Q&A
CSR報告書の"読者"を決めるポイントは何ですか?
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読者を決めるには2つのポイントがあります。
①「株主・投資家、従業員、顧客、地域社会・自治体、取引先、NPO/NGO」という5〜8カテゴリーの中でどの人たちにどういう目的で読んでもらいたいのかを決める。
②どうしてもマルチユーザーになってしまう場合には各ステークホルダーに向けたコンテンツを準備すべき。
こんにちは。CSRコンサルタントの安藤光展です。今回は、CSR報告書制作を円滑に進めるヒントをご紹介していきます。私もCSR報告書制作のプロジェ クトに携わったことがあるのでわかるのですが「読者ターゲットが"多くの人"になってしまい絞れない」という疑問を持つ担当者の方は想像以上に多いです。そんな疑問を持つ方の課題解決のヒントになれば幸いです。
読者ターゲットの決め方って?
本来、CSRに関する情報はマルチ・ステークホルダーへ提供するものであり、主要読者を絞りきれないというご意見も理解はできます。しかしながら、内容がマルチ・ステークホルダーに向けてとなると無難なものになってしまい、CSR報告書(ウェブコンテンツ含む)をわざわざ手に取ってくれるであろう人の情報ニーズを満たさずに終わってしまう場合も多いように感じています。
マーケティング・コミュニケーションの視点で言えば「想定読者が"知りたい"情報を提供する」ことは必須です。例えば、ワインに興味がない人にワインの話をしても基本的に盛り上がりません。一方的な情報発信であるCSR報告書でコミュニケーションを取ることはほぼ不可能ですので、本来のエンゲージメント(目的のある対話)やKPI(重要指標)を達成することが難しくなります。
そう考えると、多くの企業がステークホルダーの枠組みとして掲げる「株主・投資家、従業員、顧客、地域社会・自治体、取引先、NPO/NGO」という5〜8カテゴリーの中でどの人たちに読んでもらいたいのか、まず決める必要があります。もちろん複数選択も可能ですが、例えば、顧客と従業員に伝えたい内容が、同じであるはずがありませんよね。
ちなみに、CSR報告の国際的ガイドライン「GRI」でも、『報告書は、読者による意思決定や判断に過度の、あるいは不適切な影響を与える可能性が高いと合理的に考えられるような選別、省略、表示形式を避けるべきである。(報告品質に関する原則:バランス[GRI/G4-2014])』としており、読者への意思決定や判断の助けになるような情報開示を求めています。
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根本的なコミュニケーション設計の不備
振り返えるべきポイントは「何のために、誰にむけてCSR報告書を作るのか」という点です。
日本のCSR報告書は「プロダクトアウト型」が多いと言われています。一般的に「プロダクトアウト」というのは商品提供側からの発想で、開発・生産・販売といった活動を行うことです。逆に「マーケットイン」とは市場や購買者という買い手の立場に立って、買い手が必要とするものを提供していこうとする方法論を指します。
CSR報告書を発行すること自体が目的となってしまい、読者を無視した言いたいことを言うだけの"独り言"になってしまう場合は、完全にプロダクトアウト型です。プロダクトアウト型のすべてが悪いとはいいませんが、CSR活動の達成フェーズが高い企業以外は有効だとは思えません。想定読者を決めないで制作に入ってしまうと陥りやすいパターンです。
マーケットイン型も考えてみましょう。国際的ガイドラインを参照・準拠し、社内外でステークホルダー・ダイアログなどをし、マーケット(ステークホルダー・ニーズ)を参考にしながら、CSR報告書を作る方法です。昨今のCSR報告書のトレンドはこちらです。
それでも、どうしてもマルチ・ステークホルダーとするのであれば、各ステークホルダーに向けたコンテンツを準備すべきです。「投資家の皆様へ」とか「取引先の皆様へ」というページを見たことがある人も多いと思います。ちなみに、上場会社で多いのは「株主・投資家」をメインターゲットとした報告書です。統合報告書がこれに近いです。上場しているので当然の流れと言えるでしょう。
「何のために、誰に向けた報告書」なのか。ここが決まれば、想定読者は自ずと見えてきます。情報の品質が高いということは、欲しい人に欲しい情報を届けられていることを指します。ぜひ情報品質を上げるためにも、想定読者を意識して制作をしていきましょう。
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執筆者プロフィール
安藤 光展(あんどう みつのぶ)氏
CSRコンサルタント
専門はマーケティング・コミュニケーション。特にCSR最新動向とウェブ・コミュニケーションに詳しい。CSR関連の、研修・コンサルティング・CSR報告書作成アドバイスなどを中心に、執筆活動、社会貢献系メディアの運営支援などの領域で活動中。運営6年目のブログ「CSRのその先へ http://andomitsunobu.net」管理人。著書『この数字で世界経済のことが10倍わかる-経済のモノサシと社会のモノサシ』(技術評論社)ほか。
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