Q&A
高く評価されるCSR報告書とは?
CSR報告の基本とトレンドをおさえた報告書です。
企業によって想定する読者やステークホルダー、報告したい内容は異なりますが、ここでは一般に高く評価される報告書をつくるにはどのような点に注力すればよいかをご紹介します。
CSR報告の基本とは?
最も重要なことは、理念や方針に基づいたESG(環境・社会・ガバナンス)活動の目標の設定、そして実績をふまえて次年度の具体的なアクションを起こす仕組みが動いていることを報告することです。長期的な目標設定とそれに向けたPDCA(※1)を報告することで、その企業が持続的に活動の改善に取り組んでいることが読者に伝わります。これは基本的なことですが、企業が実際に活動を行っていないと書けない部分でもあり、実際には発行年度の目標と実績の単なる報告にとどまる企業が多く見受けられます。ほかに基本事項としておさえておきたい点としては、報告対象範囲や参照ガイドラインを明確にすること、トップメッセージにおいて企業の代表者がCSRの所信表明をしていること(トップコミットメント)などが挙げられます。
(※1)PDCA・・・Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善すること。
画像:Some rights reserved by mochizuki kaoru
CSR報告の近年のトレンドは?
- サプライチェーンを含めた報告
自社グループ単独ではなくサプライチェーン(※2)を含めた報告は、先進的な企業では定着しつつあります。ただし原料調達まで言及している企業はまだ数少ないです。 - 重要課題の特定
CSR報告書の代表的なガイドラインであるGRIガイドラインが2013年に改訂されました。従来は全ての項目を網羅することに重きが置かれていましたが、改訂後は企業にとって重要な課題(マテリアリティ)に焦点を当てた報告が推奨されています。重要課題を特定するにあたり、ステークホルダーの意見を取り入れると、公平性が保たれるでしょう。 - カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)
CDPは英国の国際NGOの取り組みで、総運用資金92兆米ドル(767投資機関)(※3)にのぼる全世界の投資家が参加するプロジェクトです。CDPから企業に対して、気候変動や水などの資源問題への対策に関する調査票が送付され、回答の内容が採点・公表されます。近年、CDPのデータがDJSI(※4)にも活用されるなどCDPの存在感が増しており、CDPに参加していることを記載する報告書が多く見られます。
(※2)サプライチェーン・・・原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全プロセスの繋がり。
(※3)2014年10月15日現在
(※4)DJSI・・・ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス。米国ダウ・ジョーンズ社とスイスのSAM(Sustainable Asset Management)が選んだサステナビリティ株式指標。
参考となる報告書は?
第18回環境経営度ランキングで1位にランクインした、コニカミノルタ株式会社のCSRレポートをご紹介します。コニカミノルタ株式会社は、長期のビジョン「エコビジョン2050」を打ち出し、例えばCO2排出量については、サプライチェーン全体で、2050年までに2005年度比で80%削減するという大胆な目標を打ち出しています。そこからバックキャスティング(※5)により中期環境計画を策定し、現在の取り組みにつなげることで、目標が絵に描いた餅ではないことを示しています。また、第三者専門機関の意見を取り入れながら重要課題を特定し、それぞれの重要課題について社会的な背景を示してから自社の取り組みを紹介しています。さらにCDPについても、2013年度の「CDPジャパン500」において気候変動の先進企業に選定されたことが紹介されています。
ここまで読まれて、普通の企業はとても真似できないと思われるかもしれません。同社は先進的な企業の中でもトップを走る企業ですので、同じように報告するのは難しいでしょう。しかしながら、その企業にとって可能な範囲で重点分野・目標を設定し、PDCAを実行して報告するだけでも、ステークホルダーからの評価は格段に高くなります。せっかく報告書を発行するのであれば、以上のような点に留意して、より質の高い報告書を目指してみてはいかがでしょうか。
(※5)バックキャスティング ・・・未来を予測する際、目標となるような状態を想定し、そこを起点に現在を振り返って今何をすべきかを考える手法。
画像:コニカミノルタ「CSRレポート 2014」P17-P18
執筆者プロフィール
浅井 豊司 (あさい とよし)氏
株式会社フルハシ環境総合研究所
代表取締役所長
フルハシ工業株式会社(現・フルハシ EPO 株式会社)に入社。2001 年、創業メンバーの一員として フルハシ環境総合研究所を設立・転籍。2006 年より東京事務所長、2011 年より代表取締役所長就任。 設立当初はゼロエミッションに関するコンサルティングや廃棄物管理に関する社員教育を担当。その後、 環境マネジメントシステム・LCA(ライフサイクルアセスメント)・廃棄物リサイクルガバナンス・環境コ ミュニケーション・MFCA(マテリアルフローコスト会計)・環境教育・環境事業開発についてコンサルティング・調査研究を行っている。
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