Q&A
最近のアジアや世界のCSR動向について教えてください。
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今回は日本ではあまり関心が高くないですが、世界的に注目度の高い「感染症対策と企業のCSR」についてご紹介します。(2014年11月1日作成、2015年10月5日更新)
猛威を振るう感染症
今年の夏の終わりに東京の代々木公園を中心に蚊が媒介するデング熱が流行し、騒ぎとなったのはみなさんの記憶に新しいかとおもいます。デング熱はヒトスジシマカ(一般にヤブカと呼ばれる)が媒介する感染症です。日本には1945年の国内感染を最後に、デング熱の国内感染はなく、日本にいては罹らない「熱帯の感染症」として長く忘れられていました。しかし、2014年8月に69年ぶりに国内感染が発見され、日増しに感染が拡大し、150人以上の感染が判明し、日本でもデング熱感染の危険が身近に迫っているのを感じるようになりました。
さらにその後、西アフリカのギニア・リベリア・シエラレオネを中心にエボラ出血熱が世界的に流行するニュースが日々報道されるようになりました。「アフリカの風土病」見られていたエボラ熱が、アメリカやスペインなどの先進国でも発病したことで、アフリカから遠く離れた日本でも感染者が出るのは時間の問題とも言われるようになっています。
日本でもこのような最近のニュースから感染症の驚異がより身近になっていますが、感染症対策と企業のCSRの関係においては、日本企業の間ではあまり認識されていないようです。三大感染症とされているものにエイズ・結核・マラリアがあります。これらは貧しい開発途上国を中心に人々の死亡の主な原因の一つになっています。世界企業の中には感染症対策を企業の責任と位置づけ、さまざまな取り組み方を工夫して、感染症と向き合いながらグローバル化を進めている企業もあります。例えば、コカ・コーラ・カンパニーは交通網が未整備のアフリカにおいてもその商品が奥地にまで流通できるというすばらしい流通網を持っています。その流通網を使って、商品とともにコンドームや啓発教材を届けることによって、アフリカにおけるエイズ対策に取り組んでいます。
アジアで注目度の高い感染症とは?
アフリカに限らず、アジアにおいてもタイ・中国ではエイズ問題は労働者確保に関わる問題です。また、WHOによる結核高蔓延国が世界で22カ国存在しますが、アジアではバングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、タイ、ベトナムの10カ国があります。いずれの国もグローバル化した日本企業のバリューチェーンに深く関わる国ばかりです。
最近は途上国でも非感染症(糖尿病や心臓疾患など)が社会問題化していますが、糖尿病などの成人病はライフスタイルや食事など個人の嗜好の問題でもあり、企業が取り組むのは難しいかもしれません。しかし感染症は伝染る病気であり、伝染らないように啓発したり、対策を講じたりすれば防ぐことができます。
感染症対策にもCSRとして積極的に取り組むことが、グローバル社会において企業が価値を創出することにつながると言えます。
執筆者プロフィール
赤羽 真紀子(あかばね まきこ)氏
CSR Asia 日本代表
早稲田大学で政治学と生物学を修め、カリフォルニア大学リバーサイド校、タフツ大学、慶應義塾の各大学院で学ぶ。環境省、国際基督教大学、慶応義塾大学、清泉女子学院大学、立教大学、APABIS、ブリティッシュ・カウンシル、世界銀行をはじめ、講演多数。企業が発行するCSR報告書の第三者意見の執筆多数。東洋経済オンラインでの連載の経験もあり、NPO法人国際協力NGOセンター(JANIC)CSR推進NGOネットワークのアドバイザー、AIDS孤児支援NGO・PLASのアドバイザー、SportForSmileの顧問、ウォーターエイド・ジャパンの理事なども務める。通算10年以上のさまざまな業種の多国籍企業のCSR担当としての経験がある。特に企業の環境対応と社会貢献事業に関しては、スターバックスコーヒージャパン、セールスフォースドットコム、日興アセットマネジメントの各社で関連部署の立ち上げを手がけた。
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