT企業)
各企業の取り組みの詳細をお知りになりたい方には、国連グローバル・コンパクト等の団体によって発行されている「SDG Industry Matrix」(産業別SDG手引き)をご覧になることをおすすめします。「食品・飲料・消費財」「製造業」「エネルギー・天然資源・化学産業」など、多数の企業の事例が産業ごとに分けて紹介されています。
● 地方自治体、学生、一般市民
地方自治体や大学でも、SDGsを活かそうとする動きが高まっています。来年の新卒採用説明会では「SDGsに対してどのような取り組みをしていますか?」などという質問が学生からあるかもしれません。SDGsは優秀な人材の獲得にも必要な要素といえるでしょう。
SDGsを自社の経営戦略に取り入れる難しさと日本企業の弱点
気運が高まっているとはいえど、SDGsを環境経営と位置づけて本業と結びつけて利益アップに成功している企業はまだまだ少ないのが現状です。その理由は、日本企業が、SDGs達成に求められる次のことを苦手としているからです。
▼SDGsで求められること
- SDGsの内容は環境、CSR、経営企画などの複数の部署にわたっており、部署連携をして取り組む必要がある。
- 自社内でのみ完結する取り組みには限界があるため、サプライチェーンで協力し合い、複数社でパートナーシップを組み、お互いの強みを補完し合う必要がある。
日本企業が弱点を克服するために必要なことは?
部署を超えた連携を行うにはかなりの労力と計画性が必要になります。様々なバックグラウンドを持つ人たちとともにSDGsを経営に落とし込み、本業を通じて達成するためには、1.複数部署が共有できる長期環境ビジョンを持つことと、2.経営層のコミットメントを得ることが効果的です。
1.複数部署が共有できる長期環境ビジョン
2050年までにCO2排出量をゼロにするなど、長期環境ビジョンがあることで、社内の統制が図りやすくなり、その目標に向かって邁進する団結力の醸成にもなります。また、Webサイトや報告書等で公表することにより、社内への影響だけでなく、ステークホルダーに対して自社がつくりたい社会を明示することができ、自社の持続性を高めるための資金調達や人材確保もつながります。
2.経営層・上席者のコミットメント
トップダウン型の後押しがあれば、事業部門の協力は非常に得やすくなります。また経営層の発言は注目されやすく、社内の末端まで浸透しやすいといえます。では、どのようにして経営層のコミットメントを得ていけばよいでしょうか?
まずは、経営層に向けて、SDGsやESG投資等の世界のトレンドやこれから予測される環境制約について紹介する機会を設けること、加えて、今後に備えて自社の持続性を維持するためにどのような手段が必要かを提示することが必要です。
経営層のコミットメントを得るための取り組み事例として、アミタが行ったある大手百貨店の経営層向けのセミナーをご紹介します。外部の講師を招くことで、経営層に対して「売上低迷等の課題を解決するためには、サステナブルな事業ビジョンが必要である」ということが、よく伝わったと好評をいただきました。
大手百貨店 | |
研修前の課題 | 小売市場において通販モデルや店舗の売上の低下などの社会状況を踏まえた今後の事業ビジョンの創出に課題があった。 ・経営層はじめ全社員が、メガトレンドの理解やバックキャスト、百貨店としてこれからのお客様へのおもてなしとは何かを改めて考えるきっかけとしたい。 |
概要 | 将来の環境制約とバックキャスト思考、消費者の心の変化を可視化し、消費者が心か豊かであると感じることとはどういうことかを理解する。 |
対象 | 代表、役員およびグループ会社の役員クラス25名程度 |
研修後の効果 | 経営層から、本研修で得た考え方、特に調達部門に対して、サステナブル調達や店舗づくり、ストーリー売りへのマインドチェンジなどへの思考を取り入れ、環境方針改定のベースとなった。 |
また、アミタでは2017年度より、環境課題と関連が深いSDGsの12項目をテーマとして、実践的な思考方法や戦略立案手法を学ぶ「SDGs戦略研究会」を開催しています。全16回の講義の最後には、これまでの内容を踏まえて、自社がどのような取り組みを実施できるかを立案し、上席者を招いて発表する機会を設けています。研究会では、参加企業間での意見交換も活発的に行われています。2017年度の参加企業数は15社で、2018年度も開催予定です。
関連情報
アミタではSDGsに関する企業支援の実績がございます!
SDGsの17の目標は多岐にわたっており、どの目標に向けて何に取り組むべきかは、各社で異なります。世の中のトレンドを踏まえた上で、自社に何ができるのか、検討していきましょう。
アミタでは、SDGsそのものへの理解促進、顧客企業のSDGsを紐づけたビジョン策定支援、策定から実行までを一気通貫で行っています。40年間環境コンサルティングを行ってきた実績とノウハウ、幅広いネットワークを駆使してお客様のサステナブル経営をご支援します。
執筆者プロフィール
中村 こずえ (なかむら こずえ)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 東日本チーム
鳥取大学大学院農学研究科を修了後、アミタ株式会社へ入社。 環境問題に関心があり、アミタの「無駄なものなどこの世にない」という理念に共感して2014年入社。現在は東日本エリアを中心に、企業の環境戦略立案の支援、産業廃棄物の再資源化ルート構築支援、生物多様性保全事業の実務支援等を担当。
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