Q&A
今後、CSR担当者が知っておくべきCSRの動きは?
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今後、CSRと関係性がある下記の動きに注目してください。
①「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫.
②東京証券取引所コーポレートガバナンス・コード案
③ISO20400「持続可能な調達」
CSRの動きは日々変わっていきます。CSR担当者は目の前の業務に追われることなく、今後の社会情勢にアンテナを張り巡らせて社内でのリスクとチャンスを生み出す役割を担っていきます。まずは上記にあげた動向について知っておく必要があるでしょう。
※出所:金融庁ホームページより参照
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫の詳細はこちら
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫
CSR報告書から統合報告書への移行が進む中、これから先、企業のCSRが投資への影響も出始めています。日本版スチュワードシップ・コードもその一つです。
「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより「顧客・受益者」(最終受益者を含む。以下同じ。)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味します。機関投資家が、顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ「責任ある機関投資家」として当該スチュワードシップ責任を果たすに当たり有用と考えられる諸原則を定めるものです。本コードに沿って、機関投資家が適切にスチュワードシップ責任を果たすことは、経済全体の成長にもつながるものです。以下の7つの原則に基づきます。
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- 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
- 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
- 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
- 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
- 機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
- 機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。
- 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判を適切に行うための実力を備えるべきである。
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これまでに「受入れ表明」をしていただいた機関投資家について、業態別に分類した結果は、以下のとおりです。
- 信託銀行等 : 6 【初回から変動なし】
- 投信・投資顧問会社等 : 109 【初回から23増加】
- 生命保険会社 : 17 【初回から3増加】
- 損害保険会社 : 4 【初回から1減少(合併)】
- 年金基金等 : 17 【初回から5増加】
- その他(議決権行使助言会社他) : 7 【初回から3増加】
(合 計) : 160 【初回から33増加】
(出所:金融庁HPより)
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東京証券取引所コーポレートガバナンス・コード案
粉飾決算など今だに上場企業が不適切な会計処理を指摘されるケースも多いですが、CSR担当者には7つの中核主題でお馴染みの「組織統治」について変化が出始めています。こちらはまだ案ですので、今後変わることもありますが担当者はその動向をチェックしておいてください。
「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。本コード(原案)は、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられます。 5つの基本原則から構成されています。
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【株主の権利・平等性の確保】
1.上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。
【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】
2.上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全
な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
【適切な情報開示と透明性の確保】
3.上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。
【取締役会等の責務】
4.上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、
(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと
をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。
こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。
【株主との対話】
5.上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。
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ISO20400「持続可能な調達」
ISO26000では「影響の範囲」という言葉で社会的責任の範囲についての考え方が記載されました。自社の活動は当然として、自社以外の組織に対するCSRも購買基準に影響を及ぼす原料調達等にもCSRに対する配慮が必要となりました。原料や部品の仕入れから製造・流通・販売まで、製品がたどるサプライチェーン上での取引先が人権、労働、環境などに違反していないかを確認して、企業として「加担」していないのかをデューデリジェンスを実施している企業も増えてきています。
ISO20400は、ISO26000と同様にガイドラインという位置づけで発行されることを考えているとのことであるが、業態や規模に係わらず、持続可能な調達を実践しようとしている全ての組織に適用されることになるので対応が必要になってくると思われます。
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執筆者プロフィール
猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社
シニアコンサルタント
早稲田大学理工学部卒業後、大手通信教育会社に入社。教材編集やダイレクトマーケティングを経験後、外資系ネット企業やベンチャーキャピタルを経て大手人材紹介会社で新規事業を軌道に乗せた後、アミタに合流。環境・CSR分野における仕事・雇用・教育に関する研究。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」「CSR JAPAN」等をプロデュース。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティングなど多数実践中。
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