Q&A
CSR報告書を作成するために経営層を説得する方法は?
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経営層を説得するための一例として「環境格付け融資」をご説明します。
環境報告書やCSR報告書を作成する際に、企業のご担当者から「報告書を発行している(したい)が、経営層から充分な理解を得られない」という多く質問を受けることが多いです。
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海外では非財務情報開示の義務化が進められている?
2014年9月、欧州理事会で「非財務情報と多様性に関する情報の開示指令」が承認されるなど、海外では非財務情報開示の義務化が進められています。一方、日本では非財務情報の開示は企業の自主性に委ねられているため、企業が報告書を発行する目的を自ら設定しなければなりません。「報告書を発行している(したい)が、経営層から充分な理解を得られない」という環境・CSR担当者からの相談をよく受けます。「なぜ報告が必要なのか」という問い(目的)に対して「社会的説明責任を果たすため」や「社会的評価が低下することへのリスクヘッジ」といった漠然とした回答では、経営層を納得させることは難しいのです。
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環境格付融資とは?
平成16年、環境格付融資は日本政策投資銀行により世界で初めて実施されました。また環境省も、環境に配慮した金融機関の取り組みを促進するために、平成19年度に環境格付融資に係る利子補給金交付事業を開始しました。それ以来、環境格付融資は地方銀行や都市銀行にも広がりをみせています。環境格付融資を取り扱う金融機関は、平成21年には7社であったのが、平成25年度には累積で50社にまで増加し、平成20年度から平成24年度にかけての環境格付融資金額は、累計で1兆5,382億円、融資実行件数は累計2,741件にまで達しています(※)。
(※) 平成25年度環境格付融資に関する課題等調査業務(環境省)
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環境格付融資で得られるものとは?
環境省の利子補給事業では、一定期間(3~5年)に二酸化炭素排出量または原単位を一定量(3~5%)削減するという条件付きで、地球温暖化対策資金に係る貸出金利が最大1%利子補給されます。この利子補給事業の評価項目は、環境報告ガイドライン(2012版、環境省)と相関していますので、同ガイドラインに沿って環境報告を行っていれば対応することが可能です。環境格付融資で得られるものは、実は融資のみではありません。例えば、株式会社百五銀行は取引先企業との深い対話を通じて、融資だけでなく環境ソリューションにもつながるような評価をしています。環境格付融資を受ける企業(多くは中小企業)は、実態把握に基づく「気づき」を得て、環境経営を改善していくことが可能なのです。その他の例として、株式会社滋賀銀行は、環境格付融資におけるヒアリングを通じて、顧客の関心やニーズをキャッチし、ビジネスマッチングや環境関連事業に係る提案や情報提供を行っています。
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経営層には事実をベースに会社の利益に繋がるように説得することが大切!
以上のように、環境格付融資に積極的に取り組む金融機関は、環境格付融資の認知度の低さや行内推進力(意欲や体制)の不足等の課題を抱えつつも、地域の特色を取り込み、環境ソリューションやビジネスの機会を提供するなど、創意工夫により取り組みを深化させています。環境格付融資を受けるには、冊子のような正式なCSR・環境報告書を発行する必要はありませんが、必要最低限の環境報告は抑えておく必要があります。まずは環境報告が可能な状態を整えて融資を受ける。そして、金融機関とのコミュニケーションを通じて環境経営を改善していく。決して簡単な道のりではありませんが、このようなメリットもあることを経営層に進言してはいかがでしょう。
執筆者プロフィール
浅井 豊司 (あさい とよし)氏
株式会社フルハシ環境総合研究所
代表取締役所長
フルハシ工業株式会社(現・フルハシ EPO 株式会社)に入社。2001 年、創業メンバーの一員として フルハシ環境総合研究所を設立・転籍。2006 年より東京事務所長、2011 年より代表取締役所長就任。 設立当初はゼロエミッションに関するコンサルティングや廃棄物管理に関する社員教育を担当。その後、 環境マネジメントシステム・LCA(ライフサイクルアセスメント)・廃棄物リサイクルガバナンス・環境コ ミュニケーション・MFCA(マテリアルフローコスト会計)・環境教育・環境事業開発についてコンサルティング・調査研究を行っている。
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